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注目記事2021.02.17

いよいよ本番! 東証再編のインパクト

日本最大の証券取引所が東京証券取引所、略して“東証”です。あまり関心のない人でも「東証に上場している会社はいい会社」というイメージをお持ちではないでしょうか。 この東証が今、大改革の時を迎えようとしています。それが東証再編。 2021年を振り返ったときの大きなキーワードになるのは間違いないので、ぜひチェックしておきましょう。

「目指せ、東証1部」は過去の話に

東京証券取引所は現在4つの市場に分かれています。これを廃止し、3つの市場へと再編するのが今回の大改革。内容を少し詳しくみてみましょう。





現在の東証の市場体制は次の通りです。

・東証1部
・東証2部
・JASDAQ
・マザーズ

2021年1月19日現在でそれぞれの上場会社数は「東証1部」が2,188社、「東証2部」が475社、「JASDAQ」が704社、「マザーズ」が345社となっています。それぞれの市場の違いをざっくりというと、東証1部や東証2部が「誰でも知っているような大企業や実力のある中堅企業の市場」で、JASDAQやマザーズは「これから成長が期待される新興企業の市場」といえます。仮にこれからあなたがベンチャー企業を起ち上げるとするなら、まずは頑張って成長力をつけてJASDAQやマザーズに上場し、次は会社の規模を大きくして信用力もつけて東証2部を目指し、最終的には東証1部上場を果たして名実ともに一流企業の仲間入り…というのが成功への一般的な道筋となります。

このように、東証のような株式市場に上場すると「上場会社」と呼ばれ、株式を自由に売買できるようになるため大きな資金が調達できます。その資金をバネにして次の成長を目指すのが上場の大きな目的です。また上場には厳しい審査を通過する必要がありますから、上場企業は世間から信用を得ることができ、取引は円滑になって優秀な人材も集まりやすくなります。「息子さんが上場企業に就職したのでご両親が喜んでいる」という話はよく耳にしますね。

ではなぜ今、東証はこの4つの市場を3つへと再編するのでしょうか。

「東証はユルい」という批判を浴びて

今回の変革では従来の4つの市場体制が、次の3つの区分に変わります。

・プライム
・スタンダード
・グロース

「プライム」は国際的に活動するグローバル企業が対象です。世界でも名の通った企業なので、海外の投資家にも魅力的に映るでしょう。「スタンダード」は、中堅企業が想定されています。「グロース」はその名の通り成長が期待される企業。規模や利益がイマイチでも将来が楽しみな企業が中心となるでしょう。この区分の変更は2022年4月に実施される予定です。今回の市場区分変更の理由はいくつかありますが、一番大きいのは「東証1部の企業が多すぎる」ということです。

ここ数年、東証1部の企業は2,000社を超えており、ずっと増加傾向。増えたり減ったりしているのではなく、ずっと増え続けているのです。増え続けているという意味は、一度上場してしまうとなかなか上場廃止にならないということ。つまり東証の上場基準は“ユルい”といえるのです。その結果どうなったかというと、これが理由の二番目なのですが、「東証1部上場企業の質が低下している」という指摘がされるようになりました。つまり東京証券取引所の市場としての魅力が国際的に薄れ、海外からの投資意欲の低下につながってしまっているという見方ができるわけです。こうした状況を改善するために東証の打った大胆な手が市場区分の変更でした。

一時的な救済措置(?)も

上場企業には大きな信用力があります。ですから新しい市場区分が適用されたら、誰だって一番上の市場「プライム」を希望するでしょう。しかしそう簡単にはいきません。今回の市場区分変更の狙いに「企業の質の向上」があるのですから、上場基準はかなり厳しくなるのが当然なのです。そこで「プライム」の上場企業には金融庁と東証が改訂を予定する新たな企業統治指針が適用されます。これは海外市場と遜色ないほど厳しいものになるとみられています。その結果、東証1部上場に属していたのに「プライム」に残れなかった企業も出てくるでしょう。そのダメージはかなり大きくなるとも予想できます。実際に反発もありました。

そこで一時的な経過措置として、東証1部企業の大半が「プライム」に移るのでは、ともいわれています。ただ再編の目的を考えれば、この経過措置には少々疑問もあります。なによりも上場とは目標ではなく、さらに成長を目指すための一里塚に過ぎないはず。成長への努力を怠るとすぐに上場廃止になってしまうというぐらいの緊張感を経営陣に持ってもらうためにも上場基準は厳しくあるべきでしょう。

まとめ

もちろん企業にとって上場がすべてではありませんし、非上場の優良企業もたくさんあります。あえて上場しない道を選ぶ企業も少なくありません。これは就職も同じこと。「上場企業に入社したら将来は安心」ということは決してありません。入社はあくまでスタートなので上場・非上場に関係なく、その先の道は自分で切り拓いていかなくてはならないことをお忘れなく。