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注目記事2020.12.16

路線バスと地方銀行。その未来は?

独占禁止法についてご存じですか。「公平な競争のために、ズルを許さない法律」というようなイメージをお持ちかと思います。この独占禁止法が今年の春に一部改正され、この11月に施行されました。それによって影響を受けるのが路線バスと地方銀行です。さて、その理由は?

地域のインフラとしての路線バスが残るために

今年5月に国会で可決、成立したのが独占禁止法の特例法。10年間の限定で、路線バスと地方銀行が独禁法の適用から除外されます。

路線バス、いわゆる乗合バスは文字通り「住民の足」です。地域の生活を支える基盤なのは間違いありません。しかし人口減が続く地方では、バス便も長年にわたって減り続け、1時間に1本どころか半日に1本という路線もあります。

このままでは、高齢者が買い物に出かけたり病院へ行ったりするのも一苦労。生活の質は大きく下がっていくでしょう。とはいえ、サービスを維持しようとすると事業者の赤字は膨らむばかりです。

そこで誰もが思いつくのが「複数のバス会社が協力して便数や路線を調整する」という方法。しかし、これまでそうした運行調整は独禁法に抵触する恐れがありました。

今回の独禁法の特例法ではこの運行調整が認められることになり、人の多い中心部の路線は重複を避け、かわりに山間部の運行を分担するというような調整が可能になりました。また事業者間で収入を分け合うこともできるようになりました。

地域の交通インフラを維持しつつ、バス会社の経営にも配慮した調整ができるようになるということで、地域の人々にとっては朗報でしょう。

新型コロナで再編の流れが一気に加速

独禁法の特例法の影響を受ける、もう一方が地方銀行です。

独禁法は寡占を取り締まるものですから、これまで金融機関同士の統合や合併には厳しい目を向けてきました。しかし、超低金利や人口減少を背景に地方銀行を取り巻く環境が厳しくなった中、生き残りのためには統合もやむなしということで独禁法の適用除外となりました。

地方銀行同士の合併については、長崎県内の十八銀行と親和銀行のケースがよく知られています。

この両行が統合を発表したのは2016年。背景には他の地方銀行同様、厳しくなる一方の経営環境がありました。しかし両行が統合すると長崎県内での中小企業向け貸出シェアが70%以上にも達することがネックとなり、公正取引委員会から「待った」がかけられることに。要するに大きくなりすぎる、というわけです。

その後、市場占有率を下げるなどの対応を行ったことでようやく統合が認められましたが、その間2年以上も時間がかかってしまいました。そしてこの10月に新たに十八親和銀行が発足したのです。

十八親和銀行の統合について、すったもんだしている間も地方の疲弊は進み、さらには新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けました。もはや生き残りのために経営統合をためらっている場合ではない、むしろ統合を後押ししなければ、という流れに変わってきたのです。

地域経済の“心臓”としての地方銀行の使命

独禁法の特例法が施行されたことで地方銀行の統合は進み、生き残りをかけた再編に弾みがつくことでしょう。

日本には比較的規模の大きい第一地銀と、規模の小さい第二地銀、合わせて100以上の地銀があります。そもそもこの数が多すぎるという指摘もあるほどです。

確かに都市銀行は、バブル経済が崩壊するまで10以上もあったのに、現在は大きく「三菱UFJ」「三井住友」「みずほ」「りそな」の4銀行に集約されました。その間、地銀の集約はほとんど進んでいなかったわけで、その点でも統合から再編という流れは自然なものといえるでしょう。

もちろん人口減少や新型コロナウイルスによる打撃を受けているのは、金融機関だけではありません。企業や生活者のほうがより深刻といってもいいでしょう。従って地方銀行に求められるのは、統合によって自らの経営基盤の強化を目指すだけでなく、地元の企業も一緒に元気にしようという姿勢です。

路線バスを維持する目的が地域の足を確保することにあるように、地方銀行には地域経済の“心臓”を担う志が求められます。

まとめ

第一地銀と第二地銀では待遇等にも違いがあり、それほど一気に経営統合は進まないという見方もあるようです。しかし業界再編は時代の大きな流れ。地方銀行には新しい時代に向けた一歩が求められています。