銀行員も副業OKの時代に?
“副業”という言葉には、あまりいい響きはありません。会社にこっそりと隠れてやる、お金に困ってやる、見つかったらまずい…そんなマイナスのイメージがあります。
ところが、これまで専業が当たり前とされてきた日本で、副業を認めるケースが次々と出てきました。特に、みずほフィナンシャルグループが「副業OK」の方針を打ち出そうとしていることは大きな話題に。
「ついにメガバンクも副業OKか?」ということで、一つの時代の節目を迎えたという印象さえあります。
原則禁止から原則自由へ
厚生労働省が公開しているのが「モデル就業規則」。企業が自社の就業規則を定める際の基準となるものです。そこには例えば労働時間や賃金に関しては「必ず就業規則に記載しなければならない」というようなことが記されています。
このモデル就業規則から、2018年に「副業禁止」の規定が削除されました。従来は「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と記されていたのですが、これが削除されたのです。代わって記載されたのが「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という項目。つまり副業は「原則禁止」から「原則自由」へと、方針が正反対に変わったわけです。
背景には、政府の働き方改革の流れがあります。
副業によって多様な働き方が広がることで、生き方の幅も広がるということでしょう。もっとも一方では、深刻化する人手不足に対応するため、という見方もあります。つまりダブルワークが広がれば、夜間など人手が不足する時間帯に働く人が増えて、人手不足を解消する一助になるのでは、という考えです。
いずれにせよ副業は、もはや“隠れてすること”ではなく“堂々としていいこと”に変わったのです。
やがて“二足のわらじ”が当たり前に
こうした副業自由の流れを受けて金融業界で最初に反応したのが、新生銀行でした。同行では2018年4月から社員の副業・兼業を解禁。大きな話題となりました。
そして今年になって明らかになったのが、みずほフィナンシャルグループが社員の副業・兼業を解禁する方向で動いているということです。メガバンクグループでは初の試みとなるだけに、社会に大きな影響を及ぼすことになりそうです。
みずほフィナンシャルグループでは、ITと金融が融合するフィンテックが台頭するなどの新しい流れの中、社外で働く経験から得たものを新しい金融サービスの創出に活かして欲しい、という狙いを明らかにしています。
「人材の流出を食い止めるため」「就職人気の低下に危機感を強めたから」といった見方もありますが、まずは新しい一歩を踏み出したことは高く評価したいところです。
他のメガバンクグループがこの動きに追随するか、今のところは不透明ですが、金融業界に与えるインパクトが大きいことは確かです。おそらく「副業解禁」の流れは今後さらに広がり、皆さんが社会人として活躍する頃には、金融業界に限らず広く経済界・産業界で浸透していることになるでしょう。数年後には“二足のわらじ”がビジネスパーソンにとっては当たり前のことになっているかもしれません。
みずほフィナンシャルグループといえば、前身である日本興業銀行で銀行員兼シンガーソングライターとして活躍した小椋佳さんが思い起こされます。彼は東京大学を卒業して当時の日本勧業銀行に就職。銀行員としてキャリアを築く傍ら音楽活動も行い、レコード大賞を受賞するほどの活躍をしました。
みずほフィナンシャルグループには、そんな小椋佳さんの精神が受け継がれているのかもしれません。これほどの成功例は極端としても、副業・兼業で大きな成功を収めるケースが、この先かなり増えてくるのではないでしょうか。
リスクには十分注意
もっとも副業の壁は決して低くはありません。例えば情報漏洩のリスクです。
取引先企業の重要な経営情報や個人情報に触れる機会の多い銀行員は、それらの情報の取扱には慎重でなくてはなりません。仮に副業でついうっかりそれらの情報が漏れるようなことになったら大きな騒動となるでしょう。副業で利益を得るためにそれらの情報を使うようなことはもってのほかです。
また、自分の所属する銀行の競合相手にとって結果的に利益となるようなことになったり、自分の銀行の社会的信用を傷つけるようなことになったりというリスクもつきまといます。
なによりも副業に時間を取られてしまい、本業がおろそかになっては意味がありません。
副業が解禁になったとしても、こうした問題には十分な注意が必要です。
まとめ
もちろん副業には、新たなスキルを磨いたり、人脈が広がったりといったプラスの側面も数多くあります。それは単なる収入アップといったメリットだけでなく、人生にとっての大きな財産となるでしょう。いつか副業に手を出すならば、そうしたプラスにつながるようなチャレンジをしたいところです。