【薬学生】業界の最新動向を学ぼう|その他(化粧品・食品メーカー、官公庁)
業界・職種・企業研究公開日:2024.02.26
薬学系の学生が活躍できる業界は、製薬会社をはじめ多岐にわたります。医薬品の需要増加に伴い市場が拡大しているドラッグストアや調剤薬局、ここ10年ほどで急激に成長しているCRO・SMO業界など、幅広い選択肢があるといえます。各業界の動向や今後の動きについて研究し、まずは視野を広げていきましょう。
公務員、化粧品・食品など、薬学生が活躍できる多彩な就職先
薬学生は卒業後にどのような場所で活躍しているのでしょうか。薬学教育協議会が調査した「令和4年3月卒業生および大学院修了者の就職動向調査結果報告書」によると、薬学生(6年制学科卒業者)の就職先は調剤薬局が49.5%、ドラッグストアや医薬品卸などの医薬品販売業が1.4%、病院・診療所が19.3%、医薬品関連企業が5.2%、そして進学などを理由に就職しなかった割合は18.5%と報告されています。この調査結果から、薬学生の主な就職先以外に就いた学生も存在することになりますが、これらの学生はいったどのような場で活躍しているのでしょうか。
上記に挙げた主な就職先以外に、薬学生が活躍できる業界には、化粧品メーカー、食品メーカーなどがあります。
化粧品業界や食品業界では、近年の美容意識の向上や健康に対する意識の高まりに伴い、各メーカーとも顧客の要望に応えるべく新商品開発や販売に力を入れています。特に健康食品やサプリメントの分野は市場の拡大が続いています。こうした事情を背景に、今後も研究・開発の分野において薬剤部出身者などの専門知識を有した人材の需要が拡大されると予測されます。
また、公務員として活躍する道もあります。国家公務員としては、厚生労働省の薬系技術職員、経済産業省や農林水産省の技術系職員、自衛隊や警察庁などがあります。そして、都道府県や市町村などの地方自治体で働く地方公務員としては、保健所や都道府県警察本部の科学捜査研究所などが挙げられます。
流行に敏感な、
チャレンジ精神旺盛な薬剤師が能力を発揮できる化粧品業界
日本の化粧品国内工場出荷金額は、2008年のリーマン・ショックにより一時減少して1兆4,000億円ほどに落ち込みましたが、2014年には消費税増税の影響を受けて約1兆5,000億円にまで回復し、2020年12月時点における仕上げ用化粧品を含む化粧品の出荷額は1兆4,783億円ほどとなっています。
化粧品業界を牽引する主要メーカーには、資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビスホールディングスなどが挙げられます。
海外からの訪日観光客によるインバウンド需要が順調に伸長した影響を受けて売上が堅調に推移しているのが、資生堂とコーセーです。
資生堂では、今後も、インバウンド需要獲得に向けて、デパートにおけるビューティーコンサルタントの増強や通訳の派遣などを行うという対応力の強化や、免税店での取り扱い拡大を進めるなどの取り組みを強化していく方針です。このようにいずれのメーカーも国内景気の回復基調に伴い、安定した売上の伸びをみせています。
化粧品メーカーにおける薬剤師は、新製品開発のための研究・開発職をはじめ、営業やマーケティング部門で力を発揮しています。化粧品業界では、トレンドに合わせて顧客のニーズが刻々と変化していくため、常に世の中の流れをキャッチし、それをどのように製品やサービスに反映すれば良いのか考える柔軟な思考、新しいものをつくり出そうとするチャレンジ精神にあふれた人材が求められます。
健康志向の高まりで拡大する健康食品市場
景気の影響を受けにくいとされる食品業界。少子高齢化による日本国内の人口減少の影響を受けて、長期的にみると成長は横ばい傾向になるものと推測されます。農林水産省の「食品製造業をめぐる市場経済状況」によると、2021年の食品製造業生産額指数は、対前年比1.6%とわずかに上昇。
食品業界の各分野に目を向けると、健康志向の高まりにより、高品質の食品や、健康食品に注目が集まり、健康食品の分野が売上を伸ばしています。
さらに、共稼ぎ世帯の増加により、冷凍食品、レトルト食品や惣菜も需要を伸ばしています。
食品業界において、これからの薬剤師は健康維持、増進、疾患予防などに関心の高い消費者のニーズに応えるため、各メーカーで活発化している新しい素材の開発、安全性や有用性の検証に関わる業務における活躍が期待されています。
地域住民の健康や安全に貢献できる公務員
薬剤師の役割は、薬事法により「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する」ことと定められおり、公務員になると、民間企業とは異なり「利益の追求」という目的にしばられることなく、国民や地域で暮らす人たちの健康のために貢献していくことが可能になります。
国家公務員の麻薬取締官は麻薬や危険ドラッグの取り締りを行うことを通し、国民の医薬品の適正使用を促進するという薬剤師の任務を遂行します。また、厚生労働省の薬系技術職員は、医薬品・医療機器の研究開発振興、食品の安全確保、医薬品などの承認審査の取りまとめ業務を通し、国民が安心して、安全な医薬品を使用できるようにするための仕組みを取り仕切ります。
地方公務員になると、保健所に所属した場合、薬局への立ち入り検査などを実施する「薬事衛生」、プールなどの環境衛生関連施設の許可や監視を行う「環境衛生」に関わる業務などに携わります。衛生研究所に所属すると、感染症の予防や、食品・医薬品の安全性を保つなどの業務を、都道府県庁に属すると医薬品メーカーへの立ち入り検査を行い、医薬品や医療機器の安全供給に努める役割を担うことで、地域に暮らす人たちの健康に寄与することができます。
そのほか、自衛隊で隊員の健康管理を行う薬剤官、警察庁や各都道府県警察本部の附置機関である科学捜査研究所で犯罪の捜査や鑑識指導などに関わる道もあります。このように公務員になると、さまざまな業務に携わる可能性がありますが、いずれの仕事にも共通するのは、利益のためではなく、日本で、その地方で暮らす人たちのために仕事をするということです。したがって、公共のためになることに薬学の知識を奮い、役立てていきたい人に公務員の仕事は最適だと言えます。
ここまで薬剤師が活躍できるさまざまな就職先を紹介してきましたが、このほかにも、大学などの教育機関、研究所などで研究者として活躍したり、医療専門の雑誌や書籍を出版している出版社で編集者やライターとして働く薬剤師もおり、薬学部卒の学生の活躍の場は、非常に多岐にわたっていることがわかります。
キーワード
機能性表示食品制度
2015年4月に施行された、健康を促進する機能を訴える食品表示制度。以前からあった特定保健用食品(トクホ)が国の審査が必要だったのに対し、届け出制で効果を表示できるため、消費者のニーズの変化に合わせた機動的な商品開発が可能になる。
ハラル認証
豚の使用禁止やアルコールの使用制限などイスラム教の戒律に沿って製造されたことを証明する制度。イスラム教徒の多いアジア市場を開拓するうえでは認証取得は重要。国内では食品メーカーが先行しているが、化粧品、生活用品メーカーでも認証の動きが広がってきている。