新卒学生のためのインターンシップ・就活準備サイト

デジタルが地方を救う、地域仮想通貨のインパクト

かつて地域通貨ブームがありました。大きな盛り上がりを見せたのは2000年代前半のこと。その後は次第に下火になり、完全にブームは去ったように思われました。

ところが最近、再び地域通貨が注目されるようになっています。キーワードは、ブロックチェーン。その事情について考えてみます。

ブームが去った地域通貨

東京の高田馬場・早稲田エリアでは永遠のヒーロー、『鉄腕アトム』のイラストが入ったお札が使われています。地域通貨の代表例として知られる「アトム通貨」です。

モノを買ったり、サービスを利用したりする際、私たちは国が発行する通貨を支払います。これは「法定通貨」、つまり法律が定めた通貨です。日本では、日本銀行が発行する日本銀行券および造幣局が製造して政府が発行する貨幣のみが法定通貨として認められています。

これに対して、ある特定の地域やコミュニティ内で法定通貨と同じように使用される通貨が「地域通貨」です。厳密に言えば日本では通貨として認められているのは法定通貨のみですから、地域通貨は“通貨”ではありません。つまり地域通貨という言い方はあくまで通称ということになります。

『鉄腕アトム』はマンガの中で2003年に高田馬場で誕生したという設定になっており、これにちなんで2004年に高田馬場の人々の手によって『アトム通貨』が誕生しました。通貨は“馬力”という単位で「10馬力」「50馬力」「100馬力」「500馬力」の4種類が発行されていて、“馬力”はそのまま“円”に換算されます。

この地域通貨は1980年代にカナダで始まったとされ、2000年代には日本でも大きなブームとなり、一時は3000を超える地域通貨があるとされていました。しかしブームは一過性のものとして終わってしまい、『アトム通貨』のように今も使われ続けている地域通貨はごくわずかです。

ブロックチェーン技術の活用で

地域通貨が失速した原因はいろいろと言われています。「狭い地域でしか使えない」「利用できない店がある」「交通機関や医療機関で使えない」「おもちゃみたい」「ありがたみがない」…。要するに、当初は物珍しさで使われても、次第に飽きられてしまったということでしょう。発行者側も、地域通貨の安全性などを担保するための費用の負担が重かったようです。

そんな地域通貨が復活してきたのは、ブロックチェーンの登場がきっかけです。

ブロックチェーンという言葉は、ビットコインがブームとなった際に、皆さんも耳にしたことでしょう。

ブロックチェーンについては、よく「みんなが共有する台帳」という喩えがされます。とはいえ、“台帳”そのものを見たことのない人も多いことから、「そう言われても…」と戸惑う人がほとんどなのも事実。ビットコインとは、要するにそのお金を誰が使ったか、誰の手に渡されたかが、すべて記録されているお金ということです。そしてそれを可能にしている技術がブロックチェーンです。

ブロックチェーンは、改ざんや不正利用に強く、お札に偽造防止の透かしを入れるようなコストが不要です。専用カードや端末が不要のため、運用・管理のコストも大幅に削減できます。さらに、不特定多数の人への譲渡が可能です(これを“転々流通性”と呼びます)。

こうした特徴から、地域通貨にこそブロックチェーン技術が活用できると着目され、地域仮想通貨が生まれてきました。

ちなみに仮想通貨と聞くと、電子マネーに近いというイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし、電子マネーは「1回限りの使用」しかできません。あなたがコンビニで買い物をした際に支払った電子マネーが、次のお客さんへのお釣りに使われることはないのです。しかし仮想追加は“転々流通性”が特徴なので、お釣りに使うことができます。この点も地域通貨に適しているわけです。

地域経済の活性化に威力

地域仮想通貨として有名なのは、岐阜県高山市を中心に普及している「さるぼぼコイン」です。飛騨高山の民芸品「さるぼぼ」にちなんだ地域通貨で、日常の買い物はもちろんのこと、お賽銭をあげるときにも使われています。

「さるぼぼコイン」は、お金の地産地消を促進し、地域経済を活性化する目的でスタートしました。例えばクレジットカードを決済手段として使うと、その手数料は地域外に流出してしまいますが、地域仮想通貨なら地域内にとどまります。まさにお金の地産地消です。また、お財布としてスマホを使うため、買い物のデータ収集、分析が容易であり、地域独自のマーケティングリサーチに活用できます。

このように仮想通貨は地域経済を刺激し、人口減や高齢化に悩む地方を元気づけてくれます。仮想通貨は地域や国境を超え、多国籍ビジネスにも適しているとされていますが、同様にグローバル経済とは真逆のような地域限定の経済圏においても有効というのは非常に興味深いですね。

まとめ

法定通貨に縛られない、新しい経済圏を示すものとして「トークンエコノミー」という言葉が注目されています。地域仮想通貨は、そんなトークンエコノミーの代表的な存在。この先、かつての地域通貨のような大ブームが起きるかもしれません。

注目記事