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注目記事2022.12.21

ユニークな支店名から時代を読み解く

あなたの銀行口座は、何銀行の何支店にありますか? 銀行名はすぐに答えられても、支店名は即答できない人がいるかもしれません。何か取引があればネットで、現金が必要になったらコンビニのATMでという時代には、銀行の支店のあり方も変わってきています。

リアル支店は街の看板だった

ここ数年、銀行の支店の統廃合が進んでいます。例えば三菱UFJ銀行では2023年度までに、店舗数を2017年度末比で約200減らす方針です。これに伴ってATMの撤去も増えており、不便さを感じている人も多いようです。

背景にあるのはネット銀行の伸びや、キャッシュレス化の浸透。インターネットバンキングを上手に利用すれば、日常的な取引で銀行の支店に足を運ぶ必要はなくなってきました。とはいえ、急に現金が必要になることもあるわけで、リアルな店舗が減ることへの潜在的な不安・不満は多いようです。

ところで銀行の支店と言えば、その街の一等地にあるのが普通でした。

駅を降りてぐるっと見渡せば、おなじみのロゴを掲げた銀行の支店が2つ、3つと目に飛び込んできたものです。そのわかりやすさから駅前支店が待ち合わせ場所に利用されることもあるなど、地域の人々に親しまれるランドマークでもありました。

支店の統廃合により、それらがなくなっていくことに寂しさを感じる人は少なくありません。「駅前の風景が変わった」という声も聞かれます。

街の最も目立つ場所にあるのが銀行の支店ですから、その維持にかかるコストも決して少なくはなく、コストダウンのために統廃合もやむを得ないところです。

果物や鳥、神様の名前の支店も

一般的に銀行の支店は、その地名にちなんだ支店名がつけられています。「××町支店」や「△△駅前支店」という名前ですね。地元の地名に即しているだけに、親しみやすいといえます。

もっとも、地名に紐づけられているために「東京都庁第二本庁舎出張所」「成田空港第2ビル出張所」「イトーヨーカドー木場店出張所」といった極めて長い支店名もありました。

一方でユニークな支店名が多いのが、ネット銀行です。

例えば楽天グループが運営している楽天銀行には「ジャズ支店」「ロック支店」「リズム支店」「ドラム支店」「エンカ支店」など、音楽に関する支店名が使われています。

三井住友信託銀行とSBIホールディングスの共同出資会社である住信SBIネット銀行では支店に「イチゴ支店」「ブドウ支店」「ミカン支店」と、フルーツの名前をつけています。

「すずめ支店」「はやぶさ支店」「ペンギン支店」など、鳥の名前を支店名としているのは日本初のネット銀行であるPayPay銀行です。同行はジャパンネット銀行という名前から行名を変更しましたが、その際に鳥の名前の支店名がそのまま引き継がれました。

縁起のよさそうな名前を支店名にしているのが、大和証券グループの大和ネクスト銀行です。「エビス支店」「ダイコク支店」「ビシャモン支店」と、日本の神様にちなんだありがたい支店名が並びます。

ユニークなのはイオン銀行です。利用者の誕生日に合わせて、誕生石または誕生月の花を支店名に採用しています。例えば1月生まれの人が口座を開いたら「ガーネット支店」または「デイジー支店」、12月生まれなら「ターコイズ支店」あるいは「シクラメン支店」という具合です。

こうした支店名が並ぶだけでも柔らかい印象で、親しみやすさを感じます。銀行といえば堅苦しいイメージの代表格でしたが、そのイメージも薄れてきます。 「イチゴ支店に口座を作っちゃった」「あら、おいしそう」なんていう会話も楽しいですね。

支店名は時代の変化の象徴

なぜネット銀行ではこうしたユニークな支店名が多いのでしょうか。

理由としてはリアルな店舗をもたないために、地名に縛られず、自由に支店名をつけられるということが挙げられます。そのため親しみやすくて覚えやすい支店名を採用するケースが増えているのでしょう。

そもそも銀行に支店名が必要なのは、銀行協会加盟金融機関には「銀行名+支店名+口座番号」が必要だと定められているからです。そのためリアルの店舗をもたないネット銀行も、支店名が必須ということに。

かといって地名をつけるわけにもいきませんから、せっかくつけるならばユニークな名前を、という流れになったようです。

ネット銀行にはリアルな店舗がないのですから、本来なら無理に支店名をつける必要はありません。あえて言えば、法律で決められているからわざわざ支店名を用意したということでしょう。

キャッシュレス化が浸透するにつれて今後、ネット銀行はさらに普及していくと考えられます。支店名についても、進化する現実に法律が追いついていけない典型といえるかもしれません。

最後に

かつて旧・東京三菱銀行と旧・UFJ銀行の合併によって三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)が誕生した際、「振込用紙に“ミツビシトウキョウユーエフジェイギンコウ”と記入するのは手間がかかりすぎる」という批判があったものでした。紙の振込用紙に手書きで必要事項を記入することがまだ一般的だった時代のことです。ネットバンキング時代の今は、そんな声も聞かれません。これも時代の変化を感じさせるエピソードです。