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注目記事2023.2.27

再生可能エネルギー普及を後押しする地方銀行。

ウクライナの紛争が長引き、日本も物価などの影響を大きく受けるようになりました。特にエネルギー価格の大幅な上昇は私たちの生活を直撃。さらに冬場の電力逼迫も、エネルギー問題の深刻さを印象づけます。再生可能エネルギーへのシフトは、待ったなしの状態です。

カーボンニュートラルに舵を切った日本

日本の主なエネルギー源は、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料です。

これらは限りある資源であることに加え、地球温暖化の原因となるCO2を排出するという悩ましい問題を抱えています。

世界に目を転じてもCO2排出量は、約210億トン(1990年)から約332億トン(2018年)と増加を続けてきました。温室効果ガスの排出量削減は、地球規模での課題となったのです。

こうした状況の中、2016年に発効したのがパリ協定。世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスを取ることなどで、国際的な合意が取られました。

それを受けて日本政府は2020年に、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言。さらに2021年には、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを目指すとしました。

これらを実現するためにはエネルギー分野の取り組みが不可欠です。太陽光や風力を利用した再生可能エネルギーの利用促進は社会および産業界の大きなテーマとなりました。

資源の少ない日本はこれまで、化石燃料のほとんどを海外に依存してきました。

エネルギー安定供給の観点からも、国産エネルギー源である再生可能エネルギーの普及を図っていくことは、非常に意義のあることと言えます。

地方銀行自らが再エネ発電に乗り出す

「カーボンニュートラル」へと大きく舵を切った日本。その後押しをすると期待されているのが地方銀行です。

地方銀行が再生可能エネルギーに取り組むアプローチ方法としては、2つ考えられます。

1つが自ら再生可能エネルギー発電を手がけるケースで、もう1つが取引先の再生可能エネルギー発電をファイナンスによって支援するケースです。

前者の自ら再生可能エネルギー発電に取り組むケースとしては、北都銀行(秋田県)や第四北陸銀行(新潟県)、山陰合同銀行(島根県)などがあります。地元企業と共同で電力会社を設立するほか、子会社を通じて取り組む事例もあります。

従来、銀行が事業会社に出資する場合は原則5%までにとどめなければならないなど、厳しい制限がありました。しかし2021年に施行された銀行法改正によって、そうした規制は大幅に緩和。地域金融機関では事業の多角化が一気に進みました。

特に「地方創生など持続可能な社会構築に資する業務」を行う子会社の設立が容易になったことで、再生可能エネルギー発電の子会社・関連会社設立の動きに弾みがついたのです。

長引く低金利下において銀行の経営環境は厳しくなる一方です。思うように収益は上がらず、収益基盤の強化は喫緊の課題となっています。収益の多角化につながる新ビジネスの創造は重要なテーマと言えるでしょう。

地方銀行が自ら再生可能エネルギー発電に取り組むことは、銀行自身の成長にもつながる施策であり、今後さらに広がっていくことが期待されます。

融資を通じた再エネ発電への支援

2つめのケースである取引先の再生可能エネルギー発電への支援については、中国銀行(岡山県)などが取り組んでいます。

エネルギーの地産地消につながる再エネ事業ですが、事業者にとって課題となるのがノウハウ不足と資金不足です。

特に資金不足については地域金融機関の支援が必須となるものの、金融機関側の事業性判断・リスク判断についての経験不足から、なかなか進まないケースが多かったようです。そのため“補助金ありき”で事業を進めるケースもありました。

しかし地域密着型の事業へのファイナンスは、地方銀行の使命。地域経済の活性化にもつながります。そうした判断から再エネ事業者への融資に踏み切る地方銀行が増えてきました。

地域主導の脱炭素は、政府も掲げるテーマです。地域に密着する金融機関が地域の脱酸素を支援し、ひいては地域経済の活性化に貢献することに、大きな期待が集まっています。

まとめ

金融機関の普遍的な使命とは、事業への支援を通じて、取引先・地域・金融機関の3者がWin・Win・Winの関係をつくりだすことです。地域での再生可能エネルギー事業への取り組みは、その好例。今後の広がりに注目したいところです。