なぜ人気? 海外不動産への投資

ここ数年、海外の不動産への投資が人気です。ブームと呼んでもいいかもしれません。日本国内のマンションや一戸建てさえ高嶺の花なのに、海外不動産と聞いてもピンとこない人も多いでしょう。しかしその背景を探っていくと、“なるほど”と納得できる点がありました。
「大家さん」として賃貸住宅を経営
海外不動産でも特に人気なのが、アメリカです。「アメリカに不動産を持つ」と聞くと、あなたはどんなイメージを抱きますか。
ニューヨークあたりの高層マンションに住むエグゼクティブの暮らしだったり、ハワイのコンドミニアムで過ごす優雅なリゾートライフだったり。
もちろんそれらも不動産を持つことには変わりありません。しかしここ最近人気を集めているのは、ごく普通の一戸建て住宅を所有するというものです。
もちろんアメリカの住宅ですから、“普通”といっても日本とは比べものにならないほど広くて立派。庭も、余裕でバーベキューができるほどです。それでもアメリカでは特に高級住宅というわけではありません。価格的にも日本円で3,000万円ぐらいからです。
エリアもテキサス州やジョージア州といったアメリカ南部、東部の州が中心です。一戸建てと言っても、自分が暮らすためではありません。あくまでオーナーとして所有するだけ。それを賃貸として貸し出し、家賃収入を得るというスキームです。
日本でもワンルームマンション投資が話題になりましたが、基本は一緒。つまりアメリカに一戸建てを購入し、「大家さん」として人に貸して、家賃収入をえるわけです。
多くの場合、家賃の回収や物件の管理、補修などは現地の管理会社に委託します。そのため「大家さん」でありながら実際の物件は一度も見たことがないというオーナーがほとんど。入居しているアメリカ人のテナントも、「大家さん」が日本人であることを知りません。
アメリカの経済成長力に期待
なぜアメリカ不動産への投資に人気が集まっているのでしょうか。大きな理由の一つに、アメリカ経済の成長力が上げられます。
少子高齢化で人口減社会となった日本に比べて、アメリカは依然として人口が増加中。コロナ禍にあってこそ経済成長にブレーキがかかりましたが既に2021年前半にはコロナ前の水準に戻り、2021年を通して実質GDP成長率は前年比+5.7%という高い水準となりました。
経済成長が続けば人々の所得が増えるのは当然のこと。不動産オーナーも確実に家賃収入が得られます。値上げも難しくないでしょう。
こうしたことから日本国内の不動産に投資するよりも高いリターンが得られると期待されています。家賃収入がインカムゲインとすれば、売却益がキャピタルゲインです。
経済成長は自然と不動産の価格を押し上げますから、数年後には購入額より高く売却することができます。低金利が続く日本国内での投資と比べ、大きなリターンが期待されるわけです。こうした高いインカムゲイン、キャピタルゲインの背景には、アメリカならではの不動産事情があります。
実はアメリカでは一つの家を大切に住み継いでいくことが当たり前なのです。当然長く住むにつれて不具合も発生しますし、ハリケーンなどの自然災害で壊れることもあります。その場合もこまめに手を入れ、修繕しながら住み継いでいきます。
日本では築年数が重なって古くなっていくにつれて家賃や売却価格は下がるのが普通ですが、アメリカではむしろ上昇します。築30年と聞くと日本では「古い」という感覚なのに、アメリカでは「まだ築浅」と受け止められます。こうした点が投資対象としての魅力につながっているのです。
競争が激化するウェルスマネジメント市場
節税効果としての魅力もあります。
詳細は割愛しますが、長く住み継いでいくために建物の価格がなかなか落ちないことから、土地と建物に分けて課税することで、高い節税効果が得られるのです(これをコストセグリゲーションと呼びます)。
つまり収入だけでなく、節税面でも魅力があるというわけで、この点がいわゆる富裕層に強くアピールしているのです。
以前にもこのコーナーで取り上げましたが、富裕層をターゲットとしたウェルスマネジメントは金融業界において数少ない成長市場の一つです。メガバンクが富裕層に特化したウェルスマネジメント専任のチームを発足させるなど、多くのプレーヤーが雪崩を打ってこの市場に参入しています。
リスク分散は投資の基本ですから、日本国内に絞った投資には大きなリスクが伴います。海外への投資を上手に組み合わせる上でアメリカ不動産投資は手頃で、かつ節税効果も高い点が評価されているのです。
こうした傾向は今後も続くと見られ、金融各社の競争も激しくなりそうです。

まとめ
アメリカに一戸建てを持つ…投資という面を別にしても、魅力的な響きです。こうした点に憧れて不動産を購入するケースも珍しくないとか。「いつかは自分もアメリカで暮らしたい」という夢を描けるのも、楽しみの一つかもしれません。