新資格導入?外貨建保険販売資格試験とは

金融業界で活躍する上で必須なのが資格です。切っても切り離せない存在といえるでしょう。そのため、学生時代よりも社会人になってからのほうがずっと勉強している、という人は珍しくありません。でも、お金をもらって勉強させてもらっていると考えれば、とても恵まれているともいえます。
そんな金融に関する資格に新たなものが誕生しそうということで話題になっています。
金融業界でマストの資格とは
金融業界で働く上で必要な資格として代表的なものに証券外務員があります。これは株券や債券といった金融商品の販売・勧誘を行う上で必須なもので、これがなければその仕事を担当できません。その意味で文字通りの必須資格です。
日商簿記検定やファィナンシャルプランナーなどの資格は、これがなければ業務ができないというわけではありませんが、金融業界で活躍する上では持っていて当たり前と考えていいでしょう。銀行業務検定なども基礎力を身につける上で当然の資格といえます。
もしワンランク上の資格を取得してキャリアを開きたいと考えるなら、税理士や公認会計士などの難資格に挑戦してもいいですし、宅建(宅地建物取引士)も業務の専門性を磨く上で価値の高い資格です。
意外なところでは、普通自動車運転免許はマストといえます。外回りの営業となると、都心部以外では車の運転ができなければ自由な移動が難しくなるからです。また、英語関連の資格も重要です。海外取引をする顧客が多いため、グローバル感覚を身につける上でもTOEICなどの英語の資格にはぜひ挑戦したいところです。
外貨建て保険をめぐるある事情
さて、そんな金融業界の資格で新しいものが誕生しそうです。それが生命保険協会の「外貨建保険販売資格試験」です。
試験の開始は2020年10月の見通しで、2022年4月をメドにこの資格を持っていなければ外貨建て保険の販売ができないようにする方針です。
対象となるのは生命保険会社の営業職員のほか、銀行などで保険を販売する代理店の売り手など。受験者数は85万人にも達すると見られ、生命保険会社の職員ならばほぼ全員が受験することを義務づけられそうです。
生命保険業界での新資格導入は約30年ぶりとのこと。この新資格が注目されている背景にはそんなレア感ばかりでなく、外貨建て保険についての“ある事情”が関係しています。
そもそも外貨建て保険とは何でしょうか。
外貨建て保険とは、その名前の通り、払い込まれた保険料を“外貨”で運用する保険商品です。一般的な保険は、保険料(払うお金)も保険金・給付金(もらうお金)も“円”ですが、外貨建て保険は、外貨で払って外貨で受け取ることになります。
例えば、一般的な保険なら「500万円の保険金が支払われる」のに対し、外貨建てだと「5万ドルの保険金が支払われる」といった具合になるわけです。
外貨建て保険の一番のメリットは、割安な保険料で高い運用が期待できることにあります。一方で為替の変動リスクが伴いますから、為替相場次第で想定より低い運用益になり、場合によっては損失を被ることもあります。さらに為替手数料も取られてしまいます。
低金利環境が続く中、高い利回りが見込める外貨建て保険は人気を集めていましたが、実はこうしたデメリットを十分に説明しないまま販売するケースがあったことで、保険会社などに苦情が多く寄せられ大きな問題になりました。
この問題への対策として浮上してきたのが、今回の「外貨建保険販売資格試験」の導入だったのです。
金融業界が一歩前に進むために
金融業界でここ数年強く言われるようになったのがフィデューシャリー・デューティー(Fiduciary duty)という概念です。
これは「受託者が委託者および受益者に果たすべき義務」のこと。平たくいえば、“お客さまの利益を一番に考えなければいけない”ということです。 金融業界に置き換えれば「金融商品購入者に対して果たすべき義務」という意味で、例えば手数料を得るためにお客さまが欲していない商品を売るようなことは謹まなくてはならない、となります。
このフィデューシャリー・デューティーを徹底する観点からも、外貨建て保険に対して苦情が相次ぐような状況は決して看過できることではなく、それが「外貨建保険販売資格試験」の導入につながったとみられています。
試験がどの程度の難易度になるのか、資格導入によって苦情ゼロが実現できるのか、今後のことはわかりませんが、金融業界がより顧客本位の業界となるためにも前向きに受け止めたいところです。

まとめ
これから金融業界に出て行く皆さんにとっては、将来取得すべき資格が一つ増えることになります。もちろん試験は大変ですが、それも自分を磨くためのチャンス。ぜひポジティブに取り組んでいただきたいと思います。