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「茶色の靴はNG」ってホント?

#就職

2021/05/19

コロナ禍で定着したのがテレワーク。リモートミーティングでもディスプレイに映る範囲だけ身だしなみに気を配ればOKということで、スーツを着る機会がぐっと減ったというビジネスパーソンが増えました。

これはスーツに限った話ではなくて靴も同様。コロナ禍で革靴需要はずいぶん減ったそうです。今回はそんな“靴”に関してのちょっと気になるお話です。

ロンドンでは、茶色の靴は非礼

数年前の話ですが、イギリス政府の報告書の内容がちょっとした話題となりました。

“ロンドンの金融業界では、茶色の靴を履いて就職面接に臨むと不採用になってしまうかも──”

そんなドキッとするようなことが報告書に書かれてあったからです。

その報告書では「年配の銀行員の中には今でもビジネススーツに茶色い靴の組み合わせは言語道断と考えている人がいる」と書かれ、茶色の靴を公式の場で履くのは非礼と見なされる、としています。

この背景には上流階級出身者の間で共有されているドレスコードがあるようです。つまり、茶色はエリートの色ではないというドレスコードです。

一方では、上流階級のしきたりを知らない低所得層出身者に対する差別だとの批判もありました。

日本でも一般的に金融業界、特に銀行は“無難”であることが尊重される傾向にあり、紺色などの濃い色のスーツに黒い靴が基本とされています。特に新人は奇をてらわず、シャツも白の一択というのが普通でしょう。

不景気な時代を思い起こさせる“茶”

ではなぜ、茶色の靴は避けたほうがいいとされるのでしょうか。

茶色には優しくて穏やかなイメージがあります。うまく着こなせば、とてもおしゃれに見えます。

一方で、実は茶色には“不景気”という印象もあるのです。実際、ファッション業界には「不景気になると地味な色が流行する」という言葉があります。理由は、景気が悪くなると生活防衛意識が高まって長く着られる色が求められるようになるからというもの。

商品を提供する側にも、不況時には失敗を恐れて無難な定番色に集中する傾向があるようです。よくいえば茶色には堅実とか倹約といったイメージがあり、悪くとらえると不景気や貧しさといった印象につながるのかもしれません。

実際、1970年代前半のオイルショックや1990年代のバブル崩壊時にも茶色は流行ったそうです。当時の不況や苦労を肌身で知っている年配の経営者や富裕層は、茶色イコール不景気という実感をもっているため、取引先の銀行員が茶色の靴で訪ねてくるとあまりいい気持ちはしないかもしれません。

言うなればたかが靴の色でそんなリスクを冒す必要はなく、茶色の靴は避けたほうが無難というのも納得できます。

やがてドレスコードフリーの時代へ

以前にもキャリタスファイナンスでちょっと触れましたが、銀行には信用創造という重要な機能があります。

銀行は受け入れた預金の何倍にも相当する貸出を行っています。もし預金者が一斉に引き出そうとすると銀行はとても対応しきれないことになります。しかし実際にはそんな事態はめったに起こりません。これは、預金をちゃんと預かってくれているとみんなが信用しているため。

これが銀行の信用創造です。信用創造機能があるため銀行は預金以上の額を貸し出すことができるのです。

そして、この信用を得るために銀行は立派な建物に店舗を構え、職員もきちんとした服装をして「ここなら預けても安心だ」という印象を与えるようにしています。極端にいえばスニーカーに短パン、茶髪の銀行員だったら、いくら頭脳が優秀だとしても信用できるというイメージとはほど遠いでしょう。

「茶色の靴はNG」という理由も、そう考えれば納得できるかもしれません。

もっとも最近では金融業界にもドレスコード緩和の流れが到来。例えば、三井住友フィナンシャルグループではTPOに合わせて自分で服装を選択する「ドレスコードフリー」を導入し、新生銀行でもドレスコードを撤廃して支店の窓口で接客する行員であっても自由な服装で勤務可能となっています。

この流れの背景にあるのは画一的な企業風土を変革し、従来にない人材を確保しようという狙いです。冒頭のロンドンの例に置き換えれば、堅苦しいドレスコードに縛られた上流階級出身者ばかりでなく、低所得者層出身であっても優秀な人材を確保したいということになるでしょう。

いずれ茶色の靴はNGという“常識”も変わっていくに違いありません。

まとめ

服装は就活に臨む学生の皆さんにとっては悩ましい問題でしょう。現時点ではやはりまだ紺のスーツに黒い靴といった“無難”な装いがいいかもしれません。見た目で減点されかねない無用なリスクは避けて、その上で改めて中身で勝負したいものです。

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