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注目記事2019.12.04

勘定系システムの未来は銀行の未来

ATMで現金を引き出したり、相手の口座に送金したり、残高を照会したり…。こんなことが簡単にできるのも、情報システムのおかげです。それどころか、あなたの口座があなたのものであるという管理もコンピュータがしっかりしてくれています。

当たり前のことですが、もはやコンピュータなしでは銀行の業務は考えられません。そんな銀行とコンピュータの関係について考えてみます。

銀行の進化はコンピュータとともに

まだこの世にコンピュータというものがなかった時代、銀行の仕事は大勢の人間の手で行われていました。預金の口座元帳への記帳にはじまる大量の事務作業は、労働集約的な仕事の代表だったのです。もちろんこれは銀行に限ったものではなく、あらゆる産業に共通のことでしたが。

そんな姿が大きく変わったのは、コンピュータが導入されてから。1959年がその第一号とされています。もっとも当時は、たまった事務作業を後でまとめて行うバッチ処理のためにコンピュータが使われました。コンピュータが真価を発揮するのは1960年代にオンラインシステムが導入されるようになってからです。

一般的に企業の情報システムは、様々な業務をサポートするものです。しかし銀行の場合は、情報システムがサービスや商品そのものと直接結びついていることが特徴です。

例えば、給料の自動振り込みや家賃などの自動引き落としサービスは、情報システムがなければ機能を発揮しません。ATMでの引き出し・預け入れも同様です。

情報システムが銀行のサービスに直結するということは、サービスの向上を図るなら情報システムの性能向上は必須ということ。そのため銀行のシステムは常に進化を続けてきました。お金というものを扱うために決して間違いは許されないという厳しさもコンピュータの進化を後押ししてきました。

勘定系システムこそ銀行の生命線

ここまで銀行における情報システムのことを、ひとくくりで“情報システム”と表現してきましたが、これは正確に言うと「勘定系システム」と呼ばれるものです。

勘定系システムとは、銀行の主な業務をサポートするシステムのこと。その他に情報系システム、国際系システム、証券系システム、対外系システム、営業店システムなどがありますが、最も重要なのが勘定系システムです。“銀行を支えるシステムが勘定系システム”というイメージで覚えていただいてもかまわないでしょう。

銀行で重要なサービス=オンラインサービス=勘定系システムというイメージから、オンラインシステムそのものを勘定系システムととらえることもあります。

1960年代後半、銀行に本格的にコンピュータシステムが導入されるようになってから、幾度か大幅な刷新が行われてきました。それによってシステムは巨大化。第三次オンライン化が終わってからは、システムがあまりに巨大になりすぎて、大幅刷新もままならなくなりました。

金融再編に伴って銀行の合併が行われた際は、この巨大システムが邪魔をして業務の統合がなかなか進まなかったという側面も。大規模なシステム障害が社会問題になったりもしました。

これほど情報系システムは銀行にとって重要だというわけです。

ここにもクラウド化の波が

このように極めて重要な役割を果たす勘定系システムですから、何よりも求められるのは信頼性です。そのためシステムやハードウェアは自社において管理するのが当たり前でした。これをオンプレミスと呼びます。

ただし、当然のことながらオンプレミスで巨大なシステムを運用すると、コストも巨額になります。超低金利時代が続く中、収益環境が悪化している銀行にとっては、数十億円から数百億円ともいわれるこのコストは大きな負担です。そこで浮上してきたのが「クラウドのシステムを利用する」、つまり「クラウド勘定系」という発想です。

既にソニー銀行やジャパンネット銀行などがクラウド勘定に移行。こうした新興勢力にとどまらず、北國銀行も勘定系システムをクラウドに移行しようとしています。また、紀陽銀行も情報系システムのクラウドへの移行を検討中です。

クラウドに移行することで懸念されるのはセキュリティや障害耐性などですが、既に他の業界ではクラウド環境が当たり前になっていることに加え、やはりコスト負担の重さからオンプレミスでの運営は支えきれなくなっているのかもしれません。

しかし、クラウドに移行することで、AIやRPA、ビッグデータなどに今まで以上にコストをかけることが可能になるというメリットもあります。そうした“攻め”の発想には期待したいところです。

まとめ

ネット系の銀行から始まった勘定系システムのクラウド化。現在は地方銀行にその動きが広がろうとしており、当然のことながらメガバンクも追随していくでしょう。実際、三菱UFJフィナンシャル・グループは、グループ内の1000ほどの業務システムの半数をクラウドに移行しようとしています。

情報システムという側面からも、金融業界が大きな変革期の真っ只中にあることがよくわかります。