注目のデザイン思考テストって?テスト内容&スコアアップのコツを解説
ES・選考対策公開日:2023.11.17
デザイン思考テスト──デザイナーの考え方をビジネスに活用した「デザイン思考」という概念を再現性のあるスキルとしてその時点での発揮力を数値化し、「創造力のタイプ」を診断するテストで、今多くの企業の採用試験に導入されています。それに連動して、就活での重要度が高まってきました。デザイン思考テストが生まれた背景から例題の紹介、具体的なスコアアップの秘訣などなど、これから受けてみたい、対策方法を知りたい、という方に向けて解説していきます。今までとは全く異なる、新しい「個人の創造力のタイプ」という武器をいち早く手に入れるチャンスです。
(監修・協力:VISITS Technologies)
デザイン思考力を可視化する
もともとデザイン思考は、「創造的問題解決の方法」と言われてきました。まず理想の状態をイメージしておいて、それを実現するためのアイデアを創り出していくという思考方法です。特に、隠れているニーズや課題を掘り起こして「こういうものがあったらいい」と気付かせてくれるのが大きな特徴です。これをスコアにして、自分が持っているデザイン思考の度合いを可視化してくれるのがVISITS Technologies社開発の「デザイン思考テスト」。2023年現在、月間受検者数は20,000人を超え、大手コンサル企業や総合商社など300社以上の採用試験や人材の発掘・育成に利用されています(VISITS Technologies社調べ)。そういったことを背景に、就活生・就活準備生の間でも対策の重要性が認識されていて、デザイン思考テストを受検する学生が増えています。
創造力(アウトプット)と評価力(レビュー)の両側面
「イノベーション」とは、単なる技術革新ではなく「新結合」。これまで組み合わせたことのなかったニーズなどを組み合わせたソリューションのこと。そのためには、前提や常識にとらわれないデザイン思考が必要で、デザイン思考テストはこれを測る「創造力」と「評価力」の両側面のテストから構成されています。言ってみれば右脳も左脳も両方を使うテストです。
デザイン思考テストには、誰でも受検が可能な「公開テスト」と、各企業や団体が行う「団体テスト」の2種類があります。とは言え、どちらも全く同じ条件で問題が出題されるので、両者による差はありません。また、団体テストでも企業や団体の業種などに特化した問題傾向などはなく、あくまでも共通の出題形成となります。「その業界に詳しい人が有利になったり、あらかじめその業界に寄せたテスト対策で差がつくといったことではなく、本質的な力とタイプ傾向を把握するため」という理由からです。受検者の持っている能力や創造力のタイプを純粋に把握するために、偏りのないテストとなっています。
進め方のポイントを具体的に解説
デザイン思考テストは、制限時間内に複数個のアイデアを作成するため、基本的にパソコンのブラウザを使い、WEBで受検します。テストは2つのセッションに分かれていて、創造セッションを30分、評価セッションを30分。テスト時間は合計60分。公開テストなど両セッションを一気に実施する際は途中に15分の休憩が入り約75分となります。それでは、2つのセッションについて具体的に説明していきましょう。
●創造セッション
・基本的には、課題やニーズを考え、それに技術やデータなどのシーズを掛け合わせて解決方法・ソリューションを考えていきます。
・課題やニーズの設定では、シチュエーションを決め、叶えたい願望を記述します。
まず創造セッションでは、アイデアの元になるシチュエーションをWho(誰が)、Where(どこで)、When(どんな時に)の組み合わせにより自分で創造・想像して複数の選択肢の中から選択します。つまり、自分で考えて決めていくため、正解を回答するようなテストではありません。シチュエーションと一緒に、アイデアを出すきっかけとなる修飾語も参考にします。例えば、「話し好きな父親が、近所のスポーツジムで、急いで走っている時」
というシチュエーションを選ぶとします。それが決まったら、Why(叶えたい願望)を20~120文字で記述します。現状、他の方法での解決が難しく、Whoの立場になった時に共感できる願望です。これが「課題」「ニーズ」となります。
そして、Whyを解決するためのモノ(What)を選択します。例えば、「履歴を共有する技術またはデータ」 を選ぶとします。これが「シーズ」です。そして、解決するためのアイデアをやはり20〜120文字で記述します。このHow=ソリューションを書くことで1つの問題が終了します。後は30分の制限時間内で次々と問題に挑んでいきます。
大切なのは共感を得られる課題づくりと解決策
アイデアは基本的に「5W1H」の組み合せでできています。具体的なシーン(Who、Where、When)を設定して初めてその状況下で課題やニーズ(Why)が出てくるわけです。そして課題解決のための手段(What)を決め、Howである最終的なソリューションを考えます。分解してみればとてもシンプルな構造ですが、初めて受検する方は、最初のシチュエーション選択の段階で戸惑うかもしれません。
今回例として選んだのはごく普通のシチュエーションですが、組み合わせによっては「話し好きなおじいさんが、近所の飛行機で、急いで仕事をしている時」といった、あまり現実的ではない状態になるからです。しかし自分をその状態に置き、ある意味「憑依して」考えてみる。どれだけその人になりきるかが、共感できる願望を導き出すために必要です。あまりに非現実的なシチュエーションは、問題として表示する以前に内部のアルゴリズムで排除されていますが、「ぶっ飛んだ」状況と自分が感じるケースはあると思ってよさそうです。さらに、組み合わせは億を軽く超えるパターンが準備されているそうです。
次はWhatを選んで解決策を考えるわけですが、ここでは自分が持っているバイアスを外して、さまざまに組み合わせてみることが大切。「履歴を共有する技術またはデータ」を選んだので、「こういう技術があるのなら別の要素と組み合わせれば解決につながるのでは」と何通りも考えるわけです。ユニークだけれど「新しさ」と「実現可能性(将来的なものも含めて)」があり、共感を得やすいHow=ソリューションを書くことが高いスコアにつながります。
●評価セッション
・人のアイデアを短時間で評価
評価セッションでは、他の受検者が出したアイデアを評価。設定された評価軸で4段階で回答します。Why=課題に対する「共感度」「未解決度」、つまり共感できたかどうか、まだ解決されていない課題かどうか。How=ソリューションに対する「新規性」「実現可能性」、つまり今までになかった(と、自分では思う)ものかどうか、実際(今無理でも近い未来)にできるかどうか。それら4つの観点から「全くそう思わない」から「本当にそう思う」まで4段階の評価を行います。制限時間の30分で3〜40個程度のアイデアの評価を行わねばなりませんので、一つひとつに考え込んでいては時間が足りなくなってしまいます。軸をぶれずに持ち、短時間で判断していくスピードも大切になります。
・評価は初めての受検では主観に任せて自分を知る機会
アイデアの質や個人の評価力のスコアリングは多数決ではなく、筋のいいアイデアはきちんと評価され、評価する力もアルゴリズム(日米技術特許)で客観的に数値化されます。また、既にスコアリングされている膨大なアイデアデータ通じて過去の受検者との相関によるスコアが算出されています。こうやって、アルゴリズムやデータベースとも連携し、さまざまな補正もしながら最終的なスコアを出します。
テスト終了後、公開テストの場合は2営業日後に結果が開示されます(団体テストの場合、本人への開示はその企業や団体が判断)。4項目「ニーズ発見力」「ソリューション創出力」「ニーズ評価力」「ソリューション評価力」のスコアによって各個人の「創造力タイプ」が6つのタイプ中から診断されます。スコアは「SSランク」から「Eランク」まで7つに分けられて表示されます。画面には2つのセッションのスコア、それぞれのランクが表記される他、「Point」として講評、よかった点・足りなかった点、これからに向けてのアドバイスなども記されています。
高スコアを目指すには
では、実際にデザイン思考テストを受検するに当たり、どのようなことを心掛ければ良いのか説明します。
・引き出しを増やすこと
まずは知識の量を増やしていくわけですが、ここで注意しなければいけないのは闇雲にその量だけを増やすのが目的ではないこと。集めた知識を、どこの「引き出し」にしまったかを把握しておくことが大切です。資料にラベル付けをして、関連したフォルダに入れておくという感覚です。
・常識を取り払うこと
この状況だからこうだろう、という従来の結び付きで考えないこと。今まで開けることのなかった引き出しを開き、常識を取り払いひっくり返しましょう。いわば「ジャンプ力」を発揮して、普段考えたこともない組み合わせを連鎖的につなげていき、「こうすればできる」というソリューションへたどり着きます。この柔らかさは、知識の量よりも重要です。納められた知識をどう組み合わせるかがカギとなります。
では、普段からやっておくべきトレーニングは何でしょう。
・デザイン思考に関する本を読む
今、デザイン思考に関する数多くの書籍が出版されています。デザイン思考とは何か、企業はどんなことを考えているかを前もって知っておくと、よりよいでしょう。早速検索してみてください。
・どんな困り事をどう解決したかを知る
テストで重要視されるのが課題やニーズ(Why)とソリューション(How)です。普段からみんなどういうことで困っているのか、そこにはどういうニーズがありそうか考えていることが大切。最近流行ったサービスや商品は、どんなニーズを触発したのか、どんな欲求を満たしたのか。それらに対して敏感になることも大切なトレーニングです。
・知識と情報の組み合わせを意識する
集めた知識や情報をどう組み合わせるか、常に意識的しておきましょう。知識の引き出しを開けて、どうジャンプさせるかをいつも考えていることでイノベーションや新結合に結び付いていき、ソリューションが導き出されます。こうして普段から意識を変えることで、柔軟な対応ができるようになります。
・伝わりやすい文章力を磨く
WhyとHowは記述式となっていますので、アイデアをわかりやすく書けるよう文章力を磨いておくことも必須です。伝えたいことを自分の中で整理して、論理的に組み立てる。短い時間の中で具体案を端的に言語化する力が求められます。SNSやメッセージアプリなどでは短文を雑に書いて送っても成立しますが、このテストでは評価されにくいかもしれません。普段から丁寧に考えて文章を書く練習をしておくと、スコアの伸びにもつながります。
与えてくれるのは新たな価値観
デザイン思考テストはAI、特にChatGPTの出現と深く関係があります。ChatGPTは事務作業など旧来型の職業を代替すると言われています。しかしAIは共感力を発揮した課題やニーズを見つけることができず、それを基にした革新的なアイデアは考えることが苦手です。こうした背景から、「問題発見力」や「革新性」といった能力を備えた人材の重要性が注目されています。そして、こういった人材は従来型のWEBテストではなく、デザイン思考テストでなければ発見しにくいのです。
大学受験に代表される今までの試験は、正解を解答することが目標です。しかし、社会に出てみれば正解が必ずしもあるとは限りません。デザイン思考テストも、どんなアイデアを書いたら何点取れるか誰もわからないという共通点があります。そして課題の発見と解決力は、顧客のニーズを見つけて解決するという企業活動に他なりません。言ってみれば、社会人になる前の練習の一つなのです。
デザイン思考テストを通じて得られるメリットは、課題発見・解決力の他に、今まで見えなかった自分の強みがわかることです。どんなタイプの創造力を持っているのか、評価力はどうなのか、それらをアップするためには何をしたらいいかを掴み、就活準備に活かしていく。自分で行う他に、客観的なテストによる自己分析という側面をプラスすることができます。デザイン思考テストは、何度か受検していくうちにスコアが伸びてくるという傾向があります。慣れの他に、ここでご紹介したようなトレーニングが大いに役立ちます。新しい自分の価値観やポテンシャルを発見することで、誰からも認められる才能や可能性を広げていってください。
PROFILE
鳥羽山 康一郎(とばやま こういちろう)
静岡県生まれ。広告制作会社、外資系広告代理店にてコピーライター、クリエイティブディレクター、プランナーとして勤務後、2006年よりフリーランスとして独立。外資系マーケティング理論の知見を活かし、広告・Webライティング等を中心に執筆活動を展開中。地方取材、インタビューも得意とする。