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就活前に学ぶ金融講座

②信用金庫・信用組合

地域や顧客に密着した信用金庫

「信用金庫」は、地方銀行とほぼ同様の金融サービスを提供しています。大手の信用金庫のなかには預金残高や営業基盤などにおいて中堅の地方銀行と肩を並べる金庫もあります。
信用金庫が銀行と大きく異なるところは、相互扶助を基本理念とする非営利法人であり、信用金庫法に基づいて設立された協同組織金融機関であることです。

銀行の3大業務とされる(1)預金業務、(2)貸出業務、(3)為替業務を軸に、手形割引をはじめ投資信託や保険の販売といった付随業務を幅広く展開している金庫も少なくありません。個人、法人の会員を対象に金融サービスを提供することが原則ですが、預金は広く一般から受け入れています。融資は会員が対象ですが、貸出総量の20%までは会員以外にも融資を行うことができます。

信用金庫は銀行よりも地域や顧客に密着したサービスの提供を目指し、小まめに顧客を訪問する営業スタイルによって、会員(顧客)の支持を得てきました。信用金庫の営業担当者は「顧客の誕生日や家族構成はもちろん、ペットの名前まで知っている」と言われるような対応によって、個人および中小企業専門の金融機関として重要な地位を築いてきたと言えます。「同じ目線で話ができる」と評価する中小企業の経営者も少なくありません。
2013年からは海外向け融資も一部認められ、取引先の企業が海外に設立した現地法人に対して、直接融資が可能になるなど活動範囲を広げています。

理解のツボ① 信用金庫の会員資格

地縁的な協同組織である信用金庫の会員になるには、(1)営業地域内に居住または勤務している、(2)営業地域内に事業所を有している、のどちらかに該当し、(3)一定額以上の出資(1万円~10万円程度)をすることが必要です。また、事業所は300人以下、資本金9億円以下でなくてはなりません。ただし、会員となっている事業所が成長してその規模を超えた場合は、一定期間(5年~10年程度)融資を行うことができます。業界ではこうした取引を「卒業生金融」と呼んでいます。

小規模企業を支える信用組合

「信用組合」も相互扶助を基本理念とする協同組織金融機関です。こちらは中小企業等協同組合法に基づき設立・運営されています。組合員(会員)になるための条件も信用金庫とほぼ同じ(事業所の資本金は3億円以下)です。

信用金庫との違いは、営業地域がより限定され、経営規模も小さく、地縁的・組合的な色彩がより強いところにあります。信用金庫と同様に(1)預金業務、(2)貸出業務、(3)為替業務を軸に「地域密着型」の金融サービスを展開していますが、投資信託や年金保険などの運用商品を取り扱う組合はあまりありません。預金も融資も組合員を対象としていますが、預金総量および貸出総量の20%以内までは組合員以外と取引することができます。
組合員となっている事業者は信用金庫に比べてさらに小規模なところが多く、顧客とのより密接なつながりをベースにした営業活動に特徴があります。「頼まれれば雑用も引き受ける」といった姿勢が信頼関係の維持につながっているという見方もあります。

地方都市の縮小に立ち向かう

信用金庫や信用組合は会員(組合員)との地縁的な密着が強みであり、営業地域を限定して地元の経済を支えてきた歴史があります。しかし、中小企業や零細企業、商店のなかには時代の波に乗ることができなかったり、経営は順調でも後継者の不在に悩んでいたりするケースも少なくありません。また、少子高齢化による地方都市の人口減少という向かい風も吹いています。
地盤とする地域の過疎化や、地場産業の衰退はそのまま地域に密着している金融機関へのダメージとなりますから、エリア拡大のための提携や統合などが始まっています。銀行よりも地域に密着した小回りの利く金融機関はいつの時代においても必要ですから、新しい時代の金融ニーズにどのように応えていくのかが、個々の組織に問われています。
最近は、同じ県内の4つの信用金庫がローン商品の共同キャンペーンを展開したり、がん検診を受けた会員(顧客)の定期預金金利をアップする取り組みが登場するなど、環境変化に対応した新しい試みやアイデアが生まれています。それぞれの組織のセントラルバンクの役割を担う「中央金融機関」も、地域金融や中小企業金融における課題解決の支援をはじめ、金融業務の補完や経営の安定性確保への支援に力を入れています。

理解のツボ② 中央金融機関

協同組織金融機関には連合組織の系統中央機関があります。全国すべての信用金庫を会員とする「信金中央金庫」は、信用金庫のいわばセントラルバンクとして余剰資金の効率的な運用をはじめ、一時的な資金需給の調整、為替の集中決済、人材育成や中小企業の課題解決支援などを手がけています。また、すべての信用組合を会員とする「全国信用協同組合連合会」も、余剰資金の運用や資金の貸付、為替の集中決済などセントラルバンクとしての役割を担っています。

Point of view

1

信用金庫や信用組合のルーツをさかのぼると、明治時代に誕生した「(旧)信用組合」にたどり着きます。当時の信用組合は農村金融を中心に発展し、昭和に入ってからは中小企業向けの金融機関として重要な役割を果たしました。戦後、その大部分は信用協同組合に改組となり、さらに規模の大きい組織や銀行に近い機能を有する組織は「信用金庫」に、小規模で組合的な色彩が強い組織は「信用組合」として再出発しました。

2

信用金庫や信用組合は従来の“御用聞き”的な営業スタイルから、コンサルティングを中心とする課題解決型の営業スタイルへの転換を進めています。そのため、各金庫(組合)では新しい地域金融を担う人材育成に力を入れています。

3

信用金庫や信用組合は営業地域がそれほど広くないことから、引っ越しを伴う異動がほんどありません。それも就活の見落とせないポイントのひとつです。また、それぞれの中央金融機関でも新卒採用を行っています。