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注目記事2020.03.04

BCPと金融機関の役割

2019年は自然災害の多い1年でした。もともと日本は地震をはじめ、自然災害の多い国です。いかに災害に備えておくかは、この国に暮らす私たちにとっては避けることのできない課題でしょう。近年では、企業が万一の災害に備えBCPを準備しておくことの重要性が叫ばれるようになりました。今回はBCPと金融機関について考えてみます。

事業をストップさせないために

2020年は、阪神・淡路大震災から25年。このコラムをご覧になっている皆さんのほとんどはまだ生まれる前の出来事でしょう。

この大地震によって甚大な被害を受けたある新聞社は、いざという時のために別の新聞社と災害協定を結んでいたために、震災当日の夕刊を発行することができました。いわゆるバックアップセンターや二重化といった考え方にあたる取り組みです。当時はまだBCPという考え方は普及していませんでしたが、現在の見方からすると、これは立派なBCPです。

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、「事業継続計画」と訳されます。

企業が自然災害、大火災などの緊急事態に遭遇したとき被害を最小限に食い止めつつ、事業の継続あるいは早期復旧のために普段からその準備をしておくことがBCPです。自然災害だけでなく、テロや大規模な伝染病などもこうしたケースに相当します。

自然災害などの緊急事態は、文字通り突然発生します。そのときに有効な手立てを打てなければ経営基盤の弱い中小企業などは廃業に追い込まれてしまうでしょう。

それだけでなく、社会的影響力の大きい企業ならば事業がストップすることで社会に甚大な迷惑を与えてしまうことになります。その代表が金融業界です。

金融は経済活動の「血液」といわれますが、血液が止まってしまえば生命さえもストップしかねません。金融業界にとってBPCへの取り組みは大きな社会的責任ともいえます。

「人」の対応がカギを握る

万一の自然災害などの際に金融機関に求められることは何でしょうか。それは「サービスを止めないこと」です。

被災地の人々がATMから現金を引き出せないということになったら、急場をしのぐための食料も買えず生活が成り立ちません。また、あらゆる金融機関がネットワークで結ばれている現代では、被災地の金融機関で決済機能が止まってしまったら、その影響はたちまち被災地以外にも広がり、大きな混乱を招くでしょう。このように金融機関のBCPで大切なことは、まずはなんとしてでも「サービスを止めないこと」なのです。

そのため主要なシステムや通信回線の二重化は当然のことであり、自家発電装置の導入も必須です。こうした点での対応は既に各金融機関も十分行われているようです。

ただ、最も大切なのは「人」の取り組みです。

例えば災害でキャッシュカードや印鑑を紛失してしまった預金者が現金を引き出したいとき、どう対応するか。あるいは、近くに金融機関がない住民にはどう対応するか。さらには、住宅ローンなどの返済が迫っている被災者にどう向き合うか。

大きな災害が発生した際は、このようなイレギュラーな事態への対応が求められます。そうした場合に備え、緊急時には誰が判断を下すのか、決裁権限者と連絡が取れない場合は誰に権限を委譲するのか、といったことを決めておかなくてはなりません。これもBCPです。

もちろん現場で預金者等の対応にあたる要員も、普段とは異なる環境で業務に当たらなくてはなりませんから、まごつくことのないように災害時のマニュアルを整備しておく必要があります。

阪神・淡路大震災当時はBCPという考え方はなかったと紹介しましたが、当時も預金の払い戻しや住宅ローンの返済猶予などに柔軟に対応したことで金融パニックを未然に防ぐことができました。このことからも、システムや通信回線もさることながら「人」の対応が最も重要であることがわかります。

BCP策定をサポートする

さらに金融機関にとって重要な使命があります。それが企業のBCP対応を融資などの面で支援する仕組みです。

例えば、広島銀行では防災・BCP対応支援ローンという商品を用意。取引先の中小企業が災害時にどんな影響を受けるかを診断し、BCP策定のコンサルティング費用などについて融資を行います。

滋賀銀行も同様の商品として「BCPサポートローン」を通して用意。取引先が防災施設等の整備を行うための資金を低利で融資しています。

人口減、高齢化の影響により、地方経済の環境は厳しくなっています。地元経済を支える中小企業が万一の災害で事業を継続できないとなったら、雇用の面も含め地域に大きな打撃を与えることになるでしょう。

BCPを策定しておくことはそうしたリスクに備えるものです。地方銀行をはじめとする金融機関がその取り組みを支えるのは非常に有意義なことです。

まとめ

テロや新型ウイルスなど、社会にとってのリスクはかつてないほど広がっています。自然災害はもちろんのこと、幅広いリスクに備えたBPCの取り組みは、もはや義務といってもいいでしょう。企業のパートナーである金融機関にとっても大きな使命のもとで取り組むべきテーマです。