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財部 誠一ジャーナリスト

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<第3回>2016.08.24
東京オリンピック経済効果

南米初となったリオデジャネイロ・オリンピックは開催前、悪評紛々だった。

ルセフ大統領は政府の不正会計問題で職務停止となり、前代未聞、大統領不在のオリンピック開催となった。景気は不況色を強め、強盗や銃撃は日常茶飯事。オリンピック会場の建設は大幅遅れ。不安要素ばかりにメディアの関心は集中したが、ふたを開けてみれば、旅行者や観戦者が世界中からやってきて、ムードは一変、リオは大いに賑わった。そしていつものことながら、世界最高のアスリートたちの熱闘は人々を熱狂させた。

だが残念ながら、リオ・オリンピックはブラジル経済の起爆剤とはならなかった。ブラジルは今年、2年続けてのマイナス成長が避けられない状況だ。つまり、目に見える形でのオリンピックの経済効果はなかった。もっとも経済効果とは「GDPを押し上げる効果」であり、ブラジル経済の落ち込みがオリンピックの経済効果を上回るほどひどかったのかもしれない。

そこで気になるのは4年後の2020年にやってくる東京オリンピックだ。果たしてどれほどの経済効果が期待されているのだろうか。官民を挙げてさまざまな予測が発表されているが、2015年暮れに公表された日銀のレポートが分かりやすい。日銀は経済効果が生まれる経路を次のふたつに整理している。

① 訪日観光需要の増加
② 関連する建設投資の増加

過去3回のアテネ(ギリシャ)、北京(中国)、ロンドン(イギリス)大会をみると、オリンピック招致決定後は、海外からやってくる旅行客の増加ペースが明らかに上がっている。

この数年、円安や観光ビザ発給の条件緩和で訪日外国人観光客は急増しているが、東京へのオリンピック招致が拍車をかけている。日銀によれば2020年には外国人観光客数が現在の年間2,000万人から3,300万人へと増加し、それに伴う個人消費の上積み額は毎年1兆円弱になるという。しかし政府は今年3月に外国人観光客数の目標を新たに4,000万人としているから、「訪日観光需要の増加」はさらに上放れる(うわっぱなれる)可能性もある。

では「関連する建設投資の増加」はどうか。具体例をみていこう。まずはメインスタジアムとなる青山の新国立競技場や選手村などの建設、日本武道館、代々木第一体育館などオリンピック関連施設の改修工事。それに加えて、高速道路などのインフラ整備や民間のホテル建設などもあり、2020年までに総額10兆円の建設投資が行われるという。これにより日本のGDPは毎年0.2~0.3%程度押し上げられるとの計算だ。

これは微妙な数字である。



東京オリンピックの経済効果は間違いなくあるものの、この程度の経済効果では、日本のGDP全体を確実に押し上げるかといえば、残念ながらそうではない。日本経済はいまデフレから脱却するのか、デフレに舞い戻るのかの瀬戸際にある。2015年から2016年上半期まで実質ゼロ成長が続いているというのが現状だ。いま問われているのは、東京オリンピックの経済効果をどこまで広げ、増大させることができるかだ。

このままでは文字通り“東京のオリンピック”になってしまう。東京には再開発プロジェクトが目白押しだ。例えば山手線の品川―田町の間にJR東日本の新駅をつくるプロジェクトがある。単に新しい駅をつくるのではなく、新しい街をつくりだそうという壮大な計画だ。築地市場の豊洲移転も大きな話題になるだろう。新宿駅西口・渋谷駅・池袋駅西口でも大規模な再開発が進んでいる。そのほか東京国際フォーラムなどオリンピックを機に改修や建て替えが行われる施設も数多くある。オリンピックで東京の景色は様変わりするだろう。世界における東京のバリューは一段と輝きを増す。しかしそれは東京一極集中をさらに加速させてしまうだけだ。

東京オリンピックを東京だけではなく日本全体のためのオリンピックにするには、どうしたらいいのか。訪日する外国人観光客に日本全国を回遊してもらえるようにするためのアイデアはないか。皆さんにも、ぜひ考えてほしい。

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Profile

財部 誠一
Takarabe Seiichi

慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。BS11の経済番組「財部誠一の異見拝察」に出演中。経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し、取材レポート「ハーベイロード・ウィークリー」で取材したばかりのレポートを提供、多くの経営者やビジネスマンに好評を得ている。オフィシャルサイトでは「経営者の輪」、「借金時計」などを展開。近著に「京都企業の実力」「“再生か死か”~組織が変わる瞬間~」、「“メイド・イン・ジャパン”で勝つ経営」など。