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マーケットで大きな影響力をもっている
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機関投資家

提供:農林中央金庫

機関投資家は、個人投資家よりも資金量が多いだけでなく、豊富な情報、高度な手法を駆使することからもマーケットへの影響力が大きい。近年は、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)に配慮している企業に優先して投資を行う「ESG投資」に力を入れることで、より良い社会と未来の実現に貢献しようと努力する機関投資家も増えている。

01
日本の農林水産業に根ざす金融機関

市場運用資産規模は、アジアトップクラスの約50兆円。

「NOCHU(農中)」という略称で世界にその名を知られ、日本有数の機関投資家として国際金融市場でも異彩を放っているのが農林中央金庫だ。法人としての最大の特徴は、農林中央金庫法の第一条にも記されている。いわく、農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関として、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資すること——。

現在、投資フロントである市場運用部に在籍する千松薫は、この社会的使命が機関投資家としての農林中央金庫のオリジナリティを磨いてきたと解説する。

「私たちは運用で得た収益を、当庫のお客様であるJA(農協)、JF(漁協)、JForest(林組)といった農林水産事業者に安定的に還元することで、日本の農林水産業の発展に寄与することを目的としています。よって、短期的な値動きを追いかけて利ザヤを稼ぐよりも、中長期的に見て安定的に収益を獲得できるかが、ポートフォリオ運営の大前提。当庫の投資ビジネスを特徴付ける『国際分散投資』も、まさにこうした使命、背景のもと、今も進化と深化を続けています」

千松によれば、投資対象資産は国債をはじめ、株式、社債、プライベートエクイティ、ヘッジファンドなど多岐にわたる。加えて、投資対象地域も日本のみならず、米国や欧州、オーストラリアといった先進国のほか、新興国も含まれている。

とはいえ、長く続いたグローバルの低金利環境により、国債などによる収益確保が難しくなっているのも事実だ。そこでここ数年は、プライベートエクイティ分野における投資の拡充を目的とした資産運用会社の設立をはじめ、投資対象資産・地域を拡大し、収益確保に努めていると千松は話す。

さらに現在、投資部門として、そして千松自身も担当として力を注いでいるのがESG投資だ。

02
SDGsに対する認識を新たにした投資

農林中央金庫では2030年中長期目標として、「サステナブル・ファイナンスの新規実行額10兆円」を掲げている。投資部門でも毎年、数千億円規模のESG投資を実施してきたが、中でも千松が実行したSDGs債への投資は、各方面から注目を集めた。

SDGsの17の目標のうち、千松が着目したのが「⑤ジェンダー平等を実現しよう」だった。千松は世界銀行が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンドに対して総額1億米ドルの投資を実施したのだが、これはジェンダー平等の実現を重要テーマにした債券であった。

世界銀行は、グループを挙げて「極度の貧困を撲滅」し、「繁栄の共有を促進」することを目指している。対して農林中央金庫は、2021 年に「持てるすべてを『いのち』に向けて。〜ステークホルダーのみなさまとともに、 農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます〜」をパーパスとして定めている。

両者が掲げるこれらの目標を、持続可能な形で達成していくために優先されるべきことは何か。それはジェンダー平等の実現であり、これこそが社会や未来をより良い方向へと導く原動力となるのではないか。千松は、そう考えた。そこで世界銀行に同債券を発行してもらい、そこに農林中央金庫が資金をあてる形で社内外の調整を進め、今回の投資が実現された。

ジェンダー平等の実現を重要テーマにした債券への投資例は国内ではまだ少なく、世界銀行が発行する本債券への投資は国内投資家では初の取り組みとなった。それでも本債券は、格付機関から「トリプルA」の格付を獲得し、マーケットにおいても好感をもって迎えられ、各企業のSDGsに対する認識を新たにした。

03
持続可能な開発に寄与できる存在へ

千松は本債券への投資に先駆ける形で、「⑥安全な水とトイレを世界中に」を重要テーマとした、アジア開発銀行が発行するウォーター・ボンドへの総額2億豪ドルの投資も実施している。実は一連の投資には、担当としての千松の思いが込められている。

「当金庫は、いい意味で男女平等の職場が実現されています。同じ職種であれば、男性も女性も仕事で求められる水準は同じ。だからこそ私は、女性である自分が投資部門で働く意味・意義とは何かを絶えず考え続けてきました。これからも生活者目線を忘れることなく、『いのち』につながるファイナンスを実現していきたいと思っています」

農林中央金庫は運用資産規模に比して、従業員数が圧倒的に少ない。しかも、中長期的な観点で投資を実行していることから、各担当者が一度に動かす金額も100億円単位と大きい。結果として、国際金融市場に少なからずインパクトを与え、その動向を絶えずモニタリングされる存在でもある。

だからこそ千松をはじめとする投資部門の担当者たちは、その影響力をより良い社会、より良い未来の実現にこそ行使したいと本気で考えている。そのために何をすべきか各自が真剣に考え、チームで徹底的に議論を重ねている。そして農林中央金庫としてできることを着実に実行するとともに、ときには未開の領域にも自ら先鞭をつけることで、国際社会の機運を高めようと努めている。

企業活動そのものが持続可能な開発に寄与する——。農林水産業に根ざす金融機関だからこそ、農林中央金庫はESG投資を通じて自らも手本とされるような機関投資家でありたいと願っている。こうした企業姿勢、不断の努力が、国際金融市場における「NOCHU」の独自性へとつながっているのだ。

04
記者の目
WEB限定

農林中央金庫は、日本屈指の機関投資家であるだけではない。組織内部においては若手登用、女性登用が当たり前の風土、文化が醸成されており、彼ら彼女らによる新しい視点、発想を絶えず現場に導入してきたという点で、革新的な存在だ。

これは若手や女性が働きやすい環境、働きがいのある環境が実現されているというレベルの話ではない。多様な意見を積極的に取り入れることが、より高度な「国際分散投資」を実現させる土台、屋台骨になっていると言えるだろう。

機関投資家が何に投資をするかで、社会や未来が変わる。そう信じればこそ、農林中央金庫は性別やキャリアを問わず個々の職員に大きな裁量を与え、主体的に業務にあたらせる。多様性を生み出さずして持続可能性を追求することなどできないと本気で考えているからであり、まずは社会の前に会社(自社)において、それを実現しようと真剣に取り組んでいるからだ。

機関投資家として、つねに誠実で正しくありたいと努力する企業姿勢。それがグローバルな金融市場において「NOCHU」と親しみと敬意をもって略称され、その動向に絶えず視線が注がれる、ひとつの大きな理由となっている。

農林中央金庫

[ 事 業 内 容 ]農林水産業融資、企業融資、マーケット業務のほか、JAバンク、JAマリンバンクをサポートするコンサルティング業務、リスク管理、システム企画など
[ 資 本 金 ]4兆401億円(2023年3月31日現在)
[ 総 資 産 額 ]94兆5,049億円(2023年3月31日現在、連結)
[ 従 業 員 数 ]3,365名(2023年3月31日現在)

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