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注目記事2022.02.16

18歳成人で、金融のサービスはどう変わる

コロナ禍の中、今年も年明け早々に成人式が行われました。規模を縮小したり、オンラインを併用したりと形式は様々でしたが、成人を祝おうという気持ちは十分に込められたものとなったようです。

成年年齢の引き下げは140年ぶり

ご存じのように“成人”については今年の4月から大きく変わります。現行の20歳から18歳へと、民法の成年年齢が引き下げられるのです。

これは約140年ぶりという見直し。これからは18歳で大人になるわけで、それに伴って様々な変化が起きてくることになります。

既に公職選挙法の選挙権年齢が18歳と定められるなど、18歳になったら国政の重要な判断に参加できるようになっています。世界を見ても18歳を成年年齢とするのが主流となっています。

もっとも日本では大学進学率が55%近くあり、短大や専門学校、高専在学生なども含めれば“18歳でまだ学生”という割合は84%近くにも達しています。

「社会人が5人に1人もいない18歳を“大人”として扱っていいのか」という議論も一方では残っているのも事実です。

ちなみに成人式については、全国の自治体の8割以上が、成年年齢が18歳になっても式典は今まで通り20歳を対象とすると答えています(法務省調べ)。理由としては、18歳で成人式を行うと受験シーズンと重なってしまうから、という答えが最も多かったようです。

対応が分かれる金融業界

さて、成人になる……つまり大人になるということは、保護者の同意なしに自分で判断できることが増えることを意味します。例えばスマホの契約をしたり、アパートの部屋を借りたり。司法書士や公認会計士などの国家資格が必要な職業に就くこともできます。

特に大きいのは、お金にまつわることに関しても自分で判断できることです。具体的にはクレジットカードの作成やローン契約、保険の加入などが可能になります。しかし、この点について金融業界は慎重な姿勢を見せています。

具体的には、メガバンクがカードローンの利用を成年年齢引き下げ後も引き続き20歳以上とすることを決めました。この動きは地銀にも広がっていくと考えられます。

無担保のカードローンはその利用のしやすさから返済能力を上回る借り入れをしてしまうリスクがあり、多重債務につながりかねません。十分な社会経験のない18歳、19歳の若者にそうしたリスクを負わせることへの懸念がこの決断の背景にあるのでしょう。

もっとも「法律が変わるのに対応しないというのはいかがなものか」との意見もあるようです。

一方で、成年年齢の引き下げをビジネスチャンスととらえているのが証券業界です。これまでは20歳未満だと親権者を指定しなければ証券口座がつくれませんでしたが、大手証券会社では18歳でも口座を開設し、取引が行えるようにする方針です。保険会社も18歳から親の同意なしで加入できるようにします。

金融リテラシーの向上が急務

このように、成年年齢に対する対応は金融業界全体としてまだ手探り状態という印象です。問題としては、日本における金融教育が不十分という現状があげられるでしょう。

日本の金融リテラシー教育が遅れているのは事実です。金融広報中央委員会が公表した「金融リテラシー調査2021年」によれば、金融教育を受けた経験のある日本人はわずか7.2%で、アメリカの21%と比べてはるかに低い数字でした。金融リテラシーを問う調査の結果では若い世代ほど正答率は低く、18歳から29歳では正しい回答ができたのは半数以下の42.7%でした。こうした実情を受けて「金融教育を行うべきだ」という声は7割近くに達しています。

金融教育が不十分であるため、概して日本の若い世代の金融リテラシーは低く、それが成年年齢の引き下げが行われてもカードローンの利用などは制限すべきだという考えにつながっているのでしょう。責任ある社会人としてふさわしい金融リテラシーを身につけることが18歳にも求められるのです。

特にFinTech企業が金融の仕組みを大きく変えつつある中、Z世代を中心に従来とはまったく違った形でお金と関わる場面が増えています。新しい金融サービスの普及という点でも金融教育は重要です。

2022年度からは高校の新学習指導要領において家庭科に「投資教育」という資産形成の内容が組み込まれます。日本の金融教育を推進し、日本全体の金融リテラシーの底上げを目指して、日本金融教育推進協会という組織も発足しました。 成年年齢の引き下げは、お金と日本人を見直すきっかけにもなりそうです。

まとめ

「20歳になったら大人」と定められたのは明治時代のこと。江戸時代の男性は15歳に元服して大人の仲間入りをしていました。それを思えば、18歳での成人は決して早すぎるとはいえないかもしれません。ただ、江戸時代とは比べものにならないほど社会は複雑化・高度化しているわけで、金融教育は社会全体の使命といえるでしょう。