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注目記事2019.08.07

横浜銀行と千葉銀行、提携の背景は?

なぜ“犬猿の仲”が一緒に? そんな意地悪な声も聞こえてきたのが、横浜銀行と千葉銀行の提携発表。この夏の金融業界の大きなニュースとなりました。両行が本当に“犬猿の仲”だったのかどうかは別として、この提携には地銀業界の中からも驚きの声が上がっています。その背景と今後について考えてみます。

タッグを組んで、“東京”を攻める

神奈川県を地盤とする横浜銀行は地方銀行の最大手。一方、千葉県を地盤とする千葉銀行は地銀の第3位。人口の集中する首都圏に拠点を置くだけに、横浜銀行・千葉銀行とも全国レベルで見ても規模・収益ともにトップクラスです。その両行が提携するというのですから、いわば「強者連合」「勝ち組連合」とも言えます。金融業界にとどまらないビッグニュースとなったのも当然でしょう。

実は両行が“犬猿の仲”と言われてきたのも、「強者」同士だったため。互いに同じ首都圏を地盤とし、資産規模もほぼ互角だったことから、常にライバル関係と目されてきたのです。

提携に際して両行からは「首都圏にある両行は事業戦略が似ていて、親和性が高い」「互いの取引先を紹介して顧客基盤を拡充したい」という狙いが語られました。この言葉からは“東京”というビッグマーケットを狙うには、ライバルとして闘うよりはパートナーとして協力した方が相乗効果を期待できる、という狙いが伺えます。東京湾アクアラインによって神奈川県と千葉県の経済交流が進むようになったという背景もあるようです。

一方で、いくら「強者」であっても、地方銀行を取り巻く環境の厳しさから、このままでは将来の展望が開けないという危機感もあるようです。

スケールメリットを武器に

地方銀行同士の連携は決して珍しいことではありません。

例えば四国の地方銀行「四国銀行」「阿波銀行」「百十四銀行」「伊予銀行」の4行が包括的な提携「四国アライアンス」を結んでいるのはその好例です。また、今回の提携を発表した千葉銀行も、すでに埼玉県の武蔵野銀行とアライアンスを組んでいます。

しかし、今回の提携が注目されるのは、従来の銀行業界でよくあった上位行が経営不振に陥った下位行を救済するパターンとは違って、先にもご紹介したように上位行同士の提携であるためです。東京を間に挟んで、神奈川県と千葉県に地盤を置いていることから両行の支店がぶつかることはなく、互いに顧客を紹介し合ったり、ビジネスマッチングを行ったり、後継者難の中小企業に事業承継者を紹介したりといった大きな相乗効果が期待されています。両行とも営業力に一層の磨きをかけることが可能でしょう。こうしたスケールメリットこそ、提携の最も大きなメリットと考えられます。

その一方、地方銀行全体に目を向けると、その苦境もはっきりと見えてきます。人口減少が続く地方では顧客数や市場規模も縮小する一方で、全国の地方銀行の半数は主力業務で採算が取れていないとされています。さらに10年後には約6割の地方銀行が最終赤字に転落するという試算もあります。

まさに地銀が直面している問題は日本が抱える構造的な問題そのものでもあるわけですが、その中で「上位でなければ生き残れない」と提携や統合などによってスケールメリットを追求する動きが出てくることは自然なことでしょう。

首都圏連合の誕生も?

さて、神奈川県と千葉県ときたら、次に注目されるのは当然、埼玉県です。 埼玉県の地方銀行としては武蔵野銀行があり、先にご紹介したように同行は千葉銀行とアライアンスを組み、すでにビジネスマッチングなどの取り組みで成果を上げています。そうなると、今後は横浜銀行・千葉銀行の提携に武蔵野銀行も合流し、東京を包囲する首都圏連合ができあがるのでは、という予想がされるのも自然なことでしょう。

さらには他のエリアの地方銀行も刺激され、新たなアライアンスが生まれるかもしれません。今後の動きには注目です。

まとめ

提携の先には、店舗の統合や事務部門の共有、さらにはシステム統合なども見えてくるかもしれません。フィンテック時代の生き残り戦略も大きなテーマです。“犬猿の仲”などと言われたのは、もはや過去のこと。地方銀行全体を刺激し、新たな活力をもたらすことに期待したいと思います。