第2章
知っておくべき金融ビジネスのポイント
⑧金融持ち株会社と金融グループを知る
1997年に大手銀行の北海道拓殖銀行と、4大証券の1社だった山一証券が破綻したことは、日本の経済界や金融界に大きなインパクトを与えました。バブル経済の負の遺産である不良債権の処理が思うように進まなかった大手銀行は、日本版・金融ビッグバンと呼ばれた金融制度の大改革が進むなか、規模の拡大による経営基盤の強化を目指して、統合による再編に踏み切ったのです。
その背景には、金融の自由化とグローバル化が進んだことで、海外業務を手がける大手銀行には国際的な競争に勝たなければ生き残れないという危機感がありました。さらに、もうひとつの要因として、金融持ち株会社によるグループ化が1998年に解禁されたことも見落とせません。
金融持ち株会社とは、株式の保有によって複数の金融機関を傘下に収め、それらを統括する会社のことです。経営統合によって規模を拡大した大手銀行は、金融持ち株会社を立ち上げてその傘下に入り、関係の深かった信託銀行や証券会社、リース会社、クレジットカード会社、消費者金融会社、資産運用会社などを次々にグループに加えて「総合金融グループ」を形成しました。
なかでも、都銀とも呼ばれたかつての大手銀行数社が母体となっている金融グループは「メガバンク・グループ」と呼ばれ、国内だけでなく、海外にも広く拠点や子会社を持っています。
一方、地方銀行の統合・再編は大手より10年ほど遅れて始まりました。同じ県内や隣接県に基盤を置く銀行が統合して、経営の効率化と規模拡大を目指す取り組みが広がっています。地域特性などを生かしたきめの細かいサービスを提供することにより、メガバンクとは異なる競争力を高めていくことが課題とされています。
そのほか、証券会社、保険会社、リース会社の大手も、金融持ち株会社による金融グループを構築し、傘下に銀行や投資運用会社を持つなど事業領域を拡大しています。