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注目記事2020.10.14

金融に及ぼす新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスによる影響の一つが「コロナ太り」。自粛期間が長引いたことで運動不足になり、一方自宅での飲み食いが増えてしまったことから、気がつけば体重が増えてしまった、という状態です。皆さんの周囲でも「コロナ太りになっちゃって…」と苦笑いを浮かべる人がいたのではないでしょうか。

実はこの「コロナ太り」、体重だけの現象ではありませんでした。個人の現金・預金も過去最高の太り具合になってしまったのです。

1人10万円のお金はどこに消えた?

日本銀行では四半期ごとに資金循環統計を発表しています。これは家計や法人、金融機関の金融資産・負債の残高や増減などを記録した統計のことです。

9月18日に発表された2020年4月~6月期の資金循環統計によると、個人、つまり家計の保有する現金・預金は前年比4.0%増の1,031兆円となりました。これは過去最高の数字です。

伸び率も過去最大で、現金が4.8%増、預金が4.0%増でした。

日銀の大規模な緩和政策が続く中、預金にはほぼ利息がつかなくなっています。そのためか、預金よりも自宅に現金を保有する、いわゆる「タンス預金」が増えているとみられます。

ただ、最も大きな要因は、新型コロナウイルスによる外出自粛を受け、外でお金を使う機会が大幅に減ったことにあるでしょう。政府による1人10万円の特別定額給付金も、消費ではなくて「とりあえず手元に置いておく」ということになったと思われます。

家計の保有する現金・預金が過去最高ということは、簡単にいえばこれまでで最も多くのお金が家庭にあるということです。

一見すると喜ばしいことのように思えるかもしれません。

しかし特別定額給付金の目的の一つが、消費喚起によって経済活動の落ち込みを最小限にとどめたいことにあったのですから、そのお金が消費に回らなかったのは、あまり良いこととはいえないでしょう。

しぼみ続ける消費活動

ある調査によれば、1人10万円の特別定額給付金の使い道について、圧倒的に多かったのは「生活費の補填」で、2位が「貯蓄」、3位が「国内旅行」でした。ただ女性は「貯蓄」、30歳代も「貯蓄」がトップとなっています。

いずれにせよ、消費者の生活防衛意識の高さが見て取れます。

一方で消費について興味深いのは、穀類に対する支出が増え、外食費が減っていることです。これは、外出自粛によって外食の機会が減り、一方で自炊が増えたことを意味しています。

また、交通費も大幅に減っています。これはリモートワークの拡大が影響しているのでしょう。

このように新型コロナは人々の消費活動に大きな影響を与え、その結果、過去最高の現金・預金という結果をもたらしました。あまり嬉しくない「コロナ太り」です。

なお、別の調査では金融資産に占める割合で、保険がわずかながら減少しています。コロナ禍で収入減となり、保険を続けるのが難しくなった人がいるのではないでしょうか。

影響が長引くようだと、いずれ預金の取り崩しも始まるかもしれません。

銀行にとって最悪のシナリオとは…

さて、新型コロナの影響で最も避けたい事態の一つが、銀行の取り付け騒ぎです。

消費低迷を受けて企業の倒産が連鎖するような状況になると、巨額の不良債権を抱える銀行が出てきます。長い間、ゼロ金利と人口減に苦しんできた地域金融機関はとくに体力が落ちているため、赤字に転落する可能性もあります。

そうなると「あの銀行は危ない」というデマや噂が流れ、人々が預金の引き出しに殺到して本当に金庫が空っぽになってしまいかねません。

もちろんこれは最悪のシナリオです。

とはいえ、マスク不足やトイレットペーパー不足のことを思い出せば、噂やデマに振り回されて騒ぎが起きることは否定できません。

いうまでもなく、銀行には健全性を保つためにさまざまな制約が課され、検査もしっかり行われています。一定額の預金が保護される「預金保険制度」もあるので取り付け騒ぎの防止にもなるでしょう。

とはいえこうした懸念がささやかれること自体が不安な世相の表れ。一日も早いコロナ禍の収束こそ最善であるのはいうまでもありません。

まとめ

長引く新型コロナウイルスの影響。特別定額給付金も消費に回ることは少なく、しっかりとタンス預金に収まってしまったようです。銀行への取り付け騒ぎといった最悪の事態が万に一つも起きることのないよう、一日も早い収束を望みたいものです。