ずばり人事の本音を聞いてみた「今日の面接、失敗しました。なかったことにできますか?」──第1回:株式会社オカモトホールディングス
体験談・インタビュー公開日:2023.09.12
「人事担当者は、本当はどういう視点で応募者を見ているんだろう」「自分の就活準備、本当に合っているかな」──就活準備や選考を重ねる中で生まれる、説明会等ではなかなか聞きづらいお悩み・人事の本音を、ずばりうかがうインタビュー連載。面接でうまく答えられなかったり、失敗したと思ったりすることはよくあるかと思いますが、株式会社オカモトホールディングスにはそんな時「面接をやり直しますか?」と、その面接を「なかったこと」にする制度があるそうです。面接で気にしているポイントや選考を受けるにあたって気を付けるべきポイント、就活全般へのアドバイスなどを、人事統括本部長の中西創氏にお聞きしました。
「今日の面接、なかったことにしてもらえますか?」
──はじめに、オカモトホールディングスの事業内容を教えてください。
北海道の音更町中士幌で創業し、ガソリンスタンド、飲食チェーン、スイミングスクールやフィットネスクラブなどを多角的に展開しています。今では北海道から沖縄まで全国680店舗を構えています。
──オカモトホールディングスの採用活動には、「面接をやり直せる」というユニークなシステムがあるとお聞きしました。
面接中、「ポテンシャルはあるが、頭の中が真っ白でそれを出し切れていない」と感じる学生の方がよくいます。ご本人も面接が進むにつれ「うまく受け答えができていない」「このままじゃまずい」と感じて落ち込みだしてしまう。そういう方に「じゃあもう一度面接をやりますか?」と提案したのが始まりです。たいてい驚きますね、「え、いいんですか?」と。9割の方には承諾してもらえます。
承諾してもらえた方には、面接でのよかった点とうまくいかなかった点を振り返ります。今日は何ができて何ができなかったか。できなかったことは次回までの宿題にしますからと。
──再挑戦した面接で、学生の変化はありますか?
明らかに目つきや顔つきが変わります。再挑戦によって“就活のスイッチ”が入ったという感覚だと思います。失敗した1回目の反省点を踏まえて、準備をしっかりしてくるのです。企業研究を深め、自己分析や自己PR、志望動機もさらに充実させて臨んでくださいます。それから声の大きさも変わり、まるで別人となったような印象を受けます。当社では、最終面接まで同じメンバーが担当することが多いので、その変化に気付くことができます。3回目の面接を受ける学生もいますし、最高で8回面接したこともありますね。
──最初の面接で「うまくいかなかった点」というのは、具体的にどんなことでしょう。
例えば企業研究があまり深く進んでおらず、それに関する質問に答えられなかったりする点です。以前は当社グループの店舗に足を運んでから面接に臨む方が多かったのですが、最近は「ホームページをしっかり見てきました」と答える方が圧倒的に多いですね。もちろんそれも「研究」であるからいいのですが、サービス業が主体ですから、志望企業が運営している店舗やサービスを自分の目で見たり体験したりすることも大切だと思います。まずは業界研究を深く掘り下げて臨むとよいと思います。
それから、企業選びの軸をきちんと説明できるようにしておくことも大事です。なぜこの業界で、この企業なのか。社会人になって働く自分の像を具体的に思い描いて、面接でそれを披露できるとよいですね。
再面接にはミスマッチを防ぐ効果も
──再面接するとなると、その分時間も要しますよね。
個別の面接時間は1人45分~1時間ぐらいで、1日10人面接することもありますので、大変ではあります。もう目をつぶって合格にしようかなという気になることもありますが、結局それはお互いにとってよくないと思います。学生の方にとっても、やはりちゃんと見てもらって、本当の自分を評価してもらいたい気持ちもあるでしょう。こちらも本当のパフォーマンスを見たいと思っているので、再面接を実施していますね。
──じっくりと話をすることで、その就活生の人物像や背景も見られるわけですね。
例えばエントリーシート(ES)なら時間をかけてしっかりと作り込んでいくことができます。しかし面接になると緊張するせいか、ESに書いてある通りのことが喋れなくなるのです。そこで、「今緊張しているのかな」と思った時が、再面接を提案するタイミングとなります。
──面接は対面でなさっているのでしょうか。
オンラインのグループ面接、グループディスカッションを経て、個別面接は必ず対面で行っています。オンラインだと感じられない温度感と雰囲気も大事にしています。先ほども言ったように「なかったことにする制度」を提案した学生には、面接の終わりにその時よかった点をフィードバックするようにしています。以前、「なかったことにする制度」を経て内定したある方に、「君は一度失敗している。だから失敗し続けてくれ」と言ったことがあります。その方は一歩前へ踏み出す力を発揮して、とてもがんばっています。どんなことでも真っ先にチャレンジする、例え失敗してもその姿を見てみんなが続いていきます。若い方だからこそ失敗できるし、それが成長につながっていくと思っています。
チャレンジの心とフレキシビリティを
──中西さんにとって、最近の就活生はどう映っていますか。
コロナ禍の影響もあったかと思いますが、ここのところ就活生の「活動量」が減ってきているかなと感じています。エントリーしている企業が少なくなっているのではないでしょうか。もちろん、早期にインターンシップ等で積極的に動いて春先には内定をもらっているため、その後の活動を絞る方もいるのでしょうが…。就職活動の時期にたくさんの企業を見ておくことはとても大事で、いろいろ見た上でこの企業に決めた、となるのが理想型ですね。
──ほかに、面接ではどんな点に注意を払ったらよいでしょうか。
グループ面接やグループディスカッションでは、他者とどう関わるかを見られていることに気を付けるとよいと思います。例えば、同世代だからといきなりタメ口で話すのはあまり印象が良くありません。相手を敬う話し方ができるか、気づかいができるか、チームワークが取れるか、メリハリが付けられているかどうかも大切なポイントです。社会人として守らなければならない節度を、ある程度わきまえているかも見させてもらっています。
──社会人としてのスタートを切るまでに身に付けておくべきことは何でしょう。
当社で特に大事にしているのは、スピード感、フレキシビリティ、チャレンジ精神の3つです。どの企業でもこれらを意識しておくとよいと思います。世の中の変化に対応して事業展開しようという発想でやっていますので、情報の鮮度も大事ですし、いち早く着手するスピード感も大事です。例えばガソリンスタンドのセルフ化を業界に先駆けて早期に進められたのは、こういった思想があったからです。大きな変化こそチャンスですし、チャレンジして失敗しても許される。「なかったことにする」のは企業風土なんです。
──社内でのキャリア設計についてはどう考えていらっしゃいますか。
1年後から20年後までの人生設計を書き出す手帳を、インターン生も含め全社員に配っています。将来こうなりたい、そのためには今何をすべきかを書いていくわけです。就職が目的ではなく、人生を送ることが大切。あくまでもその手段が就職で、将来の人生設計をこの会社で実現できるか。インターン生にはそういう視点で会社を選んでほしいと伝えています。私はキャリアコンサルタントの資格も持っていて、その立場としても学生の皆さんのキャリア支援を行っていきたいと思っています。
PROFILE
鳥羽山 康一郎(とばやま こういちろう)
静岡県生まれ。広告制作会社、外資系広告代理店にてコピーライター、クリエイティブディレクター、プランナーとして勤務後、2006年よりフリーランスとして独立。外資系マーケティング理論の知見を活かし、広告・Webライティング等を中心に執筆活動を展開中。地方取材、インタビューも得意とする。