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「四季報」を味方にしよう!
就活生ならどこを見るべき?

四季報。存在は知っているけれど小さい数字がいっぱいで……と敬遠している人も多いのではないでしょうか? こちらでは、四季報とは何か、見るべきポイントなど、四季報ビギナーの就活生に役立つ四季報の基本をご紹介します。

「四季報」は会社四季報だけじゃない!

四季報と言うと、東洋経済新報社出版の「会社四季報」を思い浮かべる人も多いと思いますが、実は「四季報」自体は出版物の一形態を表す言葉です。
まず「四季」というくらいですから四半期に一度、つまり1年に4回刊行される出版物。一般には新しいデータや資料がまとめてズラリと載っているハンドブックのようなものを指します。
今回ご紹介するのは、金融・株式に関する四季報です。これは株式投資をする人が、株選びの参考にするためのハンドブックです。

●会社四季報

まずその代表格は、上記の東洋経済新報社の「会社四季報」。ただ「四季報」と言った場合、多くはこちらを指します。
会社四季報は二二六事件のあった1936年に創刊された、長い歴史を持つ雑誌です。全上場企業を網羅し、各企業のプロフィールや株式にかかわるデータ、そして業績予想が詳細に紹介されています。100人以上の業界記者を擁し、そのコメントや予想には会社四季報のオリジナリティが反映されているのも特徴です。また業績予想が2期先まで公表されているのも魅力です。

●日経会社情報

同種の雑誌ではもう1誌、代表的なものがあります。それが1979年創刊の日本経済新聞社の「日経会社情報」です。
会社四季報に次ぐ二番手という印象は拭えませんが、投資家には一定数「会社情報派」も。金融情報ベンダーのQUICKが金融機関のアナリストたちの予想を集計した「QUICKコンセンサス」が掲載されていることが大きな特徴であり、魅力です。
株取引の参考にするならばどちらを選んでも大差があるわけではありませんが、会社四季報はより多くの人が読むので、より市場に影響力が強いと言うこともできます。

●ダイヤモンド『株』データブック※休刊

ダイヤモンド社が発行する「ダイヤモンド『株』データブック」という雑誌もありますが、現在は休刊となっています。

●就職四季報

株・金融以外の「四季報」と言えば、就活生の皆さんにはおなじみの「就職四季報」もありますね。こちらはまさに、就職先としての各会社のデータを揃えたものです。
エントリーや試験の情報、給与体系や福利厚生など「その会社を受けたら/働いたらどうなるの?」ということのまとめがズラリと載っています。ただし会社四季報とは違い、経済界の中でその会社の位置づけや、ビジネスの現況という部分はあまり載っていません。

ただのデータブックではない! 四季報は競馬新聞に似ている!?

レジャーでもある競馬と、株式投資を同列に語ることはできませんが、一面では四季報は競馬新聞に似ているとも言えます。競馬新聞のレースの欄を見ると、馬ごとの詳細なデータや戦績、そして専門家の予想が載っていますよね。そして各社の競馬新聞の一番の違いは「誰が予想しているか」です。
四季報でも、客観的なデータの部分は、企業の発表やアンケートが基本になるので共通ですが、業績の評価や予想などは記者やアナリストが取材を通して行うもの。評価や予想には、その雑誌の特徴や独自性が表れます。

つまりただのデータブックではなく「その本オリジナルの評価」も読めるということです。1冊の本の中で同業他社を比較するのも大切ですが、同じ会社を別の本がどのように評価しているのかを見るのも面白いものですよ。
詳細なデータを読み解き、俯瞰して未来を見通さなければいけない場合「四季報」という形態はとても便利なものなのですね。データを読み解くことに慣れないうちでも「ここの専門家がどんな予想をつけているか」や「どんなコメントをしているか」だけでも読んでみると興味深いものです。

就活生におすすめ「この数字を見るべし!」

いよいよ会社四季報や日経会社情報を見てみよう! 
しかし、どこを見ればいいのでしょうか。雑誌はとにかく分厚いし、細かい数字の羅列でよく分からない……。
もちろん四季報ビギナーのうちはすべての数字を見る必要はありません。見開き2ページに4社分のデータが掲載されています。自分の注目する1社をまず見てみましょう(こちらでは東洋経済新報社「会社四季報」のレイアウトをもとにご説明します)。

●会社のプロフィール

まずは大まかな会社のプロフィールに注目です。会社四季報は見開き2ページに4社分のデータが掲載されていますが、各社の欄の右端に社名とプロフィールが記載されています。太字で記載された会社名の周りには、【設立年】や【上場年】が、そして「特色」が40字程度で説明されています。ここにはその企業の事業の姿が凝縮して説明されているので必読です。

●【連結事業】って何?

また【特色】の横には【連結事業】という項目もあります。ここも重要です。大企業の場合、本体以外に子会社が存在することがほとんどです。この連結事業の項目でまとめられているのは、そのグループ全体としてのビジネス展開です。どのような事業を行っているか、そしてそれがどの程度儲かっているかが分かります。例えば自動車メーカーは、本業の自動車事業のほかに、自動車ローンやリースなど金融サービスを展開している場合がほとんどです。 その場合、

【連結事業】自動車90(8)、金融5(25)、他5(6)

といったように、展開している事業の名前と数字が並びます。これは「事業/売上構成比率(売上高営業利益率)」を表しています。つまり「自動車90(8)」が表すのは、この会社の売上の90%は自動車事業によるもので、自動車事業の売上に対しての営業利益率は8% 。この会社の事業は、規模では自動車が圧倒的に多いけれど、利益率は金融事業のほうが高いという状態ですね。

●誰が株を持っているの?

もうひとつビギナーにも分かりやすい項目として【株主】欄があります。会社四季報では、筆頭株主から10位までの大株主が記載されています。
大株主としてよく見られるのは、自社(自己株口)や、創業者、信託銀行などです。信託銀行の名前で保有されている株式は、主に機関投資家から預けられた資本によるものです。日本の信託口なら日本の機関投資家が、海外の名前なら外国人機関投資家が保有していると考えられます。
また【株主】欄の下部には株主構成が載っています。

<外国>○○%<投信>○○%<浮動株>○○%<特定株>○○%

というような形で記載されています。外国での人気や、投資信託のプロたちの評価、特定株(創業者や役員、利害関係者)がどの程度あるのかなどからも、会社のありようがうかがえます。端的に言えば、株式会社は「株主のもの」です。受けたい企業が「誰のもの」なのかは、やはり知っておきたいところです。

●儲かっているの?

就職活動をするにあたっては、企業イメージや華やかさ、学生からの人気などに注目する人も多いと思います。しかし「儲かっているのかどうか」という視点も大切です。そのために、投資家たちが指標にする四季報ほど強い味方はありません。
まず具体的な数字が見られるのが各企業の枠内の、下段左端の欄にある【企業業績】です。売上高、営業利益、経常利益、純利益、1株利益、配当が過去5期分、そして先の予想がズラリと記載されます。

会社四季報では未来2期分の予想が発表されます。「予」とついている数字が予想です。「会」とついているのは、その企業による業績予想ですので、東洋経済新報社の見解と、会社の見解を比べてみるのも興味深いものです。

●財務は健全?

各企業の枠の中央あたりには、財務と財務指標が記載されています。ここは企業の健康状態が分かる欄です。総資産、負債、自己資産などといった資産面の情報と、それをもとにした財務指標が載っています。

財務指標の代表格は「ROE(株主資本利益率)」と「ROA(総資本利益率)」。ROEは純利益÷株主資本(%)。株主から預かったお金をどれくらいの利回りで運用できているかという数字です。ROEが高いほど、効率的な運用ができているということになります。一般的には10~20%程度であれば優良企業とも言われます。ROAは純利益÷総資産(%)。これは負債も含めた、その会社のすべての資産をどれだけの効率で運用できているかという指標です。こちらは、5%あたりが優良企業の目安となります。

●投資家視点に立ってみると…

四季報はもともと投資家のための参考書です。株価の情報も多く載っています。各ページ上部に載っている「月足長期チャート」長期での株価の変動を表したグラフです。過去4年間の動きをビジュアル的に見ることができます。
またチャートの右脇には「PER(株価収益率)」という指標の予想と実績が記載されています。これは端的に言えば、その企業の株の「コスパ」を表します。計算式は

株価 ÷ 1株当たり純利益(EPS)

株価は低いけど利益が多い企業ならPERは低くなり「この企業の株は割安だ」と考えられるわけです。ただし、一概にPERの低い株を買えば儲かり、高い株は儲からないというものでもありませんので、なぜその数字なのかという部分を考える必要があります。

●業績予想を読み込もう!

そして一番読みやすく、また違いが分かりやすいのが、会社のプロフィールの左横の今季の業績見通しの部分です。ここは小見出しつきのコメントの形で書かれていますので、数字で頭がこんがらがることもありません。ぜひ目を通しましょう。

大切なのは「その記者の視点である」ということです。同業種の企業での評価の違いを比べてみたり、また会社四季報と日経会社情報のコメントの着目点の違いを調べたりすると、より理解が深まります。
就職ともなれば、企業はとても長い付き合いになる相手です。人気や年収、イメージが先行しがちですが、やはりごく冷静に健康状態や現在の状況、ビジネスのスタイルなどを研究したいものです。シビアな視点を持つ投資家たちに愛される四季報は、きっと強い味方になってくれますよ。