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注目記事2019.11.27

金融機関の共同出店が進む

“間借り飲食店”をご存じですか? 一つの店舗が、例えば日中はカレーショップ、夜はバーといった具合に変わるお店のことです。シェアリングエコノミーが流行りの昨今にお似合いの経営形態かもしれません。これは同じ店舗が時間帯で様変わりするケースですが、一つの店舗を分け合って出店する“共同出店”もあります。金融業界にも、少しずつですが増えてきました。

銀行+証券で、サービス力を強化

共同出店で目に付くのはカフェです。同じ店舗内で書店とカフェが仕切りもなく営業していて、買ったばかりの本をコーヒーなど味わいながら読むことができます。なかなか心豊かな時間が過ごせそうですね。

金融機関でもこうした共同出店が増えています。例えばSBI証券の子会社で様々な金融商品をワンストップで提供するSBIマネープラザは、京葉銀行や東和銀行、三重銀行、きらやか銀行などと共同店舗を運営しています。

SBIマネープラザにとっては、銀行に来たお客様を自社の新規顧客として取り込めるチャンスとなり、銀行にとっては、自行の顧客に質の高いコンサルティングサービスを提供できるわけです。特に富裕層の囲い込みなどに威力を発揮するとみられており、地域内で競合する他行との差別化にもつながると期待されます。

「銀行+証券」の共同店舗では、みずほ銀行とみずほ証券のケースもあります。こちらは、みずほ銀行のロビー内に「プラネットブース」と呼ばれるみずほ証券のコーナーを設置するというもの。

みずほ銀行の顧客に、投資運用のアドバイスを通じて付加価値の高いサービスを提供することを目指すもので、みずほならではの「ワンストップショッピング」の実現といえます。

地銀同士がタッグを組んでメガバンクに挑む

銀行と証券という、いわば“親戚”同士の共同店舗に対し、完全な同業他社が同じ店舗に出店するという呉越同舟型の共同店舗もあります。それが埼玉県を地盤とする武蔵野銀行と、千葉県を地盤とする千葉銀行による共同店舗です。

これは2019年10月に池袋に開店した共同の「支店」。もともと武蔵野銀行と千葉銀行はアライアンスを組んでおり、互いの情報力やノウハウを組み合わせることで、顧客に対してより質の高いソリューションを提供することを目指しています。

業務提携する銀行同士の共同店舗は関東では初めてということで大きく注目されていますが、背景には東京というビッグマーケットに関東の地銀同士が力を合わせて切り込んでいきたいという狙いがあります。メガバンクの牙城にどう挑んでいくか見守りたいところです。

武蔵野銀行と千葉銀行のように、資本関係のない金融機関同士が共同で店舗を出店することで得られるメリットは大きく、中でも店舗の出店・維持コストの削減は最も大きな効果といえるでしょう。銀行の“稼ぐ力”の低下が指摘される中、このコスト削減効果は大きな魅力です。

店舗のあり方が問われる中で

共同店舗の設置については、顧客の誤認防止や情報保護の観点から、これまで慎重に取り扱われてきましたが、金融庁が遮蔽壁の設置義務を緩和しました。そのため今後も共同支店は増えていくことが考えられます。さらには、例えば銀行とコンビニという異色の組み合わせによる共同店舗もあり得る、と金融庁では想定しています。

金融業界の大きな流れとして、キャッシュレス化は今後さらに進んでいくことになるでしょう。それに反比例して、支店の窓口というリアル店舗の役割は低くなっていくはずです。共同出店によってコストを抑えようという取り組みは、そうした流れを反映したものといえそうです。

一方で、証券会社の持つノウハウを取り込もうという動きは、リアル店舗の機能をコンサルティングやソリューションといったサービスに特化させようという狙いにもみえます。

そもそもATMの普及とキャッシュレス化の進展によって、銀行の店舗を訪れる人は大きく減っています。共同店舗は、これからの金融機関の店舗のあり方を模索する中でのアプローチのひとつなのでしょう。

まとめ

過疎に悩む地方では、市役所に銀行の店舗を出店するケースも目立っています。これも店舗維持に伴うコスト削減策の一例です。銀行の店舗のあり方は、今後ますます多様化が進んでいくのではないでしょうか。