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注目記事2020.08.26

マルチフランチャイズ戦略とは?/仕組みと意義

フランチャイズ戦略とはよく耳にする言葉です。特に飲食店やコンビニなどの業界ではなじみ深いでしょう。ところが、最近金融業界で注目されているのが“フランチャイズ”に“マルチ”を加えた「マルチフランチャイズ戦略」という言葉です。その背景や狙いについて、考えてみます。

海外市場へと切り込んでいく

私たちが普段耳にする「フランチャイズ」とは、主に流通業界の用語です。

最も身近な例の一つがコンビニエンスストアのフランチャイズ。独立したオーナーが、お店の看板やサービスや商品を使う権利をもらい、その対価を本部に支払う仕組みのことです。

最大のメリットは、商圏や地域性などが違っても、同じクオリティのサービス・商品を提供できるということ。つまり“ブランド”と似たような価値を発揮するのがフランチャイズという仕組みです。

もちろんこの考え方は国内だけでなく海外での事業展開にも有効で、日本で誕生したきめ細かなサービスや高品質の商品を、他の国でも同様の価値を保ったまま提供することが可能です。

こうした発想を金融業界においても取り入れ、積極的な海外戦略に活かしていこうという動きが見られます。

多様な顧客層にアプローチしていく

先陣を切っているのが三井住友銀行です。

海外、特にアジアでの事業展開に積極的な同行では、既に2014年「アジアでのマルチフランチャイズ戦略の加速」を中期経営戦略の重点テーマとして掲げていました。ここでポイントとなるのが単なるフランチャイズ戦略ではなく、“マルチ”フランチャイズ戦略としたことです。

マルチとは多岐にわたるというニュアンスの言葉。つまりマルチフランチャイズ戦略には、“マルチな顧客=多岐にわたる顧客”にアプローチしていくという狙いが込められているのです。

企業取引だけでなく個人も含めたマルチな顧客層に、インドネシアやベトナムの銀行に出資する(フランチャイズ化)ことで切り込んでいこうとしている三井住友銀行。

同行では、これらを支点にアシア周辺各国に同行の拠点を次々と根付かせていき、日系企業と個人のアジア進出を支えていきたいと考えています。

その具体的なビジョンについて、同行では「アジアに第2、第3の三井住友銀行を誕生させる」とわかりやすい形で示しています。

アジアの高いポテンシャルに期待

金融業界でマルチフランチャイズ戦略が注目されるのは、アジアの潜在的な成長性への高い期待があるためです。言うまでもなくそれは、閉塞感漂う国内の金融市場に対する失望の裏返しでもあります。

人口減などの日本の構造的問題に加えて、金融緩和による超低金利政策によって銀行の収益力は低下。FintechやAIなどデジタル化の波も、組織のスリム化や業務の効率化といった本質的な変革を要求しています。

このような状況において、日本に比べて金融市場が未整備な国も多いとはいえ、成長への高い余地を持つアジア各国は大変に魅力的です。

特にインドネシアは人口や経済規模で高い将来性を誇ることに加え、デジタル化によって大きく変貌しようとしています。例えば固定電話回線は整備されていませんが、それがむしろモバイル端末によるデジタルバンキングの取り組みを促すことにつながっています。

マルチフランチャイズ戦略は、こうした高いポテンシャルを秘めたアジアマーケットに切り込んでいく上で有効な手段です。

アジアの国・地域は、当然のことながらそれぞれにビジネスのプラットフォームや金融市場を取り巻く環境が異なるため、地域に密着したきめ細かな対応が必要となります。法人や個人など、多様なレイヤーに合わせて柔軟に対応することが可能なのがマルチフランチャイズ戦略だからです。 今後の展開に大きな期待が寄せられています。

まとめ

流通用語でもあったフランチャイズという言葉を咀嚼して取り入れ、さらにマルチフランチャイズという独特の戦略へと発展させた金融業界。この柔軟性こそ、金融業界が変わりつつあることの証明といえるでしょう。“攻め”へとギアを上げたことに拍手を送りたいと思います。