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大災害時代の損害保険会社の使命

#業界研究

2023/09/13

大規模な自然災害が増えています。大雨や台風、大雪のたびに「過去最大クラス」といった報道を耳にすることも珍しくなくなりました。私たちには異常気象時代を生き延びていくための知恵が求められているようです。そんな時代に今まで以上に脚光を浴びているのが損害保険。広域災害への損害保険会社の取り組みはどのようになっているのでしょうか。

日本は今や、広域災害大国

例えば列車事故や多重交通事故などは、局所事故と呼ばれます。

死者が多数出るような大事故であっても、電話が通じないとか、断水するとか、近隣医療機関の機能が低下するといった事態は考えづらく、影響はあくまでも局地的なものに収まります。

それに対して広域災害は、文字通り広い地域に甚大な影響が及びます。電話やネットが遮断され、水やガス、電気も使えず、近隣の医療機関も同じような被害を受けているようなケースです。

広域災害の代表例は、やはり大地震。あの東日本大震災や熊本地震を思い出す方も多いでしょう。近年特に増えている大雨や雪の被害も広域被害で、西日本を中心に死者200人を超えた「平成30年7月豪雨」は記憶に新しいところです。

災害に見舞われたときに最も優先すべきは、命を守ることである点は言うまでもありません。本人、家族、親戚、友人、学校の仲間…。まずは人命第一です。

その次に直面するのが、生活再建という大きな問題です。

建物が倒壊したり、家財が流されてしまったりして、せっかく築いてきた生活基盤がゼロになった場合、立て直すのは容易ではありません。

政府の「被災者生活再建制度」をはじめ、各自治体でも支援制度は用意されてはいますがそれだけでは十分とはいえず、やはり自助努力で事前に備えておくことが重要となります。その際の最も頼れるパートナーが損害保険であることはいうまでもありません。

広域災害ならではの課題に挑む

広域災害で頼りになる保険といえば、まず地震保険が挙げられます。地震保険では、地震はもちろん、噴火や津波による損害も補償されます。

また、火災保険も頼りになります。火災保険では、豪雨などによる被害、いわゆる“水災”についての補償も受けられます。

広域災害が増えてきた今、地震災害も火災保険も、生きていく上での必須の備えとなりました。

ところで、ここで一つの疑問が発生します。巨大地震が発生し、被害が広範囲に及んだ場合、損害保険会社でその保険金をちゃんとまかなうことができるだろうか、というシンプルな疑問です。損害保険会社も民間企業ですから、想定を大幅に超える保険金の支払いが発生すると、経営が怪しくなりかねませんね。

でもご安心を。

実は民間の損害保険会社だけでは困難なほど多額の保険金の支払いが発生した時に備えるため、政府が“再保険”という仕組みによってその負担を分担して引き受けているのです。そのため阪神淡路大震災や東日本大震災が発生したときも、保険金は円滑に支払われました。おかげで生活再建に向けて大きな力を得た被災者も多かったことでしょう。

ただし、広域災害では被災者の数が莫大なものになるという点は、現在も保険会社にとって大きな負担となっています。保険金支払の受付や被災状況の確認、支払業務など、とにかく膨大な作業を保険会社が担わなくてはなりません。しかもどれもミスの許されない、シビアな業務ばかりです。

しかし今、この悩ましい問題に対して損害保険会社各社は、テクノロジーの活用によって対応しようとしています。

最新テクノロジーの活用で道を開く

例えばドローンの活用は、その一例です。

自然災害で家屋損壊などの被害が発生した場合、これまでは調査員が現地まで飛んで損害査定を行うのが一般的でした。しかし自然災害の増加とともに迅速な保険対応が求められるようになった今、人手に頼る調査では限界があります。

そこで損害保険会社では、調査のためにドローンを導入。国もその対応を後押ししました。これによって従来は人が容易に立ち入れなかったような被災地での調査も簡単になり、被害状況の確認はスムーズになりました。

ドローンの活用がハード面からのアプローチとするなら、ソフト面からのアプローチとなるのが業務プロセスのDXです。例えば受付後の書類の作成を自動化したり、現地調査員の適正配置や調査後の書類への検印といった煩雑な業務を簡素化したり。これは結果として被災者が保険金を受け取るまでの期間を短くすることにつながり、早期の生活再建を促すことになるでしょう。

さらにはアプリを操作するだけで早期に保険金のめやすがわかるシステムや、損壊した建物の損害額をAIが自動で算定するシステムなども開発されています。スピーディーな保険金支払を通じて生活再建を後押しする、非常に有意義な取り組みといえます。

まとめ

最新テクノロジーを保険業務に取り込むことは、「保険(Insurance)」+「テクノロジー(Technology)」の「インシュアテック(InsurTech)」と呼ばれています。DX推進にインシュアテックは欠かせず、先進テクノロジーのスタートアップと提携するなど、損保業界の取り組みは今後さらに加速することでしょう。

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