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財部 誠一ジャーナリスト

ジャーナリスト・財部誠一が解説、
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<第2回>2016.08.10
三菱東京UFJ国債入札資格返上

「財務省は13日、国債入札に有利な条件で参加できる特別資格の指定から三菱東京UFJ銀行を15日付で除外すると発表した。邦銀の指定が取り消しとなるのは初めて」

7月14日の日経新聞はこう伝えたが、三菱東京UFJ銀行が5月に特別資格を返上したいと財務省に願い出て、それを財務省が認めたというのが事の経緯だ。

国の歳入不足を補うために財務省が発行するのが国債だが、積極的に国債の入札に応募する金融機関が欠かせない。早い話が、財務省がいくら国債を発行したいと言っても、それを引き受けてくれる金融機関がいなければ、思い通りに国債を発行することなどできない。それを支えているのが国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)だ。三菱東京UFJ、みずほ、三井住友のメガバンク3行や野村證券、大和証券、外資系証券会社などメンバーは22社。



特別参加者は発行される国債の予定額の4%以上を引き受けなければならないという義務を負うが、そのかわり財務省から直接、情報を取れるなど優遇措置を受けられる。「国債の安定消化」に協力してくれるなら、何かと便宜を図ろうという“持ちつ持たれつ”の関係だ。金融機関がその資格を返上するというのは、穏やかではない。よほどの理由がなければそんなことはしない。

その背景になっているのが、日銀の「マイナス金利」政策への銀行界からのブーイングだ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の平野信行社長は、4月の講演会で日銀のマイナス金利政策を公然と批判していたし、地方銀行にとっては、融資の需要はないまま、住宅ローンの借り換え事務が増えるだけだと、マイナス金利政策を「迷惑千万」と猛反発している。

それだけに、三菱東京UFJ銀行の特別資格の返上は「日銀のマイナス金利政策」に対する抗議ではないかとも思えたが、あくまでもグループ内の事業効率化のためというのが、三菱東京UFJ銀行の公式見解である。実際、グループ内には三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の2社も特別参加者の資格をもっている。ならば国債の引き受け証券会社の2社に集中して、三菱東京UFJ銀行は銀行本来の業務に戻り、効率アップを図ることにしたという。



実際、三菱東京UFJ関係者にあたってみると、このアイデアは数年前から検討を始めていたとのことで、日銀のマイナス金利政策が資格返上の直接的な理由ではないと答えている。たしかに債券の引き受け業務というのは証券会社の仕事である。銀行はあくまでも「投資家」として証券会社が引き受けた債券を購入するというのが、本来の姿。同じグループ内に特別参加者の資格をもつ証券会社が2社もあるのだから、銀行本来の姿、つまり「投資家」に戻るということは、筋は通っている。

ただ三菱東京UFJ銀行は「投資家」として損失の出るような投資はできないと、釘を刺すことも忘れなかった。



「マイナス金利水準の国債には原則投資しない」



これまで銀行は金利低下(国債価格の上昇)局面で多額の売買益を上げてきた。融資のニーズが増えなくても、国債の自己売買益で利益を稼いできたが、それも限界に達しつつあるということなのだ。いずれ金利が反転上昇し、国債価格も下落リスクが急激に高まってきた。それを象徴するのが、三菱東京UFJ銀行の特別資格返上なのだ。

ほかのメガバンクが追随するようなことになれば、国債の安定消化に支障をきたす事態にも発展しかねない。現状ではその心配がすぐに具体化する状況にはないが、財政再建を前に進めることなしに、無尽蔵に国債発行は続けられないことを政府に対しても突きつけた格好だ。今後もほかのメガバンクや政府の金融政策の動向など、注視していく必要があるだろう。

このように、ひとつのニュースの背景に複雑な事情が絡み合っているのが金融業界だ。 金融を志望する学生は、こういったニュースに接した際、表面的な理解でとどめるのではなく、その背景や影響などをしっかりと確認し、自分なりの意見をまとめておく必要があるだろう。

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Profile

財部 誠一
Takarabe Seiichi

慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。BS11の経済番組「財部誠一の異見拝察」に出演中。経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し、取材レポート「ハーベイロード・ウィークリー」で取材したばかりのレポートを提供、多くの経営者やビジネスマンに好評を得ている。オフィシャルサイトでは「経営者の輪」、「借金時計」などを展開。近著に「京都企業の実力」「“再生か死か”~組織が変わる瞬間~」、「“メイド・イン・ジャパン”で勝つ経営」など。