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注目記事2020.06.03

支店長代理vs副支店長──どっちが上?

銀行の支店長と言えば一国一城の主。規模の大小はあれ堂々たる経営者です。責任が重い分、やりがいも十分。新人にとっても支店長のイスは目標の一つです。

銀行の支店は役職が多い

銀行で“現場”と言えば支店のこと。取引先に最も近い立場で、融資の相談に乗ったり資金運用のお手伝いをしたりと、銀行ならではの業務をこなしています。その支店の責任者が「支店長」です。

銀行では、名前に役職名を付けて呼び合うケースが多いので、「××課長」「××主任」というような呼び方をします。そして、この役職名が多いのも銀行ならではの特徴です。

特に紛らわしいのが「支店長代理」「部長代理」といった“代理”がつく役職です。支店長代理というのは、文字通り支店長の代理を務めるぐらいだからかなり上の立場、ひょっとしたら支店のナンバー2のようなニュアンスもありますね。

実は銀行の支店の肩書きは概ね次のような順序で格が上がっていきます。

一般行員 → 主任 → 係長 → 支店長代理 → 課長 → 次長 → 副支店長 → 支店長

つまり「支店長代理」と「副支店長」では、「副支店長」の方がはるかに格上というわけです。

若手行員の名刺に「支店長代理」と書かれているため、「若いのに出世なさっているんですね!」と取引先に感心されることは、“支店あるある”の一つ。支店長代理が課長代理に敬語を使っているのを見て新人が戸惑うのもよくあることです。

順番から言えば「課長代理」でもよさそうなものですが、「支店長代理」のほうが響きもよくて顧客ウケがいいためでしょうか。本人も「代理」がつくとはいえ「支店長」と記された名刺を持つと気分があがります。

支店長決裁という責任

さて、支店の責任者である支店長は、支店のすべてについての責任を負います。中でも重要なのが、融資の判断です。

取引先の融資の案件は、住宅ローンであれ事業性の融資であれ、すべて支店で検討が行われ、支店長が可否判断を行います。特に事業性融資については支店長が融資の可否を決済できる金額に制限が設けられています。

これを「専決」と呼び、例えば「1億円までは支店長の専決権限」というふうに決められています。

もし金額に制限がないとすると万が一、支店長の判断ミスで失敗が起きた場合、取り返しのつかないことになりかねないからです。そこで、制限以上の融資の案件の場合は本部に稟議が回されて「本部決済」ということになります。

支店長の専決権限は金融機関や支店の規模にもよりますが、数千万円から数億円といったところです。

取引先にとって融資を受けられるかどうかは経営を大きく左右します。場合によっては融資を断られたら会社が傾きかねないということもありますし、設備投資ができなくてせっかくのビジネスチャンスを逃してしまう、ということもあります。

その意味で支店長の判断は取引先の運命を握っていると言ってもいいでしょう。その責任の重さが支店長という仕事のやりがいであり醍醐味です。

感染症によって中小企業を中心に大きな打撃が広がっている中、金融機関のサポートは今まで以上に重要なものとなっています。支店長の判断は地域経済を左右しかねないほど重いものになっていると言えるでしょう。

大きく減っていく、支店長のイス

大きなやりがいのある支店長という仕事。キャリアの目標をそこに置く人が多いのも当然でしょう。

ところが先日、三菱UFJ銀行が2023年度までに店舗数を4割削減するという大胆な策を発表しました。これは支店長の数も4割減るということを意味します。みずほフィナンシャルグループも店舗再編を通じて拠点の削減を進めており、三井住友フィナンシャルグループも拠点数は維持するものの従来型のフルサービス店舗は削減するとしています。

これらの施策の目的は支店運営に伴うコストの削減です。支店そのものの数が減ることに加え、ロボティクスなどによって業務の効率化も急速に進められていくことから、支店内の人員も今後は確実に減っていくでしょう。

すると支店内の肩書きも減ってきて、ひょっとしたら「支店長代理」といった曖昧で勘違いされやすい役職はなくなっていくかもしれません。

まとめ

今後、銀行の支店は数が減っていくと同時に、コンサルティング特化型、法人特化型、デジタル店舗、共同店舗など多様化も進むでしょう。それに伴い支店長の役割も変わってくるかもしれません。とはいえ、地域経済を支える要の存在という本質的な部分は普遍のものでしょう。責任とやりがいの大きさは変わらないはずです。