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企業支援の新しい金融サービス、パーチェス・オーダー・ファイナンスとは

#金融用語

#ファイナンス

2020/05/27

“コロナ禍”による経済への影響は深刻で、特に中小企業の経営は大きな打撃を受けました。その中で企業の経営を支え、雇用、生活を守ることは地域金融機関の大きな使命です。そうした支援を行う際に、新たな可能性を開くと期待されているのが「パーチェス・オーダー・ファイナンス」です。

実力はあるが資金力に乏しい企業の味方

例えば製造業では、ものづくりに取りかかる前に生産設備を整えたり、原材料を調達したりと、大きな資金が必要になります。その資金が回収できるのは注文された製品を出荷した後。つまり、長期にわたって多額の資金を“持ち出し”するしかありません。

体力の弱い中小・零細企業が、その間に今回の感染症のような大きな災害に見舞われたらとても事業を維持することはできないでしょう。

建設業も同様です。建設業では、工事が完成(竣工)しないとお金は回収できません。着工から竣工まで長期間にわたることに加え、多くのマンパワーや機械設備が必要なことから、その間に支払わなければならないお金は膨大です。「施工能力はしっかりしているのに金融調達力が弱い」という建設会社は多く、それらもやはり予期せぬ災害などによる倒産リスクを抱えながら事業を行っています。

こうした事業者に限らず、資金調達はどの企業にとっても大きな課題です。

そこで誰もが思うのが「必要な資金だけでも前払いしてもらえたら」ということ。そうした期待に応えるのが「パーチェス・オーダー・ファイナンス」です。

「注文書」に対して融資を行う

「パーチェス・オーダー・ファイナンス」は略して「POファイナンス®」と呼ばれることが多いものの、これは金融商品名でもあるため、念のためにここでは少々長いですが「パーチェス・オーダー・ファイナンス」と記すことにします。

パーチェス・オーダーとは“Purchase Order”、つまり注文書や発注書という意味です。パーチェス・オーダー・ファイナンスとは、この注文書や発注書に対して金融機関が融資を行うという仕組みです。

この仕組みだと、注文書を担保に融資が受けられるので、新たな生産ラインの構築や作業員の工賃などの資金調達の心配が不要となります。仕入れの際に前払いを要求されても、金策に走ることなく対応ができます。

似たような仕組みにファクタリング(Factoring)があります。これは売掛債権を専門業者に買い取ってもらって、入金を立て替えてもらうというサービスです。これも資金繰りに悩む会社の強い味方として知られています。

パーチェス・オーダー・ファイナンスが「注文書」に対してお金が支払われるのに対し、ファクタリングは「請求書」に対してお金が支払われるという違いがあります。そのためパーチェス・オーダー・ファイナンスのほうが、より手早く資金調達できるというメリットがあります。

受注側の企業だけでなく、発注側にもメリットがあります。特に災害時においても安定的に部品や材料を調達できる体制を整えておくBCP対策の重要性が高まる中、替えの効かない部品を提供するサプライヤーを守ることは、発注者側の重要な使命です。この点でもパーチェス・オーダー・ファイナンスは意義深い仕組みなのです。

スタートアップ企業の支援にも

パーチェス・オーダー・ファイナンスについては、既に中小企業庁が、中小企業の設備投資を支援する「ものづくり補助金」で実施を開始しました。また、横浜銀行や広島銀行、第三銀行などの地方銀行でも取り扱いを始めており、まさに地域密着の金融サービスとして提供されています。

パーチェス・オーダー・ファイナンスが実現できた背景には、電子記録債権の存在があります。

かつての企業間の取引では手形が主流ですが、手形のような面倒な事務手続きや搬送代・印紙代なども省くことができるのが電子記録債権という仕組みです。この電子記録債権を活用することで、受注時点での資金調達を可能にするのがパーチェス・オーダー・ファイナンスです。 つまりパーチェス・オーダー・ファイナンスも、金融とITを融合したフィンテックの一つとなります。

パーチェス・オーダー・ファイナンスは、資金繰りに悩む製造業や建設業はもちろんのこと、スタートアップ企業への支援としても期待されています。

スタートアップ企業は、技術力やアイデアには自信があっても、実際に売上を立てるまでに時間がかかるのも事実。パーチェス・オーダー・ファイナンスはその間の“つなぎ融資”としても機能するでしょう。

まとめ

“コロナ禍”は、テレワークやオンラインミーティングなど、ITの力による新しいビジネスシーンの創出につながりました。変革の大きなきっかけとなったことは間違いないでしょう。同じようにパーチェス・オーダー・ファイナンスも、今後大きく注目されることになるかもしれません。

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