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注目記事2019.10.09

地域商社を通じて、地方銀行が地元を活性化する

商社といえば、人脈と情報収集力がビジネスの武器。それは地方銀行も同様です。

そんな商社と地方銀行が力を合わせれば、新しい活力を生み出すことができるのではないでしょうか。そうした試みが今、全国に広がっています。地域商社の誕生です。

地方銀行への逆風はさらに強まる

人口減と低金利に苦しむ地方銀行。特に2019年3月期の決算では不良債権処理が増え、地方銀行の苦境がさらに進んだという印象です。

実は2008年のリーマン危機の後、経営に行き詰まった中小企業に対して救いの手を差し伸べるために制定されたのが中小企業金融円滑化法でした。これは“モラトリアム法”とも呼ばれています。

モラトリアムとは、社会人になりたくなくて大学の卒業を先延ばししている状態を示すときにも使われるように、「猶予」「先送り」といったニュアンスを持つ言葉です。つまり“モラトリアム法”とは、借金の返済を先送りするように金融機関に求めるという法律です。

これによって本来は不良債権と見なされるはずだった企業が一時的に“正常”と位置づけられ、融資の返済はいったん横に置いて、まずは経営の立て直しを図ることが優先されました。ところが思ったように経営再建は進まず、結局不良債権は不良債権のまま…。

“先送り”とは要するに目先の問題から目を背けることであって、そのツケが10年たった今、大きくのしかかってきたということです。

そんな苦境にある地方銀行ですが、新たなビジネスチャンスに光明を見出そうとする動きが出てきました。キーワードは地域商社です。

知られていない名産品を、地方創生の切り札に

地方を旅したとき、「道の駅」に立ち寄って名産品を見るのが楽しみ、という方は多いでしょう。

狭いようで案外広いのが日本。地方には有名な物産はもちろんのこと、まだまだ広く知られていない農産品や工芸品、料理などが数多く眠っています。

こうした特産品はもちろんのこと、観光資源も含め、地域をまるごと売り込んで新たな利益を創出しようとするのが地域商社です。

地方の有名な特産品は多数あり、全国ブランドになっているものも豊富にあります。 しかし、これから全国規模での売り込みを行おうとしても、大量の商品を安定的に供給することの難しさ、複雑な流通システムにうまく乗る難しさ、低い利益率などがネックとなります。ネットを活用する手もありますが、こちらのほうがはるかに激戦区。なかなか成功は見込めません。

そこで地域の特産品などの販路を新たに開拓し、そこで得られた収益を地域の生産者に還元して、新たな雇用の創出にまで結びつけていこうとする目的で設立されるのが地域商社です。

現在、県単位はもちろんのこと、市町村単位でも地域商社の設立は進んでいます。

内閣府の「まち・ひと・しごと創生本部」でも、地方に活力を取り戻し、人口減を食い止める有効な手段の一つとして地域商社には期待を寄せており、地域商社設立・運営の初期費用を支援するなど、サポートに力を入れています。

地方銀行の新しいチャレンジ

この地域商社設立の母体として期待されているのが地方銀行です。

日本では、銀行が事業会社を運営することは禁じられています。しかし、事業会社が銀行業を営むことは認められています。“銀行から商業への参入はNG”なのに“商業から銀行への参入はOK”というのはワンウェイ規制とも呼ばれ、不公平ではないかとの批判が従来からありました。

これまで銀行から事業会社への出資は上限が5%と定められてきましたが、こうした批判を受け、出資比率の上限を見直す動きがあります。そんな流れの中で金融庁は、銀行が取り組む事業の範囲を明確にすることで地域商社をつくりやすいような環境を整えていく方針です。

地域商社の設立に弾みがつけば、地元の特産品の販路開拓やマーケティング活動、経営改善などが進み、地域経済に新たな活力が生まれるでしょう。それは巡り巡って地方銀行にとっての新たな収益源、新たな融資先へとつながっていくことになります。

地方銀行が参入することで地域商社が誕生し、地域が元気になって地方銀行も力を取り戻す、そんなWin-Winが期待されます。

まとめ

地方銀行の持ち味とは、地域密着の営業力です。

そこで培った人脈と情報収集力は、地域活性化の大きな力です。地域商社という場を通じてそれらのリソースを活かすことができれば、地域における地方銀行の存在意義はさらに高まっていくに違いありません。