仕組みから攻略する 面接対策PART6 面接の準備
ES・選考対策公開日:2023.04.03

ここまで、人財を採用するために企業がどのように求める人財像を構築して面接を実施しているのか、順を追って説明してきました。
当章ではこれまでの内容を受け、応募者の皆さんが面接で伝えるべきことをどのように作成し、本番までにどのような練習を行っておくべきかといった、面接の準備の進め方についてお話しします。
準備を始めるにあたって
以前の章で、面接はトランプに例えるならば、あなたが持っているカードをすべて企業に提示し、企業が欲しいと思っているカードと合致するか確認するような作業だと言いました。
そのことからおわかりいただける通り、面接の前に準備しておくことは、
- ・企業がどのようなカードを欲しいと思っているのか先にきちんと調べておくこと
- ・自分の持っているカードをきちんと提示できるように整えておくこと
の2つということになります。
具体的な作業の進め方としては、すでに自分が受けたい企業が決まっている場合と、そうではない場合に分けて考えることができます。
すでに受けたい企業が決まっている場合には、その企業がどのようなカードを欲しいと思っているのか調べるところからスタートし、志望企業がまだ決まっていない場合は、先に自分がどのようなカードを持っているのか、振り返るところからスタートします。
では、さっそくその2つのケースを説明していきたいと思います。
志望企業が決まっている場合
企業は「求める人財像」の説明の中で、応募者にどのようなカードを求めているのか説明しています。
通常はホームページに記載されていますが、見つからない場合には企業説明会に参加するなどして、事前に理解しておく必要があります。
そしてここでいう応募者に求めている「カード」とは、応募者が持っている「行動特性」のことを指しています。行動特性には、例えば以下のような種類があります(詳細は「求める人財像」を参照)。

事前に企業が求めている行動特性を理解したら、面接ではそうした行動特性を自分が学生時代に実際に発揮したエピソードで話すことになります。
志望企業が決まっていない場合
志望企業がまだ決まっていない場合は、自分がどのようなカード、つまり行動特性を持っているのか、全体的に振り返ることを先に行います。
先ほどの例に挙げた行動特性の一覧を眺め、それぞれの行動特性を発揮したことを説明するとしたら、学生時代にどのようなことに取り組んだときのエピソードを話せば良いか考えていきます。
一つのエピソードで、なるべく多くの行動特性を網羅できることが理想です。
面接の時間は短く、複数のエピソードを話せるような展開になることは少ないからです。
また、求められる行動特性は企業ごとに少しずつ違うものですが、主体性、働きかけ力、実行力といった行動特性はどの企業でも重視されていると考えて差し支えありません。そこで、そうした行動特性を発揮できたエピソードをしっかりと思い出しておくと良いでしょう。そうして自分を振り返る過程で、自分の強みである行動特性や、逆に弱みと思われる行動特性も把握できると思います。
自分が得意な行動特性を「求める人財像」として強調している企業は、自分が活躍しやすい企業だと考えることができます。面接の際にも、自信をもって伝えられるエピソードがあるのではないかと思います。
企業選びの際に、そうした視点を積極的に活かすと良いでしょう。

エピソードの選び方
エピソード選びについてはよく、どのようなテーマ(ゼミ、アルバイト、サークルなど)が好まれるのか、逆にNGのテーマがあるのかといった質問をもらいます。
〇〇系のサークルの話は良くないなどといったうわさが生じることもありますが、実際にはテーマ自体が合否に関係することはないでしょう。
ただし、学生ゆえ、学業について何か話せるエピソードを持っていてほしいと期待している面接官が多いのは事実だと思います。そこで私としては、学業におけるエピソードを一つ、学業以外のエピソードを一つ、ないし二つ用意しておくのが良いと思います。
また、大きな成果を上げたエピソードでなければいけないといった誤解も根強いものがあります。こちらも、取り組みの結果や成果の大小が、そのまま評価につながることは一般的にはありません。例えば何か大きな大会で優勝したエピソードだったとしても、その「結果の大小」ではなく、優勝するために取った「行動の質」を面接官は評価します。
また、面接官は時間内に複数の行動特性を評価しているのが一般的ですが、応募者が伝える情報量が少ないために評価がうまく進まず、時間切れになってしまうこともあります。 例えばあなたが話すエピソードが、たった3日間の短い取り組みの話だったりすると、本当にそのような行動特性を備えているのか面接官が判断できず、ほかのエピソードも求めている間に時間が足りなくなったりすることがあります。
そうした観点から、エピソードとして選ぶテーマは、できれば学生生活において長きにわたっているもので、複数の人が関わっているもののほうが、面接官が評価しやすいと言えると思います。
エピソードの作り方と練習の仕方
ゼミやアルバイトなど、何の活動について話すかテーマが決まったら、次は、
- A)背景・課題(目的)・役割
- B)自分が取った行動
- C)結果・成果
の3点から話せるように考えていきます。
まずは1分くらいで、エピソード全体を話せるように練習してみると良いと思います。
そして次に、それぞれについてもっと具体的に詳細を話せるように考えていきます。
特に、B)自分が取った行動について話すことは、自分が持っている「行動特性」を伝えることにつながるため、とても重要です。

そこで、特にB)の部分について、
- 一言で簡単に言う
- 1~2分で説明する
- 順を追って詳細に丁寧に説明する(3分以上)
といった具合に、面接官の求めに応じて、詳しさの程度を柔軟に変えて説明できるように練習しておきましょう。
面接では、最初はざっくりと説明を求められ、後から面接官がもっと聞きたいと思ったポイントを、より詳細に質問されるという流れが一般的です。
よくある失敗例として、最初から背景情報などを詳細に話し始めてしまい、結局自分が伝えたいこと(自分が取った行動)について話をする時間がなくなってしまったり、逆に具体的に聞かれているのに、焦って一言で抽象的に話してしまい、思ったように PR ができなかったといったパターンが挙げられます。
本番では、自分をよく見せようと頑張りすぎる必要はありません。質問に対して、「受かるために正解を思いつかないといけない」といった気持ちで臨んでしまうと、普段の自分を出せなくなってしまうものです。「正解を思いつく」というよりも、「今までの自分のことをよく思い出す」というスタンスで臨むと、肩の力を抜くことができるのではないかと思います。
面接官も敵ではなく、実はそうした情報収集を上手にしてあげたいと思っているものです。自分を出し切れるように、しっかりと準備をして臨みましょう。
就職活動で話すエピソードはあなたの日常そのもの
さて、就職活動を企業の採用活動の視点から説明してきました。
私としては、企業の採用活動が、一部のネットにある情報のような受験者を見下したものではなく、入社した人が自社で活躍することを客観的に、誠実に追求したものであることが伝われば良いなと思っています。
もちろん、採用活動の設計が未熟な企業や、面接官トレーニングが不適切な企業があることも事実です。私も自分の仕事としてそのような企業を支援し、適切な採用活動を行う企業を増やしていきたいと思います。
皆さんには理不尽な不安に駆られることなく、就職活動で自分が持っているものを十分出し切ってもらいたいと思います。面接の場では、皆さんは自分の学生生活におけるエピソードを話すことになります。つまり就職活動はモンスターではなく、その本質は皆さんの日常の中にあるということです。
事実として、学生生活を本気で頑張っている人が、就職活動も強いと思います。
ただ、そう言われたらまた不安になる人がいるかもしれませんね。
もしもあなたが就職活動に本気で臨みたいと思ったら、もしも今が人生の中で本気を出さなくてはいけないタイミングだと思ったなら、あなたの日常生活を明日からでも本気で過ごしてみてください。いつからでも遅くはありません。そうして「行動した事実」だけが、あなたに自信を持たせてくれるはずです。

PROFILE
小宮健実
株式会社採用と育成研究社 代表
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手がけている。