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注目記事2021.06.09

アノマリーって何だろう

あの浅田真央さんは、左足からシューズを履き、左足からリンクに入ったとか。いわゆる“験担ぎ(げんかつぎ)”です。

勝っている間は部屋から土俵までの道順を変えない力士など、スポーツの世界にはこうした験担ぎにこだわる人は案外多いようです。

実は金融の世界にも似たようなことがあります。それが“アノマリー”です。

市場関係者に警戒される「ジブリの呪い」

もちろん、験担ぎはアスリートだけに限りません。

とんかつを食べて“勝つ”、キットカットで“きっと勝つ”、五角形の鉛筆で“合格”など、スポーツや受験の験担ぎを思い出す人も多いでしょうし、五円玉を身につけて“ご縁がありますように”と素敵な出会いを願う人もいるでしょう。

もちろん、どれも科学的根拠はありません。それでも広く浸透している験担ぎがあるのは、先行き不透明な将来に対する不安の裏返しなのでしょうか。

金融の世界でも似たようなものがあります。特に多いのが株や投資の世界。有名なのが「ジブリの法則」「ジブリの呪い」と呼ばれるものです。

ジブリとは皆さんご存じ、あの『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』のスタジオジブリのこと。絶大な人気を誇るこのジブリのアニメは時々テレビの映画枠で放送されます。皆さんも一度はご覧になったかと思います。

ところが、これらジブリ作品が放映されると放映日以降、最初の取引日に東京市場の為替相場で円高が起こり、株価が下落することがかなりの確率で発生しているのです。そのため「ジブリ作品が放送されると株価が下がる」と投資家には恐れられています。

心温まるジブリ作品なのに投資家は肝を冷やしている──そんな興味深い現象が起きているのです。こうした「ジブリの法則」のような現象は「アノマリー」と呼ばれています。

社長が腕組みをしていると…

「アノマリー」とは簡単に言えば、理論的には説明できないけれどなんだか法則がありそうなこと。

とんかつを食べれば試験に勝てるという根拠はまったくなく、浅田真央さんが素晴らしい演技を披露できたのは、ご本人の努力以外のなにものでもありません。それでも「験担ぎのおかげで勝てたのかも」と聞くと、何となく信じてしまいます。

金融の世界も同様で、何となく頼りにしたくなる現象があり、それらが「アノマリー」です。

例えば、日本には昔から「ニッパチ」という言葉があります。これは2月と8月は小売店や飲食店などの商売の売上が落ちるので景気が低迷し、株式市場も閑散とするというものです。「セルインメイ」という言葉もあり、これはアメリカの「Sell in May」に由来するもの。つまり5月に売って、株価の下がる夏に買いなさい、という格言です。これも「アノマリー」の一種と言えるでしょう。

比較的新しいアノマリーとしては、企業のウェブサイトで社長が腕組みしていると株価が下がるというものです。これにも根拠はないのですが、社長が腕組みをしていると高圧的な印象となってマイナスのイメージにつながるのではと指摘されると、何となくそうかもしれないと思ってしまいます。

合理的な根拠が考えられる場合も

超常現象などを、さも本当のように解説した本のことを「トンデモ本」と呼ぶことがあります。アノマリーを集めた本なども、そうした一種のように言われることが少なくありません。市場のアノマリーの大半は存在しないと指摘する経済学者もいるようです。

しかし、中には必ずしもデタラメとは言い切れない面もあるようです。例えば、「ジブリの法則」にも一定の根拠があるとされています。ジブリアニメがテレビで放送されるのは「金曜ロードショー」、つまり金曜の夜であることがほとんどです。そして毎月第1金曜日の夜は、原則としてアメリカの雇用状況に関する調査が発表されます。

雇用統計は重要な経済指標の1つですから、結果が相場に反映されるのは当然のこと。これが「ジブリアニメが放送されると株が下がる」という“呪い”として受け止められているのです。日本のことわざ「風が吹けば桶屋が儲かる」に通じるような展開です。決して“こじつけ”と簡単に片付けられるとも言い切れないようです。

いずれにせよ、今ではアノマリーは経済用語の1つとして市民権を得るようになりました。

「今度の試験問題、何となくヤマが当たりそう」「それってアノマリーだよね」そんなふうに日常会話でさらっと使ってみても面白いかもしれません。

まとめ

かつて「不確実性の時代」という言葉がありました。変化が激しく、コロナ禍の先行きが見通せない現代も不確実性が高いのは事実。アノマリーのことが気になるのは市場だけの話ではないかもしれません。けれど就活は不合理な予測やカンには頼らず、堅実に進めたいものです。