労働条件通知書と雇用契約書は何が違うの?【弁護士が答えます】

就活ノウハウ

公開日:2024.06.12

皆さんが新入社員として会社に入社する際、会社側から提示されるさまざまな書面の一例として「労働条件通知書」や「雇用契約書」といった書類があります。この記事を読む学生の皆さんは聞きなじみが無いかと思いますが、各書類の違いを理解しておくことは社会人になる上で大切です。ただ、「労働条件通知書」って何?「雇用契約書」って何?という話になると、世間的にはあいまいにされている印象が強いです。そこで本記事では、それらの書類に関する役割や内容の違いについて弁護士がお答えします。

「労働条件通知書」とは何か

労働条件通知書とは、一体何なのでしょうか?まずはこの点について、教科書的な説明をしておきましょう。労働条件の通知は、労働基準法15条1項によって使用者(会社)に義務付けられるものです。労働基準法15条1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間そのほかの労働条件を明示しなければならない。」と定められています。この義務に違反すると、使用者は30万円以下の罰金に処せられます。

労働条件を通知するにあたり、絶対に記載しなければならない事項があります。これは、労働契約の期間、始業・就業の時刻、賃金の計算方法など、労働者にとって重要な事項です。これら重要な事項を記載しなければ、労働基準法15条1項の義務を果たしたことにはなりません。つまり労働条件通知書は、上記労働基準法の義務を果たすために作成される書面だということです。

労働条件通知書を渡された場合は、その内容をきちんと確認し、重要な事項について漏れがないか、解釈が不明な点がないかを確かめるとよいでしょう。

「雇用契約書」とは何か

労働条件通知書とよく似ている書面として、「雇用契約書」があります。雇用契約書とは何かというと、「使用者と労働者との間に成立した雇用契約の内容を記した書面」です。その名のとおり、契約書ということですね。ややこしいのは、雇用契約書を作成することは法律上の義務ではない、という点です。極端な話、雇用契約自体は口約束でも違法ではないということですね。もちろん、後でトラブルにならないよう雇用契約書を交わすことが望ましいわけですが…。弁護士業務をしていると、雇用契約書が作成されていないことによってトラブルになるケースをよく目にします。

■実は法律化されていない「労働条件通知書」の交付について

労働条件通知書と雇用契約書の違いは、おわかりいただけたかと思います。しかし、ここから、さらにややこしい話をします。実は、法律上、「労働条件通知書」という書面を交付することは義務付けられていません。「さっき、労働条件の通知が義務付けられていると言ったじゃないか!」とおしかりを受けそうですが、もう少し話を聞いてください。

労働基準法によって義務付けられるのは、あくまでも「労働条件の通知」であって、「労働条件通知書の交付」ではないのです。つまり、労働基準法によって通知が義務付けられる事項が何らかの書面によって労働者に通知されていれば、労働条件通知の義務を果たしたことになるのです。わかりやすいように具体例を挙げます。

たとえば、使用者が、労働基準法によって通知が義務付けられる事項を漏れなく記載した雇用契約書を作成し、これを労働者に提示したとしましょう。この場合、「労働条件通知書」という書面は交付していませんが、雇用契約書の提示によって労働条件通知義務を果たしたことになるのです。法律の世界というのは、なんとも難解ですね。就職活動をする上でこういった法律をすべて理解しておく必要はありませんが、学生の皆さんには、この記事に書いてあることを頭の片隅にでも置いていただければと思います。

PROFILE

定禅寺通り法律事務所
下大澤 優弁護士
退職代行、残業代請求、不当解雇、パワハラ・セクハラなど、数多くの労働問題を取り扱っています。これまでにも、発令された配転( 転勤) 命令の撤回、未払残業代の支払など多くの事例を解決しています。

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