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大胆な組織改革を進める金融機関―その理由は?

#働き方

2019/09/18

「先輩が“ウチの社風は、かなりアットホームだ”と教えてくれた」「会社のカルチャーって、受付にもよく表れるよね」などという会話は、就職活動でよく交わされますね。もちろん実際のビジネスシーンでも、社風やカルチャー、組織文化といった言葉は頻繁に使われます。

でも、改めて社風や組織風土といった言葉の意味を考えてみようとしても抽象的で、何となく、もやっとしたイメージしか浮かばない人も多いのではないでしょうか。

企業や個人が成長を続けるために

今、「組織風土」という言葉が企業の成長や従業員のキャリア形成を考える上で、重要なキーワードとなっています。

実際、経団連では「技術革新、グローバル化、少子・高齢化の進展など、わが国の企業を取り巻く環境は大きく変化している」中で、「安定志向から脱却し、個々人自らが向上、変革していく気概をもつ、意識改革に溢れた社内風土」が不可欠としています。

また、メールに代表されるデジタルツールの浸透により時間や距離の壁を越えたコミュニケーションが可能になった一方で、直接顔を合わせる機会が減ったことから「気持ちを伝える・気持ちを読み取る」といった意思疎通が難しくなっており、多様な人材が密接に連携を取りながら業務を進めていくためにも、組織風土の改革によって社内のコミュニケーションを活性化する必要性はますます高くなっています。

社会の変化に対応し、企業や個人が成長を続けていくためには、組織風土の改革は必須のテーマなのです。

非連続の成長が不可避の金融業界

金融業界の組織風土に対して、あなたはどんなイメージをお持ちでしょうか。

漠然とした問いかけではありますが、一般的には「堅い」「誠実」「真面目」「年功序列」「細かい」といったイメージを持つ人が多いようです。

いずれの言葉もプラス・マイナスそれぞれのイメージがあります。お金を扱うことから信頼関係が何よりも重要となる業界ですから、こうしたイメージがつきものなのは当然のことでしょう。しかし、他の業界同様、金融業界を取り巻く環境が激変している今、これまでの組織風土を大きく変えていくことが求められているのは事実です。

例えば貸出や預金、決済といった、これまでは金融機関でなければ提供できなかった価値が、フィンテック時代の今は新しいプレーヤーにも十分可能となり、サービスそのもののコモデティ化(汎用化)が一気に進みました。あるいは与信や融資審査といった、かつてはベテランの担当者が経験と知識を駆使して行っていた業務が、既にAIに取って代わられつつあります。さらにはキャッシュレス化の嵐は、金融機関の支店やATMといった顧客との接点さえ奪おうとしています。

こうした状況の中で金融業界の次の成長は、もはや従来の延長線上にはなく、“非連続”の成長を目指すしかありません。この大きな危機感こそが、金融業界に組織改革を強く迫っているのです。

次々に放たれる組織風土改革の矢

組織風土そのものが目に見えない存在であるため、その改革がトライ&エラーの繰り返しになるのは当然のこと。それでも金融業界全体で、さまざまなチャレンジが盛んに行われています。

最近では、メガバンクなどもTシャツやGパンでの通勤をOKとし、ちょっとした話題となりました。既に外資系金融機関では服装自由は珍しいことではありませんが、ドレスコードの廃止は今後金融業界全体に広がっていきそうな雰囲気です。

副業も解禁され始めました。以前、このコーナーでも紹介したように、金融業界の先陣を切って副業・兼業解禁に踏み切ったのが新生銀行。“一歩先を行く金融グループ”を自認する同行らしい先駆的な取り組みでした。同行に追随するかのように、メガバンクでも副業・兼業解禁に踏み出すところが出てきそうです。

働き方改革は、長時間勤務になりがちと思われてきた金融業界では、比較的早くから取り組みが進められています。メガバンクをはじめ多くの金融機関が、ノー残業デーの導入やサービス残業の廃止などを実現。より先進的な在宅勤務(テレワーク)の実現にチャレンジする金融機関もあります。

こういった取り組みは、「これをやっておけば大丈夫」というものではなく、全社的な施策として総合的に進めてこそ、組織風土改革に結びつきます。その点で特に目を引くのが、先にも触れた新生銀行です。

たとえば、支店の窓口などで接客する従業員でも服装を自由にし、ジーンズやワンピースといった服装で勤務できるようになりました。自由な発想で仕事に取組み、毎日何も考えずにスーツで出勤するのではなく、一人ひとりの社員が、TPOに応じ自らの判断で、その日に相応しい服装を考えることで、新しいビジネスを生み出す企業風土を改めて醸成しようという試みの一環です。

なんと内定式まで私服可という徹底ぶりです。ここまでの自由化は主要行では初めてでしょう。これを新生銀のみならず、昭和リース、アプラス、新生フィナンシャルなど全グループ会社で実施するというのです。

新生銀行では長期的な環境変化を見据え、自身のサービスの見直し(リ・デザイン)による非連続な成長を目指しています。

現状のサービスだけでは“満たされていないニーズ”を掘り起こし、外部パートナーとの共創によって新たなサービスを生み出そうとしており、そのためにより柔軟かつスピーディーに組織風土を変革していこうとしているのです。この取り組みによって同行がどのような風土の組織へと生まれ変わるのか、注目したいところです。

まとめ

環境に最も適したものだけが生き残るという適者生存の概念を持ち出すまでもなく、大きく変化する社会にいかに柔軟に対応していくかは、金融機関にとって生死に関わる問題と言えるでしょう。組織風土の変革は、まさに重要な経営課題なのです。

そうした視点で企業研究を進めることは、経営戦略の一端を理解する上でも効果的でしょう。

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