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注目記事2019.07.24

Libra(リブラ)は世界を変える?

突然浮上してきた仮想通貨、Libra。そのインパクトの大きさに、周囲を取り巻く動きが慌ただしくなってきました。歓迎する声、警戒する動き、異論・反論…。ここしばらくは、そうした様々な声があちらこちらで衝突しそうです。果たしてLibraは世界をどのように変えていくのでしょうか。

27億人が使える“通貨”

今年の6月18日、Facebookが独自の仮想通貨を発表しました。それがLibraです。

この発表は、大げさに言えば世界中を揺るがしました。それは、従来の金融の仕組みを根底から変えてしまいかねない力がLibraには秘められていると感じられたからです。

Facebookの利用者は全世界に27億人とされています。これは全世界の成人人口の約4割。仮にLibraが発行されれば、一気に全世界の4割の人々が自由にやりとりできるお金が誕生することになり、「Libra経済圏」と呼ばれる世界で最も大きな流通貨幣が一瞬にして誕生することになります。

経済圏という点ではユーロがその代表ですが、「Libra経済圏」は「ユーロ経済圏」をしのぐ巨大なものとなることが考えられ、文字通り世界が飲み込まれるのではないかという見方もされています。

安定性が一番の特徴

Libraの最大の特徴は“ステーブルコイン”であるということです。

“ステーブル”とは“安定している”という意味で、“ステーブルコイン”とは“安定している通貨”ということ。つまり円やドルと同じような存在とされています。この点が仮想通貨(暗号資産=ビットコイン)と決定的に異なる点です。

ご存じのように従来の仮想通貨には、価格が大きく乱高下したり、保有データを盗まれたりといった非常にリスキーな面がありました。

これに対してLibraは、従来の仮想通貨同様にブロックチェーン技術を基盤とするものの、価格が安定するように設計されます。そのため円やドル、ユーロといった法定通貨と1対1の交換が可能な固定相場制のような通貨とされます。

日本では、仮想通貨は「法定通貨また法定通貨建ての資産ではない」と定められており、Libraはドルなどを裏付け資産としていることから、「Libraは仮想通貨にはあたらない」という見解が強くなっています。

とはいえ、それが「日本でもLibraが使える」ということにはならず、今後のルール整備が必要となります。日本ではLibra利用の前提としてFacebookが日本で銀行免許を取得するか、資金移動業の登録をするか、といったことが必要になるとの見方もあります。

世界最大の金融革命となるか

Libraは一言で言えば「国境を越えた自由な通貨」です。

現在、開発途上国など世界の成人人口の3割に当たる17億人が銀行口座を持っておらず、従来の金融システムからは除外されてしまっています。Libraが誕生すればこうした人々も送金や支払いなどが容易にできるようになります。あるいは移民が自国に送金する際も、高い手数料を負担せずに行うことができます。

法定通貨を担保にしながら銀行を経由せず、国境を越え安全かつ瞬時に送金できるとしたら、それは従来の金融システムの枠を超えた世界最大の金融革命といえるでしょう。

一方で、様々なリスクも懸念されています。

例えばセキュリティ対策です。送金などの個人データが漏洩するといった脆弱性があるとしたら、スケールが大きいだけにそのダメージは決定的です。あるいは、既存の金融機関が送金手数料などの収益を失い、経営的なダメージを受ける懸念もあります。さらに本質的には、27億もの人がLibraを利用するようになると既存の法定通貨の価値が揺らいでしまうことさえ考えられます。

トランプ米大統領はLibraに対して批判的で、「規制が必要」としています。一方でドイツの中央銀行の理事は、リスクに関する監視が必要としつつも、「仮想通貨は金融安定性の脅威にはならない」と発言。さらに中国人民銀行はLibraに対抗して独自のデジタル通貨を発行する構えを見せるなど、各国の反応も様々。

大きな傾向としてはLibraを警戒する動きが目立つものの、どのように対応するかはまだ様子見といった状況のようです。

まとめ

華々しく登場した感のあるLibra。従来の金融システムの枠を超え、世界が大きく変わっていくような期待感を漂わせているのは確かです。一方で、イノベーションに対しては警戒感が強まるのも当然のこと。リスクに対する対応策が必要なのは言うまでもありません。

FacebookがLibraを発行する予定の2020年は、すぐそこです。このスピード感も、大きな驚きといえます。