ずばり人事の本音を聞いてみた「グループディスカッション、司会じゃないと受かりませんか?」 ──第3回:株式会社三井住友銀行
体験談・インタビュー公開日:2023.10.31
就職活動の選考の中でも、特に対策が立てにくいグループディスカッション。同時に受けるほかの学生は初めて会う方のため、臨機応変な対応が求められます。さらに司会など目立った役割をしなければ受からないのでは?――そんなお悩みに対し、人事の本音をずばりうかがうインタビュー連載。
グループディスカッションを受けるにあたって気を付けるポイント、就活全般へのアドバイスなどを、株式会社三井住友銀行人事部採用グループの陶久(すえひさ)氏にお聞きしました。
グループディスカッションの秘訣は「適切な役割」と「貢献意識」を持つこと
──夏インターンシップではエントリー数が多く激戦区と聞いていますが、グループディスカッションやグループ面接など、複数人を同時に見る選考は行っていますか?
ありがたいことに夏インターンシップは毎年特にご好評を頂いており、エントリー数は多いですね。夏インターンシップの選考フローでは一部、グループディスカッションは取り入れています。
──では、グループディスカッションについて伺います。やはり司会など役割を担わないと受からないのでしょうか?また学生のどのような資質を見ていますか?
結論として、司会や特別な役割をしなくても、まったく心配ありません。どんな資質を見ているかは企業や人にもよると思いますが、大切なことは主に2つあります。1つは、チーム全体や自分のことを正しく認識できているかどうか。もう1つはチームへの貢献意欲です。
1つ目の、チーム全体や自分に対する正しい認識というのは、例えば自己紹介でチームメンバーを見渡したときに、「自分が今司会をやるべきなのか」、または「この中だったらファシリテーターに向いてるな」「逆にもっと向いてる人がいるから、そこは任せて、自分は違う役割をした方がいいな」とか、広い視野で全体を見て正しくチームと自分の位置付けを理解し、適切な役割を担ってチーム全体のパフォーマンスを最大化することができるかどうかです。
なので、絶対に司会がいいというわけではないですよね。自分がそのチームの中で一番活躍できる役割を見極めて、最大限の力を発揮する。そしてほかの人も最大限の力を発揮できるようにちゃんと周りを見てサポートする。そういった役割分担ができるかというところの方が大事です。
逆に、もっと適任がいたのに、無理やり司会に立候補して、全体的にいいグループワークにならずに終わってしまった、となると、司会をやって良かったとはならないと思います。やはりチーム全体、そして自分のことを正しく認識できるかがポイントですね。
2つ目の貢献意識については、自分の役割としてチームに貢献できたかどうかを見ています。例えばファシリテーターや司会ならしっかりワークを仕切れたか、発表者ならそのグループの意見をしっかり汲み取って発表できたか、書記ならディスカッションをわかりやすくレポートにまとめられたか、などです。逆に何の役割がなくてもいい意見を出せた、場が明るくなるような発言ができた、など、そのチームにいい影響を与えられていればとてもいいですね。
反対に、黙ってしまっていたり、ほかの人の意見を否定したりするなど、チームに貢献する意欲がないように見える方は少し残念だと思います。
能動性と成長のポテンシャルを重視しています
──司会、書記、タイムキーパーなど様々な役割がありますが、「この役割だと評価が高い」といったことは実際にあるのでしょうか?
繰り返しになりますが、役割は関係ないというのが答えです。役割にかかわらず、柔軟な方は評価が高いのではないかと思いますね。自分の考えを持ちつつほかの人の意見に対しても聞く耳を持てたりする人は、とても好印象ですね。なぜなら、そういう方は、会社に入った後も成長しやすいからです。人から言われたことに対して素直な方は何事においても成長しやすくポテンシャルがあると思います。
逆に、先ほど申し上げた貢献意識にも関係しますが、意見をまったく言わないというのは貢献していないのと同じと判断されやすいです。ほかの人の意見を受けてもっといいものにブラッシュアップしたり、あるいは、自分の考えが間違っていたと思ったら素直に撤回できたりすると、評価につながると感じます。
──柔軟さと自分の意見がない人との違いはどのように見極めているのですか。
難しいですが、ロジカルさは一つの指標ですね。ほかの人に言われたからじゃあ合わせます、ではなく、人に言われて自分の意見と照らし合わせ納得したから撤回する、という、考え方のプロセスを見ています。単に折れればいいということではなく、きちんと考えた上でそれでも自分の意見の方がいい思ったら、無理して折れる必要はないと思います。やはりしっかり考えて、議論を発展させられているかどうかが大事ですね。
──「目立つ人に圧倒され、まったく輪に入れなかった」という悩みもよく聞きます。そうした方が挽回できる方法やアドバイスはありますか?
誰でもうまくいかないことはあるので、そういうディスカッションを経験したときこそ自己理解につなげてほしいですね。例えば自分は意見を出すのが苦手なタイプだと気づいたら、次のディスカッションのときは、書記やまとめる役になってみるとか。さらに、例えばニュースや自分が好きな小説、ゲームや漫画など、なんでもいいので何かについて自分の考えを発信することを普段から心がけるようにすると、徐々にディスカッションでも自然と自分の意見が言えるようになるのではと思います。
それでもなかなかすぐに発言するのが難しいと思ったら、例えば思ったことをメモしておいて、ちょっと間ができたときに発言したりするとか。すぐにその場で実践できなくても、次回のために自己理解につなげられたら十分ですよ。
──グループディスカッションで、ほかに見ているポイントはありますか?
銀行は大きい組織なので、多様なタイプの人が必要です。同じタイプの人だけに入社していただきたいわけではないので、例えばロジカルな人もいれば、ムードメーカーで場を和ませる力がある人もいいと思いますし、アイデア豊富で鋭い意見を言える人もいいですね。ひとりひとりの個性を見て、それぞれどんなことが得意か感じとるようにしています。
あとは、あまり正解を探しすぎないでほしいです。グループディスカッションに絶対的な正解はなく、自分ならではのいいところを生かして、みんなでそのときできる一番いいグループディスカッションを作り上げていくという想いが大事だと思います。自分が目立とうとばかり意識するのではなく、そのグループディスカッション全体をいかに良くするか考えられる人は、いい結果に結びつきやすいのではないでしょうか。グループディスカッションの本来の目的をちゃんと踏まえて、ひとりではなくみんなでディスカッションしたからこそよりいい結論にたどり着けたと、最後にグループ全員が思えるかどうか。そこに向かって自分の役割を全うしていくことが重要だと感じます。
自分を理解すること、そして人間としての厚みを増すことが大切
──金融業界にかかわりたい学生の方が意識すべきことは何かありますか?
金融業界は、お金やソリューションという目に見えないものを扱ってるため、一番の商材は自分という「人」です。そのため自己分析や自己理解を徹底的にしてほしいと思います。就職活動をしていると、企業研究や業界研究に興味がいきがちだと思いますが、特に金融業界を目指される方なら、焦らず自己分析や自己理解を大事にしてもらえたらと思います。
──おすすめの自己分析や自己理解のやり方があれば教えてください。
学生の皆さんは結構スキルを重視しがちだと感じます。例えば、こういう資格を持ってる、こういうバイトをしている、こういう学部に通っているとか。スキル面はたしかに大切ですし、目に見えるものなのでわかりやすくはありますが、もっと根本的なところにも目を向けてほしいと思います。
時代の変遷とともに必要とされるスキルは変わっていきます。一方、自分の根本の部分は変わりにくい。どんなことしていると楽しいか、どんなことは苦手なのか、どういうときにがんばれるタイプなのか、など、自分の人間性を深掘っていってみてください。そうすると自然に、自分はどんな仕事がしたいのか、見えてくると思います。
──どのように情報収集するのがおすすめか、どんなことをがんばっておくといいかなどアドバイスをお願いします。
私は一番効率がいい情報収集は採用ホームページを見ることだと思います。学生さんからの質問って、意外と採用ホームページに書いてあることが多いです。各社本当に力を入れて採用ホームページを作っており、会社の取り組みや社員の紹介など、皆さんが知りたい情報も盛りだくさんだと思うので、志望度の高い会社のホームページはぜひしっかり読み込んでくださいほまた、ぜひ1人でもいいので各社の従業員に会ってみてはいかがでしょうか。先ほどもお伝えしましたが、特に金融業界では、扱っているものがお金やソリューションなどで、見方によっては他社と同じものなんです。だからこそ、人やカルチャーが会社ごとに最も異なる部分だと思うので、ぜひ従業員に会って雰囲気を感じてみて、直感で自分はこういうところが好きだと思った点が1つでもあると、志望動機を伝える際にも説得力が増しそうですね。
そして個人的には、資格の勉強や仕事の経験などは会社に入ってからでもできることなので、学生のあいだはそれだけにとらわれず、今しかできないことをやってほしいなと思います。例えば、長期の旅行とか、留学でもいいと思います。自分が将来、多分かかわることが少ないであろう業界の仕事をアルバイトで経験してみるのもいいですね。様々な経験を積みいろんな人とかかわると、人間としてより多面的になり厚みが増すと思います。その厚みがどれだけあるかは、特に「人」が商品となる金融業界ではとても大事なことなので、急いで社会人になろうとせずに、人間として土台作りをしてくれたら嬉しいです。
三井住友銀行は採用スローガンとして「挑戦者よ、世界を揺らせ」というメッセージを掲げています。銀行はルーティンワークが多い、決まった仕事ばかり、というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、三井住友銀行は金融の枠にとらわれず、デジタルやサステナビリティなど最新の分野で新たな挑戦を常に続けています。失敗を恐れず挑戦したい、自分自身の力で新たな価値を生み出したい方をお待ちしています。
PROFILE
中尾 あずさ
大学卒業後、新卒で旅行会社にて営業・海外添乗員を経験後、大手人材会社へ転職。営業・人材育成・研修講師を行う。その間、アルバイト→契約社員→正社員→時短勤務と様々な勤務形態を経験。在籍中に3人の子供の出産・育児休暇を経て仕事と子育てを両立。2011年にキャリアカウンセラー(CDA)資格を取得。副業にてトータル3500人の相談業務に従事し独立。高校、大学でエントリーシートの添削や面接対策、進路相談など就職活動支援や就業中の方へのキャリアコンサルティングを実施。
【主な資格】
・キャリアカウンセラー CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
・国家資格キャリアコンサルタント
・青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー
・育休後アドバイザー