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注目記事2020.08.05

成長著しいウェルスマネジメント市場。その醍醐味とは?

貯蓄から投資へ──。その流れが本格化する日本においてウェルスマネジメントの市場も成長を続けています。多くのプレーヤーが参入するウェルスマネジメントビジネスの可能性と、そのやりがいについて考えてみます。

約2%の世帯が2割の富をもつ

最近よく耳にする言葉の一つにウェルスマネジメントがあります。ウェルスとは「wealth」つまり「富、財産」のことで、ウェルスマネジメントは文字通り富を管理すること、転じて富裕層向けの資産管理サービスのことです。

もともとは富裕層向けに欧米で行われていたのがウェルスマネジメントですが、以前は“プライベート・バンキング”という言葉がよく使われていました。次第にいわゆる銀行業務の範ちゅうに収まらない幅広い業務が行われるようになったことから、ウェルスマネジメントという言葉が使われるようになったと考えられます。

プライベート・バンキングより幅広いメニューで、さらに一歩踏み込んだサービスを提供するのがウェルスマネジメント、という理解でいいでしょう。

長い間、日本人は貯金が好きな民族とされてきましたが、小泉政権下だった2003年頃に「貯蓄から投資へ」というスローガンが誕生したことが一つの契機となって、ウェルスマネジメントが脚光を浴びるようになりました。現在では“プライベート・バンキング”という言葉はほとんど使われず、富裕層向けの金融サービス全般をウェルスマネジメントと呼んでいます。

では、富裕層とはどういう人たちのことでしょうか。実は富裕層には公的な定義はなく、一般的には金融資産1億円以上の層を指すようです。

国税庁の調べによると、平成30年の年間の民間給与の平均は441万円(平成30年分民間給与実態統計調査)ですから、普通のビジネスマンの約23年分の年収に相当する金融資産を持つのが富裕層というイメージです。

野村総合研究所(NRI)によれば、1億円以上5億円未満の純金融資産を持つ富裕層は118万3,000世帯、5億円以上の超富裕層は8万4,000世帯と推計されており、その純金融資産総額は約299兆円。つまり全世帯のわずか2%強の世帯が、国内個人資産の2割を保有している計算になります。

この層に対して総合的な資産管理サービスを提供するのが、ウェルスマネジメントです。

巨大市場に内外のプレーヤーが参入

ウェルネスマネジメントそのものについては欧米が先行し、歴史も長いことから、日本国内の市場へも欧米の金融機関が攻勢をかけています。もちろん日本の金融機関も手をこまねいているわけではなく、メガバンクグループや大手証券が積極的にビジネスをくり広げています。

外資系プレーヤーでは、世界有数の総合金融サービスグループであるUBSが、三井住友トラスト・ホールディングスと共同出資でUBS SuMi TRUST ウェルス・アドバイザリーを設立したことが話題を集めました。一方、証券会社では野村證券がウェルスマネジメント業務に特化したスペシャリストを募集するなど、さらなる展開に力を入れています。

最近目を引くのがデジタル世代の台頭に対応したプレーヤーです。ファィナンシャルアドバイザーに頼るのではなく自ら情報収集してオンラインでの投資を行うのがデジタル世代の特徴で、こうした顧客に特化してビデオチャットなどでサービスを提供するプレーヤーも登場しています。

ただ、日本人はやはり対面でのサービスに重きを置く傾向が強く、その点では幅広いサービスを一つの窓口で提供するメガバンクグループが強いともいえます。

例えば三菱UFJ銀行は2019年よりグループ横断的にウェルスマネジメントを統括する組織を構築。資産承継は三菱UFJ信託銀行が、事業承継は三菱UFJ銀行が、株式は三菱UFJモルガン・スタンレー証券がといった具合に、富裕層の課題に対してワンストップでサービスを提供する体制を整えています。

クライアントに寄り添い、信頼を得ていく

前述のように日本人は貯金好きな民族であるとされることから、長年にわたって投資に対しては消極的であるとみられ、ウェルスマネジメントがなかなか定着しない一因と考えられてきました。しかし、富裕層に限ってみれば実は投資に対しては積極的であることがわかっています。

しかもその市場規模は約299兆円と膨大。金融機関をはじめ、多くのプレーヤーがこの市場の有望性に期待してビジネスを展開しています。

ビジネスとしてウェルスマネジメントに携わる上での一番のやりがいは、なんといってもクライアントに寄り添い、一緒に課題を考え、専門家として解決の道を探っていくことを通じて、揺るぎない信頼関係を築いていくことでしょう。

ウェルスマネジメントのスタートは、クライアントの資産について知ることですが、最初から腹を割って資産について話してくれる富裕層などいません。時には遺言作成や遺産管理といったデリケートな話題に踏み込まざるを得ないため、深い信頼関係が前提となります。

そこで時間をかけて人間関係を築き、徐々に現在の運用状況などをヒアリングして問題を明らかにしていくことが、ウェルスマネジメントのスタートとなります。そんな人間力を問われるビジネスであることがウェルスマネジメントならではの面白みです。

まとめ

日本における富裕層、超富裕層の割合は全世帯の約2%。その層に対する総合的な資産管理サービスがウェルスマネジメントです。内外の多くのプレーヤーが参入しており、今後さらなる成長が期待されます。