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注目記事2019.10.30

“大廃業時代”に、金融業界に求められるもの

欧米に比べてベンチャーが育ちにくいと言われてきた日本ですが、近年は決してそんなことはなく“起業ブーム”と言われるほど起業する人が目立ったこともありました。皆さんの大学の中にも、学生のうちから起業を目指す「起業サークル」があるのではないでしょうか。

一方で、企業の “廃業”も増えているということをご存じですか。実はここにも金融業界の活躍するフィールドがあります。

会社の数が半減する?

実は今、“大廃業時代”が到来しているのです。

企業の倒産は、リーマンショックのあった2008年をピークに下がり続けています。一方で休廃業・解散件数は増加傾向にあり、2016年の企業の休廃業・解散件数は2000年の2倍近い数字になっているのです。

日本の企業の99%は中小企業です。この中小企業が直面している深刻な問題が経営者の高齢化です。1995年、経営者の年齢のボリュームゾーンは47歳前後でしたが、2015年には66歳前後と高齢化。一般的に中小企業経営者の引退年齢は60代後半とされていますが、団塊世代がこの年齢にさしかかっているため、経営者の大量引退の時期を迎えているのです。

高齢の経営者の実に半数が「廃業する」との意向を持っています。その理由として多いのが「後継者がいない」「子供が後を継がない」といった後継者難。大げさに言えば、後継者難でこれから経営者の大量引退が始まり、日本の企業の数が半分に減ってしまうかもしれないのです。

団塊の世代が後期高齢者年齢に突入する「2025年問題」がクローズアップされていますが、日本の企業にも2025年問題が迫っているといえるでしょう。

“明るい廃業”への期待

もちろん、ほとんどの経営者が喜んで廃業するわけではありません。実はむしろ逆で、苦労して育ててきた会社は我が子のようなものですから、なんとか誰かに引き継いでもらいたいというのが自然な感情です。

そこで、 “前向きな廃業”を実現させたいと、金融機関がサポートするケースが増えています。

代表的なものが、新生銀行のグループ企業が提供する「明るい廃業®」「廃業支援型バイアウト®」というサービスです(いずれも登録商標済み)。

高齢となった経営者が「そろそろ引退したい」と思っても子供が後を継がないため、「なんとかいい後継者が見つかるまで」と頑張るケースはよくあります。その結果、売上が低迷して赤字が増えてしまうなど状況が悪化。ついには債務超過で倒産ということも珍しくありません。

そうした状況に陥る前に、早期からの事業承継の取り組みをサポートし、文字通りの“明るい廃業”を実現しようというサービスです。いわば高齢化した経営者が“肩の荷を下ろす”のをお手伝いするわけです。

基本となるのは信頼関係

こうした廃業支援は、中小企業が多く人口減に悩む地方ほどニーズが高いようです。そんなときに頼りになるのが長年、地元で一緒に頑張ってきた地方金融機関。そんな声に応えて、地方銀行もハッピーな廃業支援の実現に力を入れています。

地方銀行の強みは地元企業に寄り添うように金融サポートを続けてきたことから、事業承継のタイミングを的確に判断できるということと、地域の事情に精通しているため、事業を継承する“後継者”を見つけやすいということです。

最近は地方銀行同士のアライアンスが活発で、積極的な情報交換によってエリアを越えたM&Aが行われるようになり、廃業支援の選択肢もずいぶんと広がっています。

廃業は非常にデリケートな問題で、相談相手の口が軽いとすぐに噂が広がってしまいます。「ウチの社長が廃業を考えているらしい」と従業員が動揺したり、取引先が「あの会社は大丈夫なのか」と疑心暗鬼になることも。非常に秘匿性が高いのが、廃業の相談なのです。

だからこそ信頼できる相談相手が必要であり、地元の金融機関こそ、そんな信頼に応えられる存在といえるでしょう。

まとめ

“廃業”という言葉のイメージはあまりいいものではありません。だからこそ大廃業時代を迎えようとしている今、“いい廃業”を実現することが大切です。

創業期も金融機関は企業の大切なパートナーですが、経営者が引退する際も同じように頼れる存在でありたいものです。