「自己分析」と「業界研究」はどちらが先?就活の軸を決める重要プロセスの進め方とは?
自己分析公開日:2023.07.04
こんにちは!キャリアコンサルタント・公認心理師の濱野です。この記事を読んでいる皆さんの多くは、今まさに就活に向けての準備を本格的に進めようとしていらっしゃるのではないでしょうか。就活プロセスで欠かせないのが「自己分析」と「業界研究」ですよね。いずれも、あなたの就活、ひいてはキャリアの成功のために重要な取り組みです。では、どちらを先に着手すべきなの?いつまでやればいいの?このコラムでは、そんな素朴な疑問にお答えします。
「自己分析」の目的とおススメの方法
改めて皆さんに質問です。「自己分析」って、いったい何のためにやらなければならないのでしょうか? ガクチカや自己PRのエピソードを探すため?
「自己分析」とは、あなたがご自身の「得意なこと・発揮できる能力」、「価値観」、「強み・長所」、「興味を持っていること」、「目標」、「どのようなことに動機づけられ、モチベーションが上がるのか」などについて、言語化して自覚するということです。
そしてその目的は、自身の内面を深く掘り下げることによって「あなたにとっての働く意味・やりがい」を理解するため、そしてあなたの「就活の軸」を明確にするためです。
就職活動の先には長い職業人生が待っていますから、「大学卒業後、職業も含めた人生をどのように送りたいのか・私にとっての幸せな就職とはどのようなものか」をしっかり考慮して、ファーストキャリアを選択したいですよね。選択の際の判断基準となる「就活の軸」を確固たるものにするためにも、「自己分析」にしっかり取り組みたいものです。
「自己分析」と「業界研究」、どちらが先?
さて、もうひとつの重要な取り組みである「業界研究」。いったい何のために、どのようなことをするのでしょうか? エントリーシートや面接で答える必要があるから?
いえいえ、決してそれだけではありません!
「業界研究」を端的に説明すると、「特定の業界についての情報収集を行うこと」。具体的には、あなたが興味を持っている業界の成長性、求人市場の状況、業界内でのキャリアパス、職種、要求されるスキルや資格などを、業界ごとに丹念に調査していくことになります。
誰しも、知らないことを選択の候補にあげることはできません。しっかりと業界研究を行うことで選択肢が増え、その中から自分の興味や目標に合致した業界や職種を見つけるチャンスが増えるのです。
業界研究のリソースとしておすすめなのが、キャリタス就活の「業界MAP」。主要33業界の概況やトレンド、主な企業などがコンパクトにまとめられているので、効率よく業界研究を進めることができますよ。
また、「就活成功ガイド:業界・職種・企業研究」の記事にも、各業界・職種の情報が載っています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
では、「自己分析」と「業界研究」、どちらを先に進めればいいのでしょうか?
個人の目標や志望先の決定状況にもよりますが、一般的には「自己分析」を先に行うほうがよいと思います。
先にも述べた通り「自己分析」は、自身のスキル、興味、価値観、目標などを理解するプロセスです。「自己分析」を先に行うことによって、自分の強みや弱点を把握し、自身のキャリア目標に合わせてどのような業界や職種を探すべきかを考える際の判断軸を得ることができます。
「自己分析」があまりにも不十分な状態で業界研究を進めてしまうと、自分には合わない業界や職種に関する情報に囚われて、選択を誤ってしまう危険性も否めません。自己分析を通じて自身の優先順位やキャリア目標を明確にし、それに基づいて「業界研究」を進めることが、より効果的な方法といえるでしょう。
「自己分析」は終わらない。バージョンアップを心がけて!
見出しを読んで、「えっ!『自己分析』って1回やればそれで終わりじゃないの?」と思った方も多いかもしれませんね。そうなんです。「自己分析」は1回やってそれで終わりではないんです。
皆さんは、大学生活を送る中でさまざまなことを経験しますよね。その経験によって新たなことを学習し、成長もしていきます。それに伴い、能力やスキルはもちろんのこと、興味関心や強み、目標なども変化していくはずです。また、新しい価値観を持つようになっていくかもしれません。
つまり、以前のあなたと現在のあなた、そして未来のあなたは、まったく同じであるはずがないのです。
こう考えると、「自己分析」を繰り返す必要性がお分かりいただけると思います。インターンシップ等の準備のために行った「自己分析」の結果は、半年以上先の本エントリーの際の判断材料としては古い場合が多いです。
インターンシップ等の準備時期、本エントリー前後、就活中(順調でない場合は特に見直しが必要)、内々定前後、内定後といったタイミングで、「自己分析」のバージョンアップを行っていきましょう。
「自己分析」の目的や確認内容は、タイミングに応じて変えていくことが大切です。
就活準備の初期段階では、「就活の軸を定め、軸に対してその企業がどれほどマッチしているのかを考えること」が目的となるでしょう。就活真っただ中、面接を受けている段階であれば、例えばあなたが逆質問したことに対する面接官の回答内容を吟味する際、あなたの「働くことに対する価値観」がその判断軸となるでしょう。
さらに内定獲得後も、「職業も含めた人生をどのように送りたいのか・私にとっての幸せな就職とはどのようなものか」を考えるために、「自己分析」を続けていくことをおすすめします。この場合は、「どのような社員・社会人として働きたいのか」などを焦点に、職業人としての自分を展望することになるでしょう。
自己分析のバージョンアップにもオススメ!「なぜなぜ分析」をやってみよう
「自己分析」にはさまざまな方法がありますが、今回は現在の自分について掘り下げていく「なぜなぜ分析」をご紹介しましょう。
「なぜなぜ分析」は、もともとトヨタ自動車が発案した課題解決手法で、「なぜ」という問いかけを繰り返すことによって問題の真因を把握していく、というものです。これを「自己分析」に応用すると、あなたの「働くことによるやりがい、自分にとっての働く意味」を掘り下げて考えることができます。その結果「就活の軸=自分の価値基準・判断基準の軸」をしっかりとつかむことができますので、非常におススメです!
実は私も、日常的に「なぜなぜ分析」で自己分析を続けています。その名も「セルフダイアログノート」! 参考までに、その方法をお教えしましょう。
A5判のノートに、「私にとって仕事をする上で大切だと思うこと」などを思いつくまま書いていきます。いくつか項目が書けたら、色の違うペンを使って、それぞれの項目に対して「なぜそう思うの?→〇〇〇だから」と問いかけ&返答を書いていきます。書いた返答に対してさらに「なぜ?→〇〇〇」を数回繰り返していくと、次第に自分が働くときにこだわりたいことや重視したいこと、やりがい、目標などが見えてくるのです。ちょっとした空き時間にも気軽にできるので、よかったらやってみてくださいね。
なお、「キャリタス就活」の「就活成功ガイド:自己分析」にも参考になる記事がたくさんありますので、読んでみてください。
「自己分析」&「業界研究」は就活の両輪
「自己分析」と「業界研究」がいかに重要な取り組みであるか、おわかりいただけましたでしょうか。これらふたつの両輪が十分に機能してこそ、あなたの就活準備がスムーズに進むのです。
なお、「自己分析」だけに時間をかけてしまわないように注意しましょう。早めに「自己分析」に着手し、ひととおり分析ができたところで「業界研究」に移行してください。「業界研究」を進めていく中で自分自身についてもう少し考えたいと思ったら、改めて「自己分析」を深めればよいのです。
忙しい学生生活の中で「自己分析」と「業界研究」を進めるのは大変かもしれませんが、どちらにもバランスよく取り組めるように、時間の配分を考えて進めてみてくださいね。
PROFILE
濱野 裕貴子
キャリアコンサルタント・公認心理師・ワークショップデザイナー
大学卒業後、教育系出版社に入社。通信教育の先生方のマネジメントを中心に、キャリアインタビューや機関誌の編集などに携わる。業務を通じて感じた「同じ仕事をしているにも関わらず働く理由や価値観の違いが出るのはなぜか」という問題意識から、「キャリア」に興味を持つように。14年間の勤務後独立し、以後、大学ではキャリアカウンセラーや非常勤講師、企業では研修講師として、学生や若手社会人のキャリア支援に当たってきた。演劇や落語、お笑いなどのパフォーミングアーツに触れることが大好きで、身体表現を使った自己理解のワークショップなども手掛けている。筑波大学人間総合科学研究科生涯発達専攻カウンセリングコース博士前期課程修了(カウンセリング修士)。