SNSにおける「炎上」を理由とする内定取り消しについて【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2023.12.19

皆さんも、SNS(X[旧Twitter]、Instagramなど)での「炎上」という言葉を聞いたことがあると思います。SNSで不用意な発言や投稿をしてしまい、不特定多数の第三者から批判などを寄せられることは珍しくありません。ひとときの批判だけで事が収まればよいのですが、場合によっては、マスメディアを巻き込んでの炎上になることもあります。

今回の記事のテーマは、SNSでの炎上を理由に内定を取り消すことが法的に許されるのかです。現代ならではのテーマであり、法的な議論は十分に構築されていない問題ですが、皆さんの関心は高いと思うので解説いたします。

「内定」に関する理解の整理

改めて「内定」という言葉について整理します。
「内定」とは、専門用語でいうと、「始期付き解約権留保付き雇用契約」を意味します。

わかりやすくいえば、内定とは、「いつから働いてもらうかを決めておきます(始期付き)。また、場合によっては内定が解約されることもあります(解約権留保付き)。ただし、法律上の性質は雇用契約です。」というものです。

大事なのは、「法律上の性質は雇用契約」という点です。通常の雇用契約と比べれば仮の要素は強いものの、雇用契約である以上、会社側から理由もなく一方的に解約(内定取り消し)することは許されません。

炎上を理由とした内定取り消しのポイントは“いつ起こった炎上”か

ここからが本題です。
SNSでの炎上を理由とする内定取り消しの有効性を検討する場合、実は、「内定が出る前の炎上か、出た後の炎上か」という時的な要因が重要です。これはなぜかというと、内定取り消しの有効性を検討する際、「内定を出す前に知り得た事情であれば、それを理由に内定を取り消すことは原則として許されない」という視点があるからです。後出しジャンケンはダメだということですね。

今の時代、内定者の氏名などをGoogleで検索すれば、いろいろな情報がヒットします。少し調べれば、内定者が過去にSNSでの炎上事件を起こしたかどうかを確認することは容易です。

そうすると、内定を出す前に炎上事件が起こっていた場合、「会社としては、そのような事情を知り得たでしょう。その状況で内定を出したのだから、後から炎上を理由に内定を取り消すことは許されませんよ。」という結論に傾きます。

「どのような」炎上か

時的な要因のほか、「そもそもどのような理由で炎上したのか?」という要因も大事です。
炎上の理由を大きく分類すると、①SNSでの投稿から犯罪行為が発覚した場合、②犯罪には該当しないものの法律上不適切な行為が発覚した場合、③モラル上問題である行為が発覚した場合、の3つがあるかと思います。

このうち、①の場合は内定取り消しのリスクがかなり高くなることは誰しも想像できるでしょう。
微妙なのは②で、実際の事案によって結論が分かれ得るところです。昨今の情勢からすると、人種・信条・性別・社会的身分などに対する明らかな差別発言をSNS上で発すると、内定取り消しに遭うリスクが高まると思われます。

③に関しては、基本的に内定取り消しを正当化する理由にはなりません。ただ、入社後も人格的に疑いの目を向けられることになりかねませんので、注意するに越したことはないでしょう。

おわりに

私の時代に比べると、皆さんは注意すべきことがたくさんあって大変だなと思います。SNSは便利で楽しいものではありますが、少し調子に乗ってしまいネット上で炎上すると氏名などが特定されてしまう可能性があります。今回は炎上における法律の話させていただきましたが、SNSの使い方を間違えないよう、読者の皆さんにはSNSをぜひ安全に使ってほしいものです。

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PROFILE

定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。

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