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注目記事2021.12.15

どうなる? 金融サービス仲介業

「ワンストップサービス」という言葉は、様々な場面で目にするようになりました。文字通り1ヵ所で必要なサービスがすべて受けられる形態のことで、日用品が一揃い並べられていて、公共料金の支払いやATMによる現金の引き出し、住民票等の発行などが1つの店舗で行えるコンビニは、ワンストップサービスの代表的な存在ですね。

この便利なワンストップサービスが金融業界でも導入されました。それが「金融サービス仲介業」制度です。

顧客の利便性向上につながる

2021年11月1日、画期的な制度がスタートしました。「金融サービス仲介業」です。簡単に言えば銀行、証券、保険会社のサービスをまとめて取り次ぐのが「金融サービス仲介業」。生活者にとっては、まさにワンストップでサービスを受けられる、たいへんに便利な制度です。

しかし期待されていたほど注目されず、実際の参入も2社にとどまりました。やや肩透かし感があったというのが正直なところです。

現在日本にある銀行代理業は約100、株式などを扱う金融商品仲介業は約900、保険代理店は生命保険と損害保険を合わせて約25万。

これまで銀行であれば銀行代理業者、証券であれば金融商品仲介業者、保険であれば保険代理店といったように、それぞれ仲介業として認可・登録が必要でした。いわゆる“縦割り”の状態です。

しかし「金融サービス仲介業」として登録すれば、1社で普通預金や定期預金、住宅ローンを取り次ぐほか、投資信託や債券の売買、定期保険や傷害保険、旅行保険の契約もできます。

もちろん狙いは生活者の利便性向上。顧客の立場で考えられた新しいサービスとして、非常に価値のあるものと言えます。

既存の事業者にとっても新しいサービスを提案できるようになることで、新しい顧客の開拓につながることが期待されています。

想定外に高かった参入障壁

金融領域で、かつてなかったワンストップサービスを提供する「金融サービス業」。金融庁では当初、数百の事業者の登録を見込んでいました。

しかしいざフタを開けてみたら、実際に参入したのはわずか2社にとどまってしまいました。その理由は何でしょうか。

最も大きな原因として考えられているのが、扱える商品の少なさです。

具体的には「商品設計が複雑ではないもの」「日常生活に定着しているもの」など、仲介に際して高度な商品説明を必要としないと考えられる商品・サービスのみに限定されており、カードローンや損失のリスクが発生する恐れのあるデリバティブ、火災保険などは提供できません。

また金融サービス仲介業者が顧客に損害を与えた場合、その責任は仲介業者が負わなくてはならないことになっています。

こうしたことは顧客保護の観点から設けられたもので、一概にマイナスにとらえることはできませんが、参入を検討していた金融系企業にとっては大きな障壁となったのも事実のようです。特に多くの参入が期待されたフィンテック系企業はひとまず様子見の状態です。

貯蓄から資産形成へ、ギアシフトを促す

大きな期待を集めてスタートした「金融サービス仲介業」制度。

「金融サービス仲介業」としてサービスを提供する業者が増え、身近な存在となれば、生活者は複数の金融機関の中から最適なサービスを比較して検討することができるようになるでしょう。それは業者間の適正な競争を促し、ひいてはサービス品質の向上につながると期待されます。また異業種からの参入も想定されていることも健全な競争の激化につながると思われます。

金融庁では「貯蓄から資産形成へ」を掲げており、金融商品の比較検討が容易になる「金融サービス仲介業」制度は、投資への関心を醸成することが期待されています。

例えばショッピングセンターでの買い物のついでに保険ショップに立ち寄り、貯蓄性保険と投資信託、外貨定期預金を比べながら、投資について相談するということが気軽に行えるようになるでしょう。

特に「投資に興味はあるけど、何から始めたらいいかわからない」「誰に相談したらいいかわからない」といったライトな層に対しては強くアピールするはずです。

参入業者が2社だけというのはやや期待外れではあったものの、長い目で見れば魅力あるサービスとして浸透していくのではないでしょうか。

まとめ

みなさんが生まれる前の時代では、コンビニで現金を引き出せるようになるなんてとても想像できませんでした。同じように、家族一緒の買い物のついでにちょっと投資でもという時代がいずれやってくるかもしれません。フィンテック系企業を中心に「金融サービス仲介業」に強い関心を示すプレーヤーは多く、今後に期待したいところです。