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注目記事2019.10.02

“ポジティブ・インパクト”の与えるインパクトとは

ポジティブ・インパクトという言葉の響きから、どんな印象を受けますか?

競走馬の名前のようなこの言葉、直訳すれば「積極的な影響」。「彼ってポジティブ・インパクトがあるよね」と言われたら、周囲にいい影響を与える好人物、という褒め言葉に感じます。実際、「まわりにいい影響を与える人が上手くいく」という意味で使われることもあるようです。

実はこのポジティブ・インパクトという言葉は、今の金融業界を読み解く上での一つのキーワードとなっています。

世界初のポジティブ・インパクト・ファイナンス

2019年の春、三井住友信託銀行が「世界初となるポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結をした」というニュースリリースを発表しました。

これは、油脂や製菓・製パン素材の国内最大手企業に対して、同社がSDGsに貢献していることを三井住友信託銀行が評価。資金使途を特定しない、つまり「使い道はご自由に」という融資を行う、ということです。

今回のケースでは、特に人権・環境に配慮した原料調達、環境負荷低減への取り組みなどを三井住友信託銀行が高く評価したようです。

通常、融資といえば担保や事業計画が評価の対象となり、融資したお金の使い道も厳格に定められます。今回のポジティブ・インパクト・ファイナンスはそうした従来の融資とはまったく異なる性格のものですから、この融資が行われることのインパクトはかなり大きいといえます。

持続可能な世界の実現に貢献

国連は、2015年に「持続可能な開発目標」を定めました。SDGs(Sustainable Development Goals)と呼ばれるもので、あなたも耳にしたことがあるかもしれません。

これは「持続可能な世界」を実現するために、気候変動や貧困など、今の世界が抱える課題に対する対策について17の目標を掲げたものです。

SDGsは先進国を含むすべてのステークホルダーが取り組むべき目標として位置づけられており、特に民間に期待される役割が大きくなっています。その中には当然金融業界も含まれており、「持続可能な世界」の実現に金融業界はどんな貢献ができるのか、真剣に問われる時代になったといえます。

ポジティブ・インパクトとは、このSDGsを達成するための投融資だと考えてよいでしょう。

もちろん金融機関が融資を行う際、ポジティブ・インパクトであるかどうかの判断とは関係なく行われても何の問題もありません。

しかし、ポジティブ・インパクトという枠の中での融資であると位置づけたことで、三井住友信託銀行はSDGsに基づく活動を行う先進的な金融機関であることをアピールでき、融資先の企業もSDGsを重視した経営を行っていることが金融機関から評価されたとアピールできるわけです。

さらにこの融資先から材料調達などを行えば、取引先も「持続可能な世界を実現するための調達を行っている」というイメージを得ることができますから、取引量が増加したり、新たな取引先が増えたりする可能性もあります。

つまり企業価値の向上においても、ポジティブ・インパクトに基づくファイナンスは確かな効果が期待できるということになります。

融資を通じて人類共通の課題解決を

国連がSDGsを採択したことに基づき、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は世界の主要金融機関19社とともに、金融機関が積極的な投融資を行うための原則「ポジティブ・インパクト・ファイナンス原則」(PPIF)を制定しました。

大げさに言うならば金融の世界における新しいパラダイムの誕生ということになり、日本の金融業界に広くポジティブ・インパクト・ファイナンスが浸透していくことは間違いないでしょう。

融資は、銀行の中で“最も銀行らしい業務”といわれます。金融機関での活躍を志す人なら、いつかは自分も大型の融資を手がけてみたいという思いをお持ちでしょう。

ポジティブ・インパクト・ファイナンスという仕組みが誕生したことは、そうした“最も銀行らしい業務”、つまり本業を通じて人類の抱える課題の解決に貢献できる機会が増えていくということを示しています。実にやりがいのあるテーマではないでしょうか。

まとめ

ポジティブ・インパクトという言葉は、今後、企業や人に対する最大限の賛辞を意味するものになっていくかもしれません。

ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、金融業界そのものが世界に与えるインパクトの大きさを感じさせるものでもあります。今後の浸透が楽しみです。