新卒生必見!「副業」をする前に知りたいこと【弁護士が答えます】
就活ノウハウ公開日:2024.10.23
近年、「副業」に対する世の中の考え方は大きく変わっています。かつ ては副業を禁止とする企業も多かった日本の職場においても、働き方や個人のキャリアアップの一貫といった視点から副業に対する意識は変化しています。そこで本記事では、副業を行う前に確認しておきたいポイントをご紹介します。
「副業」に対する世の中の考え方の変化
これまでは、勤め先の会社だけで働き生計を立てることが一般的でした。しかし、厚生労働省が2018年1月に公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」により、副業を認める流れが推し進められています。
今後社会人となる皆さんにとっては、本業のほかに副業をもつことは決して珍しくなくなるかもしれません。ただ、「そもそも、なぜこれまで、多くの会社が副業を認めていなかったの?」という問題意識はもっておく必要があります。「若くて体力もあるし、空いた時間でバリバリ副業をした方がいいでしょ!」という感覚だけで動くと、思わぬリスクを招く可能性があります。
なぜ副業は原則禁止とされていた?
なぜこれまで副業が原則禁止とされていたのか、理由を挙げてみましょう。大きく分類すると、次の4つのポイントがあります。
①本業の労務に支障が生じるリスクがある
②企業秘密の漏洩のリスクがある
③会社の信用や名誉が損なわれるリスクがある
④競業によって会社の利益が損なわれるリスクがある
参照元「モデル就業規則 第14章第70条」
以下、順番に簡単な解説を加えます。
①は、副業によって労働時間が過剰になり、本業でのパフォーマンスが低下するリスクを意味します。たとえば、副業をがんばりすぎて、本業の労働時間中に居眠りをしたり、集中力を欠いてミスをするといったリスクです。
②と④は、本業の競業他社で副業をする場合に、本業のノウハウが競業他社に漏れるなどのリスクを意味します。本業の会社にしてみれば、自社の企業秘密が競業他社に漏れることはたまったものではありません。
③は、例を挙げると、「違法行為に関連する副業」や「反社会勢力に関連する副業」などです。事実が明らかになった場合、本業の会社の社会的な信用が損なわれるということです。
副業はあくまでも適切な範囲で
副業によって生じるリスクは上記①~④のとおりですが、副業促進の流れによって、上記①~④のリスクが解消されたことになるのでしょうか?
もちろん、答えは「ノー」です。副業が促進されたとしても、リスクは依然として存在します。むしろ、副業促進の流れによって、これまで以上にリスク配慮が必要になるはずです。これまでは副業自体が原則として許容されなかったので、副業によって生じるリスクを意識する必要性は高くなかったかもしれません(いわば、副業をすること自体がリスクだったためです)。
「ひとつ副業でもやってみるか!」という感覚で突き進むと、思わぬリスクに直面するかもしれません。皆さんが入社する会社が副業を認めている場合には、事前にきちんとルールを確認するようにしましょう。
余談ですが、昨今インターネット上に氾濫している、「副業で稼ごう!」といった情報には十分注意してください。こういった情報の中には、法的リスクを考慮しない無責任なものも多数含まれています。最悪の場合、「副業だと思ったら、反社会的勢力の仕事に加担していた」という事態も起こり得るので、情報はよく吟味してください。
PROFILE
定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。