仕組みから攻略する 面接対策PART5 面接(後編)

ES・選考対策

公開日:2023.04.03

みなさんご存じかもしれませんが、面接官をしている人は、必ずしも人事の人とは限りません。営業や開発など、現場で働いている人も面接官を務めるのが一般的です。また、人事に所属している人であっても、最初から面接が正しく行えるわけではありません。

そのため面接を正しく行えるように、面接官を務める前にはトレーニングを受けます。面接では、合格基準が人によってブレないように、評価項目と評価基準というものを用意するという話をしましたが、それらを理解して正しく使いこなせるようになることがトレーニングの目的です。

今回は特にそのトレーニングの内容について紹介していきたいと思います。一見みなさんが知る必要のない内容だと思われるかもしれませんが、面接を受けるときに面接官がどのような点に注目し、何に気をつけているかを知ることは、正しい就活の準備に役立つと思っています。

どのように面接官のトレーニングは行われているのか

私が面接官のトレーニングで行っている内容は、主に以下の通りです。順を追って簡単に説明していきましょう。

1:自社が採用しようとしている人財像を共有する

トレーニングはまず、採用活動のために設定した求める人財像、および評価の観点と基準を共有することから始まります。

面接は、面接官がそれぞれ優秀だと思う人を勝手に選ぶ作業ではありません。ある1人の応募者に対し、どの面接官が対応しても同じ評価を下すことが基本です。それにはまず自社で合格にしたい人はどんな人なのか、それを正しく理解することが大切です。

(求める人財像については第1回、評価の観点と基準の詳細については第4回で詳しく説明しています。)

2:面接の進行について

面接はどの企業も大体30分から40分程度で行われますが、その間どのように進行するのか、どのような質問をどのような順序で行うのか理解します。

よく面接では、部屋に入ったときにまず「会場まで迷わずに来れましたか?」「昨日はよく眠れましたか?」といったような、イエス、
ノーで回答できる簡単な質問をします。これはみなさんの緊張をほぐすためなのですが、そういったことも学んでもらいます。逆にみなさんは、「最初に何か簡単な質問をされるんだな」と思っていてよいでしょう。予想通りの進行であれば、少し緊張が和らぐのではないでしょうか。

3:質問スキルのトレーニング

進行の中でも、質問スキルはとても重要なので重点的にトレーニングを行います。評価の観点や基準が分かっていても、質問が適切に行えないと面接の質が下がってしまいます。この内容についてはみなさんもぜひ理解してください。まさしくみなさんが「何をどのように話すべきか」ということに直結しているからです。後半で詳しくお話ししましょう。

4:評価スキルのトレーニング

評価スキルとは、質問をして返ってきた回答を、適切に評価するスキルです。質問スキルと同様、評価スキルも面接官に欠かせないスキルです。 トレーニングでは、受験者の回答例を示し、評価基準に照らして実際に評価を行ってみます。面接官が最も苦労するトレーニングですが、(営業や開発など)普段の本業をこなしながら、同時にこうした努力をして面接に臨んでもらっています。

5:面接官として知っておくべき知識の習得

面接官として知っておくべき知識として、「心理的な注意点」や、「してはいけないこと」などを学びます。

「心理的な注意点」としては、例えばハロー効果があります。ハロー効果とは、受験者の第一印象が良いと、その後何を話しても良いことを話しているように感じてしまう心理的作用のことです。みなさんはどこかで「面接は第一印象で決まる」などという情報を目にしたことがあるかもしれません。もちろん第一印象は悪いよりも良いほうがいいと思いますが、面接官は第一印象で評価が狂うことがないように学んでいるのです。

「してはいけないこと」とは、差別にあたるような言動、ぞんざいな態度、個人情報保護に関する注意事項などがそれにあたります。面接は学生が企業を選ぶ場でもあるので、お客様として接するべきであることや、圧迫面接は科学的に効果がないといった事なども伝えます。面接で受験者に対してぞんざいな態度をとる企業があった場合には、残念ながら面接官トレーニングが行き届いていないのかもしれません(そのほか、受験者が事実を曲げて話をつくってしまうとたくさん突っ込まれ、圧迫面接のように感じることがあるのは前回お話しした通りです……)。

面接官の話の聞き出し方=受験者のエピソードの組み立て方

面接官が受験者にどのように質問をして話を聞き出すのか、つまり面接官の質問スキルについて理解することは、みなさんが面接の際に何をどのように伝えれば良いか理解することにつながるでしょう。

前回、面接の設計で最も一般的なのは行動特性を評価する面接で、面接では受験者から普段の学生生活で取っている行動(もしくは過去に取った行動)を質問して聞き出し、その回答を評価基準に照らして評価を行うのだと説明しました。

その場合、一般的に面接官は、「学生時代に最も力を入れた取り組みについて教えてください」といった質問をします。みなさんもきっと面接官にどのような話をするか、事前に考えてから臨むことと思います。例えばゼミのことやアルバイトのこと、ボランティア活動のことなどです。

下の図は、みなさんが話すエピソードをどのように整理して理解するか、面接官に説明するときに使用しているものです。

応募者の話の整理の仕方

受験者は、「~な課題があったが解決することができた」「~な目標を達成することができた」といったようにエピソードを伝えてきます。そのとき、多くの受験者は「課題」や「目標」の大きさ、それが上手に「解決」したり「達成」したという結果を伝えるのが重要だと思っています。それゆえ、話の中で主にそれらを中心に伝えようとします。

ただし面接官が評価をするために重要なのは、その結果のために「どのような行動を取ったのか」という情報です。課題や目標の大きさ、結果のすごさについては参考にするものの、それ自体を評価の対象とするわけではありません。例えば、全国大会で優勝していれば合格になるわけではなくではなく、そのために「どのような行動を取ったのか」という情報が重要です。

しかしながら、肝心の「どのような行動を取ったのか」という部分は、大概の受験者の場合、「大変だったがあきらめずに行いました」「期待に応えようと信念を持って臨みました」といった具合に、具体的な説明がない、実際には何をしたのか分からない場合がほとんどです。

そこで、面接官は「どのような行動を取ったのか」という情報を聞き出すために、以下のような順序で丁寧に確認を進めていきます。

面接官の話の聞き出し方

①:テーマの特定

  • ・そこでどのようなことを行ったのですか?
  • ・そのとき大変だったことはどんなことですか?

②:課題や目標など

  • ・どのようなことを目標にしたのですか?
  • ・課題はどのようなことでしたか?
  • ・どのような役割だったのですか?

③:どのような行動を取ったのか

  • ・まず何から取り組んだのですか?
  • ・具体的にどんなことをしたか教えてもらえますか?
  • ・例えばどのようなことですか?

③:結果

  • ・最終的にどのようになったのですか?

これらの確認の仕方は、よく新聞記者の取材に例えられます。質問スキルのトレーニングでは、実際に面接官役と受験者役に扮して、ロールプレイングを行います。受験者役の人が話すエピソードに対して、新聞記者の取材のように情報収集する練習をします。

①~④を見て、みなさんは「なんだ当たり前のことじゃないか」と思ったかもしれません。しかし私の経験で言うと、これらの情報を伝えるだけであっても苦労する学生さんが圧倒的に多いことも事実です。

③の情報を収集するために、「そのときどのようなことをしたのか、もう少し詳しく教えてください」と何度か質問しても、「とにかく気持ちで乗り切りました」といったような抽象的な回答しか返ってこなければ、面接官が高い評価をつけることはおそらくありません。

ぜひみなさんには、上記を参考に、面接官に伝わりやすいように自分のエピソードを整理してから面接に臨んでほしいと思います。

PROFILE

小宮健実
株式会社採用と育成研究社 代表

米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手がけている。

この記事のタグ

関連記事

最新記事

編集部のおすすめ記事

公式アカウントで最新情報を配信中!

  • Twitter
  • instagram
  • Twitter
  • LINE