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注目記事2022.10.26

世界の金融街と、日本の地位

「金融街」──。あなたはこの言葉からどんなイメージを思い浮かべますか。「金融街で働く」と聞くと最前線で活躍する金融プロフェッショナルの姿が連想されるでしょう。金融に関心のある人すべてにとっての憧れの街と言ってもいいかもしれませんね。

ウォールストリートは世界金融の中心地

金融街とは、証券取引所や中央銀行を中心に、銀行や証券会社などの金融機関の本社・本店が集中している一帯のことを言います。

高層ビル群が建ち並んでいる場合が多く、当然のことながらその国や都市の中枢とも言える立地となります。

金融街は世界各地にあり、その代表的な存在がアメリカのウォールストリート(ウォール街)やイギリスのシティ、香港などです。

特にウォールストリートは世界の金融の中心的な役割を果たしてきました。そのものズバリの『ウォール街』『ウォール・ストリート』という映画も公開されるなど、常に脚光を浴びてきた街です。

ちなみにウォールストリートには、本当にウォール、つまり壁があったというのは有名な話です。

アメリカ建国よりも前、現在のニューヨークのあるマンハッタン島に最初に入植したのはオランダ人でした。その入植地の内外を隔てる壁が建設されたことからウォールストリートという名前が残りました。壁を建てたのはオランダ人を先住民から守るためという説もあるようです。

存在感を高める中国の金融街

ウォールストリートに次ぐ世界2番目の金融街とされるのがイギリスのシティです。正式名称は「シティ・オブ・ロンドン」。つまりロンドン市の一区画のことで、スクエアマイルと呼ばれることもあります。

シティは英文では「the City」と定冠詞が付きます。ニュアンスとしては「シティと言えばここ」というもの。シティこそロンドンの起点であるという意味が込められています。

ちなみにウォールストリート同様、シティにもかつては壁が存在していました。紀元前にこの地に侵入したローマ人が築いた城壁のことで、この壁の内側に整備された集落がシティの原型です。

ウォールストリートもシティも、壁に縁があるというのは興味深いところですね。

そして世界3番目の金融街が香港です。ただし最近では中国の存在感が急激に高まっていることから、香港人従業員が流出し、中国人移民が主導権を取りつつあるなど、先行き不透明なところがあります。

その香港と並んで存在感を高めている金融街が中国・上海の陸家嘴(りっかし/中国語読みでルージャーズイ)。中国の国家戦略による金融貿易エリアで1990年代から開発が始まりました。

世界で最も高いビル10棟のうち5棟が中国にあり、3棟が陸家嘴にあるとされています。超高層ビルが建ち並ぶさまはまさに壮観で、躍進する上海を象徴するエリアとなっています。

「国際金融都市・東京」として復権を目指す

さて、日本の金融街と言えばどこでしょうか。東京・中央区の兜町です。日本初の銀行や東京証券取引所の前身などが誕生したことから“日本のウォールストリート”とも呼ばれてきました。

そしてかつて世界3大金融街と言えば、ウォールストリート、シティ、兜町のことでした。

それが国際金融センターとしての競争力を示す指数では、現在、世界9位とされています。香港や上海はもちろんのことシンガポールにも抜かれ、すぐ下の10位には中国の深圳が迫ってきています。

金融街としての兜町の力は明らかに落ちており、その姿は近年の日本の衰退ぶりと重なるようです。

今やアジアの国際金融センターとして名前が挙がるのは香港や上海、シンガポールであり、かつての日本の姿は見る影もありません。

背景にはあのバブル崩壊以後の日本経済の低迷に加え、法人税率の高さや英語が公用語として通用しないことなども指摘されています。

こうした地盤沈下ぶりを踏まえ、東京都では「世界に冠たる国際金融都市の地位を取り戻す」として「国際金融都市・東京」構想を打ち出し、さらに「構想2.0」へとバージョンアップするなど、復権に向けた取り組みに力を入れています。

兜町はこの「国際金融都市・東京」構想で重要な役割を担うことから東京圏国家戦略特区として位置づけられ、再活性に向けた動きが活発となっています。

先にも触れたように香港が民主化運動弾圧の影響を受けて金融センターとしての魅力を失いつつあるとの指摘もあり、その受け皿として日本の地位が向上するのではとも期待されています。

まとめ

世界情勢が目まぐるしく変わる中でも、各地の金融街の重要性は今後も変わることはないでしょう。日本がじりじりと存在感を失ってきたのは非常に残念なことですが、今後の復権にはぜひとも期待したいところ。その原動力となるのは、言うまでもなくこれからの金融業界を支えていく若い皆さんです。