金融機関がリードしていくSDGsの取り組み
新聞やテレビ、ネットニュースなどメディアで“SDGs”の文字を見かけない日はありません。胸にカラフルなSDGsバッジをつけたビジネスパーソンも多数目にします。SDGsは今やすっかり身近な存在になったようです。このSDGsと金融機関のかかわりについて改めて考えてみます。
残念ながら日本は周回遅れ?
そもそもSDGsとは、国連加盟193カ国が2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げられた17の目標と169のターゲットのことです。2015年の国連サミットで採択されました。
日本国内で盛り上がってきたのは、つい最近のような印象がありますが、実は2016年には政府にSDGs推進本部が設置されるなど、数年前から本格的な取り組みが行われてきました。
ただし世界的な目で見ると、日本の取り組みは決して先進的なものとは言えないようです。
2022年6月に発表された「Sustainable Development Report 2022」によれば、世界のSDGsランキングで日本は19位でした。2016年以降の動きで見ても2017年の11位を最高位に、15位から19位の間を上がったり下がったりしているのが日本です。
“失われた30年”“没落国家”など自虐的に言われることの多い最近の日本。せめてSDGsの分野だけでも世界のお手本にとは思うものの、なかなか願ったとおりにはいかないようです。
なぜ日本ではSDGsへの取り組みが遅れているのでしょうか。企業のトップがこの領域に対してあまり関心を持っていない、横並び意識が強いために先行的な取り組みをしづらいなど様々な理由が指摘されています。中には「欧米に比べて日本は周回遅れ」という厳しい意見もあるほどです。
SGDsを単なるバズワードで終わらせないために、今まで以上に強力に推進する必要があります。
リーダーシップが期待される金融機関
前述のようにSDGsには17の目標と169のターゲットが設定されています。サステナブルな企業と呼ばれるためには、このすべてを達成しなければならないという錯覚をもたれそうですが、決してそんなことはありません。できるところから始めればいいのです。
自社の得意な分野を見つけ、そこでどんな貢献が可能かを検討することが、SDGsを始める第一歩となります。
とはいうものの、多くの企業にとってSDGsは初めての取り組みであり、十分な知見やノウハウもなければ、マンパワーも不足しています。特に中堅・中小企業にはそんな余裕はないでしょう。どうしても外部からのサポートが必要となります。そこで期待されているのが金融機関の支援です。
あらゆる業界のあらゆる企業と接点を持っているのが金融機関の強みです。しかも投融資という手段を通じて大きな影響力を発揮することが可能です。まさに経済界・産業界のインフラとして確かな存在感を放っています。
特にサプライチェーンを通じた影響力は圧倒的です。例えば自動車業界なら、完成車メーカーに働きかけてSDGsに配慮した事業活動を行っている部品メーカーから優先的に調達するという方針を打ち出せば、膨大な数の部品メーカーがSDGs推進に本腰を入れるでしょう。
このようにSDGs推進において強力な力を発揮するのが金融機関。「周回遅れ」と言われる日本の立場を逆転させるためにも、金融機関のリーダーシップには期待が寄せられています。
脱炭素化を金融面から支援
金融機関によるSDGsへの取り組みの一例としてご紹介したいのが、国際協力銀行による人工構造タンパク質製造事業への支援です。これは日本のSpiber株式会社を通じて、子会社である米国法人Spiber America LLCが実施する人工構造タンパク質素材の製造事業に必要な資金を融資するものです。
Spiberが開発した人工構造タンパク質素材は、植物由来の糖類を主原料に使用し、微生物による発酵プロセスにより製造されます。そのため脱炭素化・環境負荷軽減に資すると考えられます。人工構造タンパク質素材は持続可能な社会の発展に資する次世代の日本発基幹素材として注目されています。特にアパレル分野においては、カシミヤやウールなどの高級素材と比較して、将来的にGHG排出量や水の使用量、また海水の富栄養化など、様々な環境へのインパクトにおいて削減できる可能性があります。
国際協力銀行は今後も、金融面からの支援を通じて、日本の産業の国際競争力の維持・向上や社会課題解決に貢献したいとしています。
まとめ
財務諸表に表れない非財務情報が企業価値に大きな影響を及ぼすようになった今、ESG経営は重要な経営課題の一つです。SGDsはそれに直結する取り組みですから、金融機関の及ぼす影響や果たすべき役割はますます重要になっていくでしょう。企業とともに持続可能な社会を構築していく、大きなやりがいが味わえるはずです。