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注目記事2019.12.18

テレワーク・デイズと金融業界

働き方改革はずいぶんと浸透しました。実現できているかはともかくとして、その必要性や重要性は多くの人に認識されています。そうした流れをさらに推し進めることになりそうなのが「テレワーク・デイズ」。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、ビジネスの世界はこの「テレワーク・デイズ」でちょっとざわつきそうです。果たして金融業界への影響は?

テレワークの3つのスタイル

以前も取り上げたことがありますが、フレックスタイム制や裁量労働制など、時間に縛られない柔軟な働き方が浸透してきました。昭和の時代、長時間労働は働き者の証しとして賞賛されましたが、平成の後期からは長時間労働はもはや美徳ではなく、単に非効率な働き方と見なされるようになったのです。

そして、令和の今は “場所”の拘束からの解放としてテレワーク制度を導入するケースが増えてきています。テレワークとは、ICTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。具体的には次の3つのワークスタイルに分けられます。


(1)在宅型

自宅にいて、パソコンとインターネット、電話等で会社とは連絡を取りながら働く。


(2)モバイル型

客先に常駐したり、移動中を活用したりして、パソコンや携帯電話を活用して働く。


(3)サテライト型

郊外や自宅近くに設けられたサテライトオフィスで、会社と連絡を取りながら働く。


テレワークが受け入れられ始めた背景には、働く人の多様性を大切にするダイバーシティーの考え方が定着したことにあります。

かつては出産・子育てを迎えた女性は仕事を辞めざるを得ませんでした。現代ではこれに介護の問題が加わり、老親の介護のために会社を辞めるケースが目立ちます。

そうした事情を抱えた人たちも、自宅で会社の仕事が続けられるなら退職する必要はありません。企業側にも優秀な人材を手放さずに済むというメリットがあります。働き方改革の切り札としてテレワークが注目されるのも当然のことでしょう。

国民運動としての「テレワーク・デイズ」

このテレワークを“国民運動”として展開しようとする試みが始まっています。「テレワーク・デイズ」というプロジェクトです。これは総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府、東京都が主催するという、まさに国家レベルの取り組みです。

背景にあるのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックです。期間中、首都圏では激しい交通混雑が予想されており、その対策の切り札として期待されているのが“出勤しないこと”、つまりテレワークすることです。これを多くの人にテレワークのメリットを知ってもらう好機ととらえ、渋滞解消と働き方改革推進の一石二鳥を狙って生まれたのが「テレワーク・デイズ」というわけです。

既に2017年より「テレワーク・デイズ」は毎年一回行われており、第1回は約950団体・6.3万人が参加。2019年の第3回は2,887団体・約68万人もが参加して開催されました。

一部の保険会社や証券会社など、金融関連の企業も2019年の「テレワーク・デイズ」に参画しています。とはいえ、その数は決して多くはありません。なぜ金融業界からの参加が多くないかというと、従来から“金融業はテレワークになじまない”とする意見が多かったからです。一体どういうことでしょうか。

金融業界でも一気に進むか

金融、特に銀行がテレワークになじまないとされてきたのは、顧客の財産や所得といった極めて重要な個人情報を預かっているためです。

重要な個人情報を自宅に持ち帰って仕事をすることは情報漏洩や紛失のリスクが一気に高まる点で決して望ましいことではなく万が一、そうした事故が発生したら社会的に大きな非難を浴びることも予想されます。 

また、支店では現金や帳票類を取り扱うため、現場を離れることは困難です。

こういった事情から、働き方改革の中で有益とはわかっていても、なかなかテレワークには踏み切れないのが現実でした。国土交通省の調査でも、「金融・保険業」のテレワーカーの割合は16.4%と、製造業、建設業より低い水準にとどまっています。


しかし、2016年に三菱UFJ銀行が週に一度の在宅勤務が可能というテレワーク制度を導入したのを皮切りに、三井住友銀行、あおぞら銀行が自宅勤務やサテライトオフィス勤務のテレワーク制度をスタート。地方銀行もこの流れに従おうとする動きを見せています。

このように少しずつではあるものの、金融業界でも確実にテレワーク導入の気運が高まっているのは確かです。そこに一気にテレワークの普及・定着につながるトリガーになるのではと期待されているのが、2020年の「テレワーク・デイズ」なのです。すでに、りそなホールディングスや三菱UFJ銀行、三井住友銀行などが東京オリンピック・パラリンピック期間中のテレワーク推進・拡大を予定。他の金融機関にもこの動きは広がっていきそうです。

まとめ

「テレワーク・デイズ」をきっかけに在宅勤務やサテライトオフィス勤務が当たり前のものになれば、将来皆さんの中にもテレワークする人が出てくることでしょう。セキュリティをどのように担保するか、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション不足をどのように補うかといった課題は残るものの、テレワークによって働き方は大きく変わっていきそうです。