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注目記事2021.08.11

チャレンジャーバンクの可能性

昨今の金融関連のバズワードの一つがチャレンジャーバンク。皆さんも目にしたことがあるでしょう。チャレンジャーバンクとは自ら銀行免許を取得したうえで、テクノロジーを活用して金融サービスを提供する企業のこと。従来の銀行の牙城に挑んでいく文字通りのチャレンジャーです。その可能性などについて考えてみます。

店舗を持たないスマホ銀行

2021年5月28日、「みんなの銀行」がサービスを開始しました。ふくおかフィナンシャルグループの子会社として設立された同行は、国内初のチャレンジャーバンクとして事業展開しています。

「みんなの銀行」は、口座開設からATM入出金、振込などすべてのサービスがスマートフォン上で完結できます。

立ち上がりは順調で、7月半ばの時点で口座の開設数は約7万件。専用アプリのダウンロード数は約16万件となりました。顧客の約7割が40歳未満と、デジタル機器に抵抗のない世代に支持されていることがうかがえます。

2023年度までに120万件の口座を獲得することが「みんなの銀行」の目標とのことです。

チャレンジャーバンクは既存の銀行のように店舗を持ちません。インターネット、特にスマホアプリを通じたサービス提供に特化しています。

チャレンジャーバンクと似た言葉にネオバンクがあります。ネオバンクは自ら銀行免許は保有せず、システムも既存銀行のものを利用する点が完全に独立した形態で金融サービスを提供するチャレンジャーバンクとの大きな違いです(チャレンジャーバンクは金融プラットフォームであるBanking as a Service を自社開発)。

サービスの形態がほとんど同じため、利用者目線ではチャレンジャーバンクとネオバンクが混同されがちですが、両者の立場にはこのように明確な違いがあります。

銀行に行かずに銀行のサービスを利用したい

「みんなの銀行」の親会社である福岡銀行を例に取ると、来店客数はこの10年間で3割減少し、コロナ禍でさらに1割減少したそうです。一方でインターネットバンクの利用は2.4倍に増えています。金融業界に限らず、こうした「デジタルシフト」はどの産業でも顕著です。

ここから見えてくるのは、「銀行に行くのは面倒だけど銀行のサービスは利用したい」という生活者の声。

時間や場所に関係なく、スマホで簡単に送金や振込などができてしまう便利さに慣れると、もはや営業時間内に銀行の支店に駆け込んで列をつくって並ぶなど耐えられません。こうした考えを突き詰めれば、銀行のサービスが利用できるなら別に銀行の店舗にこだわる必要はないということです。

これは何となくUber Eatsに似ているような気がしませんか。「飲食店まで行くのは面倒だけど、おいしいものは食べたい」というニーズに応えるのがUber Eats。料理をちゃんと届けてくれるならお店の人に出前してもらう必要はないというわけです。

他の業界からの金融サービス参入も顕著になりました。○○Payなどの決済サービスに代表されるように、フィンテック企業がこれまで銀行が担っていた領域に進出してきています。

人口減社会となった日本。今後、特に地方では人口減少の流れはさらに加速するでしょう。こういった状況に強い危機感を抱いたことが、福岡銀行が「みんなの銀行」を設立する理由となりました。

欧州では早くも淘汰の時代に?

チャレンジャーバンクは実際の店舗を持たず、口座の開設もネット上で行えます。つまり人口減の進む地元にこだわることなく、全国から新規顧客を獲得できることになります。

店舗を持たないこと、システムをクラウド上に構築することなどから、運営コストを低く抑えられるというメリットもあります。

さらに大きな強みが、優れたユーザーインタフェース(UI)、ユーザーエクスペリエンス(UX)。デザイナーやエンジニアが徹底的に磨きをかけたデザインは非常に使いやすく、利用者の獲得に力を発揮するでしょう。

今後日本においてチャレンジャーバンクは増えていくでしょう。東京きらぼしフィナンシャルグループでは2022年の開業を目指して準備を進めており、みずほフィナンシャルグループも新銀行開業を目指しています。

海外では、特にヨーロッパでチャレンジャーバンクの勢力拡大が進んでおり、群雄割拠の様相すら呈しています。既に淘汰の時期に入ったという指摘もあるほどです。

いずれにせよ、これからの日本でもチャレンジャーバンクの存在は既存の銀行にとって大きな脅威となっていくことでしょう。

まとめ

チャレンジャーバンクに限らず、テクノロジー系の新しいサービスはスピードが決め手。ここ2、3年で日本のチャレンジャーバンクでも雌雄がはっきりするかもしれません。その頃には私たちの日常生活でも、スマホでの決済が当たり前になっているでしょう。既存の銀行との棲み分けがどうなっていくか注目したいところです。