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注目記事2021.10.13

日本にも根づくか、ファミリーオフィス

ファミリーオフィスをご存じですか。超富裕層を対象に資産管理などのサービスを提供する“究極のプライベートバンク”です。日本ではほとんどなじみのなかった存在でしたが、ある出来事がきっかけで注目されるようになりました。

プライベートバンクの上を行く

富裕層の増加に伴って、プライベートバンクという言葉もだいぶ聞かれるようになりました。プライベートバンクとは資産額が一定以上の富裕層を対象に、資産管理や資産運用のサービスを提供すること。例えばレストランが特別な個室を用意して、その客のためだけにスペシャルメニューを提供しているようなイメージです。

担当する営業員にはプロフェッショナルな金融知識とサービススキルが必須とされ、富裕層からパートナーとして認められるにふさわしい品格も備えていなくてはなりません。

そのため「金融の世界で仕事をするなら、いつかはプライベートバンクを」と志す人も多くいます。

このプライベートバンクのさらに上を行くサービス、つまり“究極のプライベートバンク”と言われるのがファミリーオフィスです。利用しているのは富裕層の中でもさらに限られた超富裕層。

明確な規定があるわけではありませんが、一般的には100億円以上の資産を保有する同族・一族を対象に投資管理や資産運用を行い、一族が永遠に繁栄できるよう運営されているのがファミリーオフィスです。

ある調査によればファミリーオフィスは欧米を中心に世界に1万社以上が存在し、運用規模は約650兆円にも達するとみられています。

きっかけは「アルケゴスショック」

ファミリーオフィスの歴史はかなり古く、諸説あるものの起源は6世紀ごろにヨーロッパの王族の資産を管理するようになったこととされています。それが19世紀にあのロックフェラー家が一族の繁栄を目指してファミリーオフィスを設置したことで、超富裕層の間に広まっていったと言われています。

日本ではプライベートバンクこそよく知られていましたが、ファミリーオフィスについては秘密のベールに包まれていました。「ほとんど存在しないのでは」という指摘もあったほどです。

それが一気に注目されるようになったのは、「アルケゴスショック」と呼ばれる“事件”がきっかけでした。

2021年3月から4月にかけて日本やヨーロッパの金融機関が多額の損失や損失可能性について発表しました。その原因となったのがアルケゴス・キャピタルとの取引でした。

アルケゴス・キャピタルとは個人の資産運用会社。まさにファミリーオフィスです。このアルケゴス・キャピタルが投資に失敗。その影響が金融機関にも及んだため多額の損失が生まれました。それが結果としてファミリーオフィスという存在を浮かび上がらせたのです。

ファミリーオフィスはヘッジファンド等と比較して情報開示などの規制が緩く、アルケゴス・キャピタルは少ない資金で多額の株式運用を行っていました。そのため損失も莫大なものになったのです。

「金融市場を揺るがす」とまで言われた「アルケゴスショック」でしたが、投資の失敗によってファミリーオフィスが注目されるようになったのは少し皮肉めいています。

超富裕層のための究極のカスタムメイド

プライベートバンクが一般的な富裕層を顧客とするのに対し、ファミリーオフィスは莫大な財をなした一族を対象とするものです。優秀な税理士・弁護士・コンサルタントなどが専任のチームを結成し、一族が永遠に繁栄を続けることを目的に最も適した資産管理を行います。

プライベートバンクのサービスは顧客のニーズに合わせたカスタムメイドですが、ファミリーオフィスはいわばカスタムメイドの究極系、最終形と言っていいでしょう。

一族のあらゆる相談に乗り、時には「ガンにかかった家族を救って欲しい」といった要請にも応え、治療のために手を尽くします。カスタムメイドの究極系と言われるゆえんです。

「アルケゴスショック」をきっかけにファミリーオフィスという存在が知られるようになった日本では、ファミリーオフィスならではの究極のカスタムメイドに注目が集まり、関心をもつ人が増えました。そのため富裕層が銀行や証券会社等を見限り、ファミリーオフィスに乗り換えるのではとささやかれています。

既にファミリーオフィスのサービスを提供する会社も出現。DXを導入した、より利用しやすい形でのサービス提供も始まっています。

まとめ

中国をはじめとするアジアの富裕層の間ではファミリーオフィスが既に浸透し始めており、シンガポールや香港でもファミリーオフィス立ち上げの動きが目立ちます。

今後日本で本格的普及するか、銀行や証券会社など既存の金融機関がどのような対抗措置を打ち出すか注目したいところです。