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注目記事2021.04.21

LGBTと金融業界

ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受け入れ)は、今日の企業社会の重要なキーワードの一つ。

外国人やシニア、障がい者など、様々な属性・個性の人がバリアなく一緒に暮らせる社会づくりが進んでいます。もちろん性的マイノリティであるLGBTも同じ社会に暮らす仲間です。

LGBTは見た目には分かりづらいという特徴があるため、あまり取り上げられてこなかったのも事実。そんな中でも金融業界はLGBTに関する取り組みで先駆的だったとされています。

より多様性を認め合う社会へ

今年3月、札幌地方裁判所で示されたある判断が話題となりました。「同性どうしの結婚が認められないのは、合理的な根拠を欠いた差別的な扱いで、法の下の平等を定めた憲法に違反している」という初めての判決が下されたのです。

少しずつではあっても、LGBTを取り巻く社会的な環境が変わりつつあるのは確かなこと。この流れは社会の成熟を示す意味でも喜ばしいことです。

LGBTと同じような言葉にSOGI(ソジ)があります。これは好きになる人の性別を示す性的指向(Sexual Orientation)と、自身が認識する性別を示す性自認(Gender Identity)の頭文字から取った言葉。無意識であってもLGBTの人に対して差別的な言動を取ることは「SOGIハラ」とされて、非難の対象になります。

LGBTへの理解は徐々に進みつつあっても、一方で「SOGIハラ」は依然として残っているのが現実。これから社会に出て行く皆さんを含め、新しい世代の人々がこうした空気を変え、真のダイバーシティ&インクルージョンの社会を実現してくれることでしょう。

先進的に取り組んできた金融業界

日本では13人に1人がLGBTとされています。つまりほとんどの企業、ほとんどの職場で複数のLGBT社員が働いていることになり、決して特別な存在ではありません。しかし日本では最近まで“日陰の存在”のように扱われてきました。

そんな中で金融業界は比較的早くからLGBTを取り巻く環境の整備に積極的だったとされています。

その理由としては様々なことが推測されていますが、一つ考えられるのがリーマンショックの影響。2008年に経営破綻したリーマン・ブラザースの欧州・アジア部門を買収したのが野村證券でした。

これを契機に野村證券は外国人や女性など、従来はマイノリティとされてきた人材を活かすための仕組みづくりや体質変換を余儀なくされました。その一環としてLGBT施策も自然に生まれてきたというわけです。

当時、欧米ではLGBT施策は当たり前のこと。グローバル市場で戦っていく上で組織全体がグローバル・スタンダードに対応していくのは当然のことであり、野村證券も必然的にLGBT施策で先進的な取り組みをするようになったのです。そしてその姿に引っ張られるよう、金融業界全体がLGBTでは先頭を走るようになりました。

また金融機関で働くLGBT社員の個性を尊重し、支援する職場づくりを目指して2006年にLGBTファイナンスという組織が発足。現在は30を超える金融関連企業が参画しています。

こうした動きも金融業界のLGBT施策の先進性を示すものといえるでしょう。

新しいビジネスチャンスとしても

新しい社会課題の解決には新しいビジネスチャンスが生まれます。環境問題はその典型でしょう。もちろんLGBTも同様です。

LGBTカップルは婚姻関係の証明が難しいことから住宅ローンを組むことができなかったり、配偶者向けの保険に加入できなかったりしました。しかしここ数年でこうした状況は劇的に変わってきています。

例えば住宅ローンでは、同性のパートナーと婚姻関係に準じた生活を送っていることが認められれば利用できる商品が登場しています。それも自治体の発行するパートナーシップ証明書も不要という楽天銀行のような金融機関も出てきました。

生命保険でも、保険金の受け取りに同性パートナーを指定できるようになってきました。さらには、マネックス証券ではLGBTパートナーが同じ口座で資産管理を行えるようにするなど、LGBT向けの金融サービスは広がりを見せています。

金融業界がこのようにLGBT向けの商品を積極的に開発・提供することは、多様性を大切にした社会を実現する上で非常に意義ある取り組みといえるでしょう。それが企業としての成長にも結びつくのですから、この分野は今後もさらに伸びていくのではないでしょうか。

まとめ

同性パートナーだと社宅への入居が認められなかったり、相手の父母が亡くなったときに慶弔休暇が認められなかったり。かつての日本の企業社会ではそれが“普通”でした。

しかし今では多くの企業が同性パートナーにも配偶者と同様の福利厚生制度を適用するようになっています。金融業界には今後もダイバーシティ&インクルージョンのリーダーとしての期待が寄せられています。