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シャドーバンキングとは何か

シャドー、つまり“影”がつくと何となく裏方の実力者的な印象を与えます。例えば、シャドーキャビネットは野党が内閣を模して設立する政策立案機関。格闘技では仮想の敵を想定して練習することをシャドートレーニングと言います。

では、最近耳にするシャドーバンキングとは?

「影の銀行」と呼ばれる存在について、ちょっと考えてみましょう。

銀行の免許を持たない銀行のようなもの

銀行の基本的な機能とは、預金者からお金を預かり、それを企業などに貸し出して利子を取ることで利益を得ると同時に、その利益の一部を預金者に還元するというものです。シャドーバンキング(影の銀行)が行っていることも、基本的にはこれとまったく同じです。

ではなぜ“影の”と呼ばれるかというと、銀行と同じ機能を持ちながら銀行を対象とした規制の外にあるからです。わかりやすく言えば“銀行の免許を持っていない銀行”ということでしょう。

規制の外にあるため、シャドーバンキングは一般の銀行では認められていない高い金利で預金を集めたり、さらに高い金利で融資したりしています。結果的に、規制が厳しい銀行からはお金を貸してもらえない企業もシャドーバンキングからならお金を借りることができるわけです。

“影の”“裏の”という言葉がつくと、きな臭くて怪しげな感じがしますが、シャドーバンキングは必ずしも“悪”というわけではありません。

なお、シャドーバンキングと似たようなニュアンスの存在に「地下銀行」がありますが、実はこれはまったくの別物。地下銀行は、海外に不正にお金を送る業者のことで、犯罪者のマネーロンダリングに利用されることもあります。基本的に地下銀行は銀行法に違反しており、この点でシャドーバンキングとは異なる存在ですので混同しないようにしましょう。

あのリーマンショックの引き金にも

規制の範囲外にあるため、シャドーバンキングの実態は金融当局も正しく把握できていません。

かつて2000年代後半のサブプライムローン問題の際、シャドーバンキングが注目されました。サブプライム問題とはアメリカで起きた住宅バブル崩壊による金融・経済危機のことで、あのリーマンショックもこの一連の流れで起きています。

このサブプライム問題が表面化する前、シャドーバンキングを活用した多額の資金調達・運用が行われ、それがひいては世界的な金融危機の一因になったとされています。

このようにシャドーバンキングが拡大しすぎると世の中に過度な資金が提供されてコントロールがきかなくなり、経済を混乱させる恐れがあります。

中国のシャドーバンキングが火種に?

さて、シャドーバンキングについて最近特に注目されているのが中国です。

金融システムの規制の外にあるという意味で、意外なところでは「質屋」もシャドーバンキングの一種とされていますが、実は中国国内では質屋の存在感が非常に大きいことが特徴です。

日本に住む私たちは、企業が質屋から事業の資金を調達するなど考えられませんが、実は中国では中小企業が質屋から運転資金を調達しているケースが珍しくありません。当然融資額も多く、不動産を担保にするケースも多くあります。中国では質屋がシャドーバンキングの一角を占める重要な存在となっているのです。

また、中国語で資産運用を「理財」といいますが、高利回りで取引されている資産運用商品は「理財商品」と呼ばれます。高利回りのため「理財商品」には多額の資金が集まりやすく人気が高いのですが、これがシャドーバンキングの資金源になっています。

中国ではこうしたシャドーバンキングの規模が急ピッチで膨張しており、例えば「理財商品」には半年程度の短期で出資者にお金を返さなければならないものが多いことから、融資を受けた業者が業績悪化などで利息を払えなければ、たちまち崩壊してしまう危険性をはらんでいるのです。

もしシャドーバンキングで巨額の“焦げ付き”が発生すれば、中国の金融システム自体が機能不全になりかねません。当然、世界経済も大打撃を受ける可能性があります。

こうしたことから中国のシャドーバンキングに対する視線が厳しくなってきているのです。

まとめ

新型コロナウイルスが世界経済に大きなダメージを与えている中、中国はシャドーバンキングの監視を強化するなど神経をとがらせています。名前こそ“影の存在”を意味しますが、シャドーバンキングが経済に及ぼす影響は非常に大きいものがあります。存在感は“表”と変わらないと言っていいでしょう。

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